男子校生は先生のママになりたい

振悶亭めこ

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先生、最近調子はどうですか?

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あの後、進路指導も終業式も難なく終わり、春休みを満喫した。
と言っても僕にも出来そうなボランティア探しをしたり、短期バイトをしたり、息抜きに近所の河辺にお花見散歩をしに行った程度。長めの休みはその位の方が満喫しやすい事も確か。
僕の春休みは短期バイトと保育関係の勉強、と言っても関連書籍を図書館で借りて読み漁る程度、平和で穏やかに過ぎ去っていった。図書館での読み聞かせボランティアが決まった事が一番の収穫だったと思う。

新学期、校庭の桜が半分ほど散った後。学年が変わり教室の場所も変わる。三年生の教室は家庭科室や音楽室等と同じ階にあった。
放課後、ふと先生の事を思い出す。帰り支度を整えて挨拶をしてきたクラスの子たちに応えた後、僕は家庭科室に向かった。

ガラリ、と家庭科室のドアを開ける。アールグレイの香りがほのかに漂っていた。
「トモちゃん先生、今日はお紅茶の気分なんですね」
先生は目線だけ僕に向けて
「何だ古谷、飲み物をたかりに来たのか?」
なんて言いつつ、棚からカップを1つ出してポットに残っていた紅茶を注いで用意してくれた。
「だいぶぬるくなってはいるが、飲めるだろう」
「ふふっ、頂きます」
先生がカップを置いてくれたその席に座り、少しだけぬるくなった紅茶に口を付ける。淹れてから多少時間の経ったお茶特有の渋みを感じた。
「今日はどうしたんだ?教室からここが近いからって立ち寄ったとかそういう……」
当たらずとも遠からず、だよ先生。ぬるいとは言え、湯気の立つ紅茶で曇った眼鏡を外して拭きながら、少し頭を整理する。
「ここが教室から近いから、トモちゃん先生の事を思い出した。そうしたら何となく話したいなあって思って、来てみました」
先生は少し驚いた様子で一瞬目を丸くして、飲みかけだったらしい紅茶を一気に飲み干していた。
「俺が常にここで寛いでいるという保証は一切無いんだが……」
気まずそうな、けれど少しだけ照れた歯切れの悪い物言い。先生、何か可愛いな……まあ僕の愛しい子供達はみんな可愛いのだけれど。
「なんとなく、に、保証は求めていませんよ。居なかったら職員室かな?って思う程度です」
眼鏡をかけ直して机の上に身を乗り出し、僕は先生に顔を近づけて問いかける。
「トモちゃん先生、最近調子はどうですか?ほら、春休みとか何してたのかなーって、ママは気になっちゃって」
「ちょ、調子は……悪くない。学校の仕事はあったものの少しは安めていた」
ふむふむ。何故そんな事を聞いてしまったのかは僕にも分からない。けれど目の前の先生の声をもっと聴きたい、話しをしたいと思ってしまう。のは、何故だろうか?
「古谷は春休み、変なことしてなかっただろうな?」
「トモちゃんは反抗期でちゅか?なんてね。興味のあるボランティアを見つけて、今週の土曜日から行ってきます」
「そうか、頑張れよ」
安堵に満ちた声。と、同時に先生は立ち上がり、空のカップとティーポットを洗い始めた。
「手伝います」
僕は布巾を棚の引き出しから出して、先生の洗ったカップを拭いていく。
「これって飲食店バイトか夫婦みたいですね、トモちゃん先生」
「すまん古谷……どっちも分からん」
色々教えてくれるのに、所々分からない事もある。だからきっとこの先生の事が気になってしまうのだろう。
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