男子校生は先生のママになりたい

振悶亭めこ

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プライベートは本屋さんで

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あれから数日後の放課後。僕は帰りに自転車で少し足を伸ばして書店に来ていた。
読み聞かせのボランティアの前に、自分でも何冊か絵本を持っていたいと考えて今、書店の絵本コーナーであれこれ物色している最中。低い目線で見やすいように作られたコーナーには、仕掛け絵本のサンプルや今売れている絵本などさまざまなものがあった。
「うーん……どれにしよう?金額的に3冊までになるし……」
棚の上の方の絵本ベストセラーランキングなるものの、第一位の絵本を手に取った。可愛らしい絵柄で消化器官やうんこについて子供達に教えるような内容のそれを開いた時……
「古谷……?」
後ろから聞き慣れた、心地よい声で呼ばれた。振り返るとそこには先生が立っていた。
「うんこのだいぼうけん……うんこなぁ……確かにガキは好きだよな、うんこネタ」
眉間に皺を寄せて笑いを堪え、先生がうんこを連呼している。学校では多分聞く事の無い台詞だろう。
「ですよね。読み聞かせの練習の絵本が欲しくて物色していた所です」
「そ、そうか……俺はあんまり詳しくないが、どんなものを選ぶか見ていていいか?」
堪えていた笑いを何とか押し込められたのだろう。先生は僕と絵本の棚を交互に見ていた。
「トモちゃん先生がママに読んでほちいよぅってものがあれば教えてくだちゃいねー」
「いや、一緒に選ぶから、外でその口調は辞めてくれ」

暫く黙って絵本を選び、先生と一緒にいくつか候補を絞る。
「……トモちゃん先生、辛い事があるならいつでも僕に愚痴ってくれてもいいのに」
先生の選んだ絵本は皆、悲しい物語だった。自分では選ばなかっただろう絵本の中から一冊を手に取る。
「辛い事……今年も、教室に入って教壇に立って言葉を発するまで誰にも気付かれない程度だ、大丈夫」
「え……いやその、大丈夫じゃ無さそうですよそれ」
もう一冊は定番の童話から、僕の好きな路線の絵本を手に取った。残り一冊は、最初に開いたうんこの本。
「所でトモちゃん先生はどんな本を買いに来たんですか?」
「ああ。これと……後は文具コーナーで必要なものをな」
先生は片手に科学雑誌を持っていた。文具コーナーは……言われてみればこの本屋で文具を買う事は今まで無かった気がした。
「トモちゃん先生のお買い物も、ご一緒させて下さい」
「すぐ終わるだろうけどな」
先生の後ろを歩き、文具コーナーへ。小ぢんまりとしているコーナーには大人向けのオシャレな文具が陳列されていた。学生でも使いそうなものはシャーペンや消しゴム、ルーズリーフぐらいという印象の。ノート一冊取ってもオシャレでそこそこのお値段がする。見慣れないものを好奇心で色々見ながら、先生が回転ラックをぐるぐる回しながら唸っている所に辿り着く。
「グリーティングカード?季節のご挨拶やお礼、誕生日……シンプルでオシャレですね。意外……」
先生の意外な一面なのか、必要性があってなのかは分からないけれど、どんなものを誰に送るのだろう?等と僕は色々考えてしまう。それは微笑ましくて、僕は自然と少しだけ笑った。
「待たせたな……って、何か楽しい事でもあったか?ほっぺたゆるゆるになってるぞ」
先生の手が僕の頬に触れた。軽く撫でられた頬が、とても熱くなる。
「くすぐったいですよ。さ、レジ行きましょう」
それぞれに選んだものをレジで会計を済ませ、書店を出た。外に出て、もう暗くなった空をぼうっと見上げた先生はぽつり、ぽつりと言葉を発する。
「単に鉢合わせただけだが……ありがとな、古谷。誰かと買い物なんて俺、あんました事無かったから。また来週、学校で」
また来週。来週……か。未来があるんだなって実感する。
「僕も帰ろう」
本屋の紙袋を前カゴに入れ、自転車を漕いで心地よい春の宵を感じながら家に帰った。
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