男子校生は先生のママになりたい

振悶亭めこ

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幕間〜坂野智の戸惑い〜

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ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
一年で最も日没が遅くなる季節。まだ明るい太陽に照らされた、放課後の家庭科室にリズミカルな手拍子が響いている。
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
「トモちゃん先生は、あんよがじょうず♡あんよがじょうず♡」
床に敷かれた筒状の寝袋の上、坂野智は仰向けに寝そべった状態で、上に跨るトシヲの奥めがけて下から腰を何度も突き上げていた。
「あっ、ああぁ♡あんよがじょうず♡あんよがじょう……ずっ♡♡♡」
下から直腸の奥深くを突き上げられながら、手拍子をし、甘ったるい吐息混じりでトシヲは智を見下ろす。柔らかめの癖っ毛に、眼鏡をかけ、目元は情欲で満ちた表情で。
「……勘弁してくれ…………」
智はぽつりと呟くが、トシヲの直腸深くまで繋がっている陰茎部分は剛直したままの状態だ。
「トモちゃんせんせぇは、いい子でちゅね~♡気持ちよーく、おしゃせいするまでもう少しでちゅよ~」
キュウキュウと、智の陰茎がトシヲの熱い蕾に締め付けられる。
「く……っ、うっ」
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
「がんばれっ♡がんばれっ♡トモちゃんがんばれっ♡」
トシヲは手拍子を再開し、同時に腰を動かして肉のぶつかり合う音までも響かせ始めた。屈辱的ではあるものの、その卑猥さに飲み込まれずにはいられない。
「は……っ、うぅっ……」
智は低い呻き声の後、トシヲの胸元に手を伸ばし、最近ぷくりと成長してきている乳首をキュッと摘んで少し強めに扱いていく。
「あっ♡ああぁっ……ちくびっ、コリコリ♡きもちいいっ♡♡♡ママはもうイッちゃいますぅ~♡はぁああんっ♡トモちゃ……せんせぇもっ、白いのぴゅっぴゅして気持ちよくなりまちょーねぇ♡」
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
激しく音を立てて、トシヲは上から腰を打ちつけた。智の陰茎も、キュウキュウ締め付ける蕾に擦られ、中の熱が全身に感染していくような感覚に耐えきれる事は無くて……
「……ぅっ、ああぁっ、イク!」
どくっ!どく…っ、ぴゅっ、ぴゅー!
「ああぁっ♡トモちゃんせんせぇの……♡おしゃせい奥までキてるっ♡ママもイッちゃうぅっ、あっ、あああぁぁっ♡♡♡」
ぴゅるっ、ぴゅるるるっ!
トシヲも後を追うように、起立した若い陰茎から白濁とした欲望を放った。
「よくできまちたねー、いい子、いい子」


「…….どうしてこうなった」
事後処理を済ませ、トシヲを家に帰した後、家庭科室の後片付けを済ませた智は頭を抱えていた。
男子校なら大丈夫だと思っていたのが間違いだと、気づいたのは三年目の夏至の頃合いで。
今もまだ全てを曝け出してはいない本性を、トシヲに暴かれるのも時間の問題だと。本性を表に出さないよう、生徒達とは距離を置いて接していた。結果、苗字ですら呼ばれる事も無く、存在感は薄くなっていた。同時に、寂しいとも思い始めていた矢先の事だった。

古谷トシヲ。この生徒は他の生徒とは違う存在な事は確かだ。初めて、名前を呼んでくれた子。
「全人類のママになりたい」
何だそりゃ?と思うような、歪んだ性癖が若くして染み付いてしまった子。
交流が生まれ、分かってきた事ももちろん、たくさんあった。
「全て、僕の可愛い、愛すべき子供達」
古谷のそれは、俺の中にもある欲望に似通っていた。抑えていた、欲望。古谷はまだ気づいていないだろうが、目覚め、気付き、開花したその先は?
「全ての生徒は、俺の可愛い教え子達だ」
そこに性欲を伴うと自覚している俺には、男であっても古谷トシヲは毒のある存在だった。

初夏。古谷の誕生日。一線を超えてしまった。
「こ、子作りの方法を実践で教えて下さい!……トモちゃん先生なら、出来ますよね?」
やはり男相手でも抑えきれないという現実が叩きつけられた。その声に、その目に、永遠から切り取った一瞬の煌めきを前に、でろりとした欲望が暴走寸前にまで追い込まれる。
下半身が反応してしまった。こんな化学反応は、知らないでいたかった。
後に古谷は
「男同士のものを、男女に置き換えてしても……肛門性交ですから子供は出来ません」
と。あれは一体何だったのだろう。

放課後の何気ない戯れは、いつの間にか俺の癒しになっていた。コーヒーや紅茶を一緒に飲むだけでも、暖かく甘やかな感触が全身に染み渡っていった。
一線を超えて性交するようになった後は、俺の性欲さえもが古谷によって「満たされている」のだと思うようになっていた。
「トモちゃん先生、恋ってどんな感じなんだろうね……」
答えとしてすぐに浮かぶものは脳内の分泌物によるバグ、幻想、妄想、狂気。そんな言葉ばかりで。
バグや狂気であれば今、俺のモノ思う部分全てもバグか狂気の類いになりそうで。
「お察し下さいと言った筈だ」
バグ、或いは狂気を、生徒に気にかけられたくは無い。今居る生徒たちを無事に卒業へ導く事が俺の仕事だ。俺自身の脳内のバグや狂気で生徒を振り回し、最悪退学に追い込ませる事になるのは御免だ。
生理現象ならばまだ分かる。多分これは感情論の話だろう。理解出来る分野では無い。

狂気と名付けるならば。
古谷との戯れが始まった時から、俺は狂気の中に居たのかも知れない。
書店で古谷とバッタリ出くわしたその日、その時。正直俺は気まずかった。だった一人の生徒にバースデーカードを贈る事は、全ての生徒を愛おしいと思う気持ちに反している。分かってはいた、が。
「読み聞かせの練習の絵本が欲しくて物色していた所です」
真剣に絵本を選んでいる、俺がバースデーカードを贈ろうと思っていた本人に出くわしてしまった。結果、買うつもりは無かった少額の図書カードも一緒に買って、バースデーカードに挟んで渡したのだ。


夏休みに入り、あの戯れの日々が幻の彼方だったと思うような、単調な日々の連続になった。少しの仕事と、穏やかな時間は暑さと共に緩やかに過ぎ去ろうとしていた。
死にゆく蝉たちの、最期のいのちの声の中、少しだけ足を伸ばして行ってみたショッピングモールからの帰り道。
「……古谷?」
オシャレなカフェの窓際の席に古谷の姿を見つけた。一緒に居たのは大学生ぐらいだろうか?親しげに話している様子が見えた。明るい茶髪に小ぶりなピアス、ラフな服装の大学生風の男がこちらを見つめ返し、にこやかに手を振ってきた。暑さの中、体温は上昇していた筈だろう。なのに、心の中には冷たい何かが走り抜けていった気がした。
俺はにげるようにして家に帰り、すぐに熱いシャワーを浴びた。

こころ、とは。
どこにあるのか分からないモノに想いを馳せる程、俺の中に狂気が満ちているのかも知れない。
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