男子校生は先生のママになりたい

振悶亭めこ

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これが……ヤキモチ?

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夏休みが終わり、新学期が始まり、校内は文化祭に向けて賑やかになっていった。青空に、ウロコ雲。湿度の和らいだ風が心地よい、ある日の事。
三年生の、トシヲのクラスには受験生が多く、文化祭では手抜きの代名詞「休憩所」をやる事が決まっていた。前日辺りに机と椅子をそれっぽく並べて、テーブルクロスをかけ、大きめの段ボール箱にゴミ袋をかけてハイ、おしまい。というもの。その他の事前準備はポスターとテーブルクロスを作る事、ゴミ箱に使う箱を燃えるゴミと燃えないゴミと資源ゴミの三つ分を調達してくる程度。

ガタガタガタガタ……
家庭科室に、ミシンの音が響いている。トシヲは今、大きな布の端を縫ってテーブルクロスを作っていた。
「古谷、アイロンがけ全部終わったぞ」
「端を縫ってあるものは教室にお願いします。まだのものは明日、アイロンがけを」
「りょーかい!」
ミシンの音を響かせて、手元を見ながら普段より大きめの声でクラスメイトに応えた。クラスメイトは仕上げのアイロンがけの終わったテーブルクロスを畳んで重ねて、教室に戻って行った。一人残ったトシヲは、残りの布にもミシンをかけていく。
ガラリ。
他に誰も居なくなった家庭科室のドアが開く。
「ん?他にまだ残ってたり、ほつれた所あっ……」
最後の1枚のミシンがけが終わり、トシヲは開いたドアに目線を向ける。
「トモちゃん先生……!」
ガタンと椅子の音を立て、家庭科室の入り口で気まずそうな表情を浮かべたまま立ち尽くしている智の元に、トシヲは駆け寄った。
「文化祭の準備か。邪魔したな」
「今ちょうど終わった所です。どうぞどうぞ」
「いや……いい」
トシヲは立ち去ろうとした智の腕をガッシリと掴み、家庭科室の中に引き込んで素早くドアを閉め、鍵をかける。
「トモちゃん先生、今日は様子がおかしいです。きちんと、お話しましょう!」
眉間に皺を寄せ、トシヲは智に顔を近づけた。そのまま智の腕を引っ張り近くの席に座らせる。
「結論から言うと、古谷……爛れた関係はもう、終わりにしよう。教師と生徒に戻るだけだ。問題無いだろ」
トシヲは目を見開き、冷たく淡々とした口調の智の声に耳を傾ける。智の肩を掴んだ両手が、僅かに震えていた。
「古谷は夏休みに彼氏が出来たんだろ?相手の人を泣かせるような事はもう辞めた方がいい」
「彼氏?ちょっと意味が分かりません」
間の抜けた声の疑問符がトシヲの口から外に飛び出す。彼氏とは?トシヲに心当たりは無かった。
「覗き見したようで悪いとは思っている。が……古谷、夏休みにカフェでデートしてただろ?茶髪の優男と」
夏休み、カフェ。茶髪の優男……頭の中で話の繋がったトシヲはふふっと笑った。
「トモちゃん先生。その人ですね、ボランティア先の先輩ですよ。あの時僕は少しモヤモヤしていたので相談に乗って貰ったんです。ヤキモチ、というやつで不機嫌さんになっちゃってたんでちゅか~?」
一瞬、智の頬は僅かに赤みが差し、顔を逸らした。トシヲはあやすように、優しい手つきで智の頭を撫でている。
「……俺じゃ役に立たない、と?」
「夏休み中でしたし、トモちゃん先生の連絡先や住所は知りませんし、それに……」
「それに?言ってみろ」
「トモちゃん先生が嫌でなければ、そのモヤモヤは今から解消出来ますから」
チュッ、と、トシヲは智の額にキスをし、にっこりと微笑んだ。眼鏡越しの瞳には、情欲の種火が宿っていた。

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