学校の脇の図書館

理科準備室

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雲地くんの「図書館うんこ」

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ぼくのクラスではちょっと前に雲地くもじくんがこの市立図書館で「図書館うんこ」した。
その日は学校が終わると雲地くんを含む何人かのクラスの友だちと下校時に市立図書館に寄ったんだ。ぼくたちが玄関の棚にランドセルを置いて図書閲覧室に入ろうとしたとき、雲地くんがぼくたちを呼び止めた。
「ち、ちょっと、待ってよ」
そして雲地くんは突然重く 半分泣きそうな表情をしてぼくたちをじっと見ながら叫んだ。
「これからうんこしてくる。ホントは学校で一日中ずっとがまんしていたんだよ! 腹、いたいんだよ、絶対ついてこないでよ」。
「うん、ここで待っているから、はやくしてこいよ」
「みんな本当にここで待っててよ、ついてこないでよ、ホントだよ!」
と訴えるように念を押すと、本当にぎりぎりだったみたいでおなかを抱えながら薄暗い廊下の奥にあるトイレに向って半ズボンのおしりをゆらゆらと揺らしながらパタパタという足音をたててトイレを目指して走って行った。
それでも、こちらが気になるのか走りながら何度もちらちらとぼくたちを振り返るのが見えた。
やがて、トイレの戸がガラガラ閉まる音が聞こえて彼がその中に消えるとすぐに明らかにしゃがむ方のドアがバタンとしまる音が聞こえた。
それが聞こえるとぼくたちは何も言わずに顔を見合わせて、じっと彼の去っていった方を見ていた。ぼくたちの思いはみんな同じで「あいつ、今ごろうんこ中!」だった。
こうしてぼくたちが立って雲地くんの帰りを待っている間に彼は薄暗い廊下のずっと奥のトイレのしゃがむ方でおしりをだしてうんこしているんだ、そういう光景をまるで散歩に連れてきた犬が足元でフンを始めたかのように想像していた。ぼくは胸がドキドキしてなんだかコーフンして、おちんちんまで少し固くなった。
仮にうんこ禁止の穴実小の校内でそういう雲地くんみたいな告白をしてうんこに行けば、みんなためらうことなく彼を通せんぼして、ぎりぎりまでガマンさせたうえで、彼をトイレまで追いかけて行って、昼休みの腰帯くんのおにいさんのようにドアを叩いたりドアの下から のぞいたりしてからかうところだった。
特に、その中の一人で、前に一度学校のトイレでうんこしているところを雲地くんに見つかって、その一部始終をクラスの男子の前でバクロされた大弁くんにとって今回は絶好の仕返しのチャンスだった。
でも、穴実市立図書館が、ぼくたち穴実小の男子児童にとって「大人の場所」である以上、そういったいたずらは不可能だった。だから雲地くんは確信犯でみんなの見ている前で「図書館うんこ」に行ったんだ。
やがて水が流れる音が聞こえると、服の裾を直したりベルトを締めたりししながらトイレから雲地くんが出てくるのが見えた。彼はそれまでとは打って変わった晴れやかな表情で、「うんこじゃないよおしっこだよ、おしっこしただけで腹が痛いのがなおったよ」と言い訳しつつ悠然とぼくたちに向かって歩いてきた。
でも、それはウソだった。ぼくは、雲地くんが戻ってきてから、どうしても気になってすぐトイレに行ったけど、彼の入っていたらしいしゃがむ方は、うんこは流れていたのに、残っているニオイはものすごく臭かった。雲地くんはよほど大量のうんこをしたんだろう・・・。
 そのときは雲地くんだったけど、今度はぼくの番だった。5限の授業の終わり頃には、もうぼくは本当にその時の雲地くんのように市立図書館の薄暗い廊下をトイレに向かって思い切り走ることしか考えていなかった。いくら市立図書館でも家以外のうんこだからかなり恥ずかしかったけど、今のぼくにはそれしかラクになる方法はなかった。
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