学校の脇の図書館

理科準備室

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もう一つの穴実小のオキテ

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穴実小学校の校門を出てすぐに脇にある穴実市立図書館は10数年前にできたらしい古い木造モルタル塗りの建築物だったが、トイレは玄関に入って本を読む閲覧室と反対側にある薄暗い廊下の一番奥にあった。
そのトイレはぼくの住んでいた穴実市ではこの小学校のほかには市役所や公民館みたいな公共施設以外ではまず目にすることがない水洗式だった。同じく数年前にできたばかりの穴実小学校のトイレほど新しくはなかったけど掃除は行き届いていていつもきれいで、においも少しおしっこのにおいと消臭剤のにおいがするだけだった。もちろん紙が備え付けられていた。しかも紙は当時の普通の家のように黒ちり紙の束でなくて白いロールのトイレットペーパーだった。
そこに行くと、入り口や足場のすのこにズボンやパンツが脱いであったり、しゃがむ方への出入りをそのまま目撃したりと、学校ではめったに見ることのない穴見小の1年生から6年生までのいろいろな学年の子たちの「図書館うんこ」によく遭遇した。彼らもぼくみたいに下校時までうんこをがまんして、市立図書館に駆け込んでくるみたいだった。おまけに隣の学区の穴実市立太与たいよ小学校(学区は別だけど校舎は穴見小の近く)の子たちが「図書館うんこ」していくのまでときどき見かけた。
穴実市立図書館は、オキテにより学校ではうんこ禁止だった穴実小(たぶん太与小も)の子たちにとって家までガマンできないときの緊急避難所みたいな場所になっていた。
というのも、この市立図書館のトイレは「大人の場所」だから、そこで「図書館うんこ」する子は手を出してはいけないというのがもう一つの穴見小の1年生から6年生までの男子児童の間で固く守られているもう一つのオキテだったためだ。
ぼくたちにとって穴実市立図書館のトイレは、デパートやスーパーや市立体育館のトイレと同じ「大人の場所」だった。
たとえば、デパートのトイレに行ったとき、よその小学校の知らない子が個室に入っていったとする。でも、そこは当然「大人の場所」で大人の目が光っているから学校のようにいたずらできなかった。そんな場所で学校をドアの下からのぞいたり、ドアをしつこく叩くようことをしているのが大人に見つかったら、こっぴどく怒られるに決まっていた。
それと同様に穴見市立図書館のトイレも大人の目が光っているから「大人の場所」なので、たとえ穴見小の男子児童の「図書館うんこ」でも手を出してはいけないのがぼくたちのオキテになったんだ
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