学校の脇の図書館

理科準備室

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5限の社会科の授業

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ぼくが席をつくと間もなくチャイムが鳴って5限の社会科の授業が始まった。今日は5限で終わりだった。後は終わりの会をやって家に帰るだけだけど、もううんこはおしりの穴の入り口まで迫っていて、この授業はただ座っているだけだからなんとか乗り切れても、30分以上かかる家まで歩いている途中はどうしてもガマンできそうもなかった。
今日の社会科は「まちのしせつをたんけんしてみよう」だったけど、授業の先生の話なんかそっちのけで、ぼくは学校を出てから家に着く前にどこで寄り道してうんこするかということばかり考えていた。
ぼくが穴実あなみ小学校に通う通学路には、ぼくが大人になる頃にはコンビニとかスーパーが建てられたけど、そのころは普通の古い民家や昔ながらの商店しかなく、寄ってトイレを借りることは難しかった。
ただ、途中に児童公園が一つだけあって、そこに公衆便所はあることはあった。でも、その近くに幼稚園からの友だちが住んでいて、よく遊びに行くのでぼくはそこのようすを知っていたので使いたくなかった。
おしっこする方がただのコンクリートの溝になっていて、いつもアンモニアの臭いがする汲み取り式だった。遊んでいる最中おしっこするだけなら、その程度は平気だけど、問題はしゃがむ方だった。便器から立ち込めてくるニオイはおしっこのする方のアンモニアの臭いも混じって、特に夏になると、公衆便所の中はもちろんちょっと離れて遊んでいても目にしみるほど臭かった。
ぼくはその公園でおしっこをするときに、時々気になってこんなところ使う人いるのかなと気になってしゃがむ方の便器をのぞくけど、出したものがそのまま溜まっているのが見える暗い穴のふちは、本当にぎりぎりで駆け込んできた人がよく使っている感じの汚れ方をしていて、ウジ虫が這いあがってくることもあり、のぞくたびぼくは吐き気がした。おまけに個室のコンクリート壁には気持ち悪い落書きがいっぱい書かれていて、ぼくもその日ちり紙を忘れてきていたのに備え付けの紙もなかった。
もちろん児童公園は通学路わきなので、下校途中の子たちにうんこ中なのが見つかるキケンだってあった。
 かといって、途中は本当に民家や商店ばかりなので、「山のじいちゃん」といっしょに住んでいるいとこの康夫くんが徒歩で1時間以上もかかる通学の途中でうんこがどうしても間に合わなくなった友だちのことを面白おかしく話していたように、こっそりと隠れて用を足せる林や野原もなかった(仮にそういう場所があっても、ぼくは外でする勇気はなかったけど)。
そのとき、ぼくは市立図書館から借りていた「宇宙旅行のひみつ」がランドセルの中に入っていて、今日が返す日だったことを思い出した。そうだ、穴実市立図書館のトイレでの「図書館うんこ」なら、ぼくはうんこできるかもしれなかった。 

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