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4 楔
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裸になった僕はベッドの上で四つん這いになり、蓮華院の楔を受け入れる。
この仕事を始めてわかったが、異形のペニスは異様に大きいし、人によってはごつごつとしていたりと形状が違う。
「う、あ……」
「君はすごいな。何度も抱いているのにここはいつも、きゅうっと私のモノを締め付けて緩むことがない」
恍惚とした声で言い、蓮華院は激しく腰を揺らした。
「ひ、あ……」
最奥を開かれて、僕の背筋を快楽の波が駆け上がる。
気持ちいい、という想いはある。声も自然と出るし、快楽も確かに感じている。
けれどいつも、心は空虚だった。
蓮華院のあと、昼を挟んでふたりの客を相手にし、僕は四時前に娼館へと戻る。
朝と変わらない格好で受付に座るリイナに売上金を渡す。
給料は翌月の十日にまとめて支払われるため、すぐには受け取れなかった。
「あんたみたいに十年以上こんな仕事を続ける奴はほんと稀だよ。子供、育ててるんだっけ」
「あぁ」
短く答え、僕は彼女に背を向ける。
「帰るのかい?」
「シャワー浴びてからね」
そうしないと、匂いでカナタにばれかねない。
この仕事はカナタには内緒にしていた。知れば彼を傷つけるかもしれないからだ。
それは僕の望むことじゃない。
身体を入念に洗い、特に中に出された精液をかきだす。
「う……あ……」
朝の蓮華院と言い、最後の客と言い、ゴムを使いたがらない奴がいる。
中出しされると腹を壊すから嫌なのに、僕の願いはいつも聞き届けられなかった。
身体中を綺麗にして僕は娼館を後にする。早く帰らないと、夕食の支度が間に合わなくなる。
電車に乗り、タカサキに戻ると高校生たちの姿が多く見られた。
「でさー、数学の宿題なんだけど」
なんていう会話を横に聞きながら僕は足早に人が多い駅前を抜けてバスに乗り、家へと急いだ。
冷蔵庫に何があったっけ。
挽肉がすこし残っているからそれでそぼろを作ればいいか。それに鮭があったと思うからそれを焼けばいいか。あと米を炊いて、味噌汁を作って。
ごちゃごちゃと考えているうちに、マンションの最寄のバス停に着く。
太陽はすでに傾き始めていて、そらがオレンジ色に染まり始めていた。
この夕焼けを僕は何度、目にしただろう。そして僕はこれからもずっと、この空を見つめるだろう。
変わりゆく町の中、成長するカナタを見つめながら僕だけが変わらず異質であり続ける。
家に帰り、バタバタと風呂の掃除をして食事の準備を始める。
洪水により日本の多くの都市は水没し、原子力発電所も使えなくなってしまった。
今は水力、風力、太陽光発電などを使い、電力の供給はなんとか保たれている。だから不便さはなかった。
けれどガソリンは手に入りにくくなっているため、バスや電車が主な交通手段となっていた。
鮭を焼き、そぼろを作っていると、玄関から音が響いた。
「ただいまー!」
勢いよく廊下に続く扉が開き、カナタが姿を現す。
「お帰り、カナタ」
「あ、鮭のムニエル? おいしそうー!」
カウンターキッチンの向こう側からカナタがこちらを覗き込んでくる。
「あとそぼろとサラダだよ」
「やったー。俺そぼろ好きなんだ」
だから昨日、ハンバーグをつくった時にわざと挽肉をすこし残していたんだろう。
カナタは部屋に荷物を片付けに行き、部屋着に着替えてリビングへと戻ってくる。
「俺、お茶用意するね」
カナタは冷蔵庫を開けて、麦茶が入ったボトルを取り出す。
それに食器棚からグラスなどを取り出した。
来週、二十一日の金曜日に、カナタは十八歳になる。いわゆる成人だ。
高校生の内は面倒を見ると覚悟を決めているが来年からだどうなるのだろうか。
十二年もこの生活を続けてきた。
カナタのために娼夫になり、カナタのために時間を使ってきたがもうすぐ終わる、のだろうか。
来年の話を僕たちはしていない。
カナタは高校三年生だ。就職なり進学なりもう決めているはずだ。
だけどその話をカナタがしてくることはないし、僕から聞くこともなかった。
どちらかともなく避けている。
夕食の用意を終え、僕たちは向かい合って食卓に着く。
「いただきます」
「いただきます」
食事をとりながら僕はカナタの顔を見る。
「カナタ」
「ん……何?」
「来週の誕生日、何欲しい?」
そう尋ねると、彼は箸を握ったまま視線を上に向けた。
「どうしよ……悩んでるんだよね」
彼の七歳の誕生日から毎年プレゼントを上げている。
キャラクターグッズや本、テレビゲームへと変遷し、去年は外食が言い、と言われた。
しばらく悩んだカナタはいい事思いついた、というように目を輝かせて言った。
「ピアスしたい!」
「……卒業してからね」
間髪入れずに僕が言うと、カナタは身を乗り出すようにして言った。
「わかってるって! だから俺、卒業したらつけるから、音耶にピアス買ってほしい!」
ピアスは校則で禁止されているはずだ。だから卒業したらまあ、いいか……と思い、僕は承諾することにした。
「でもなんでピアスしたいの?」
「だって俺、耳長いじゃん? 町で見る耳長い人がピアスつけてるの超かっこいいからさ!」
と、高校生らしい事を言う。
「そう。わかったよ。じゃあ、明日一緒に買いにいく?」
どうせ明日は買い出しで外に行く。そのついでにと思ったけれど、カナタは目を見開いた後、首を横に振った。
「でも、ほら、当日までの楽しみにしたいから」
などと言い出す。
なら仕事のついでに買いに行くしかないか。
どんなピアスがいいのかさっぱりわからないけれど。
この仕事を始めてわかったが、異形のペニスは異様に大きいし、人によってはごつごつとしていたりと形状が違う。
「う、あ……」
「君はすごいな。何度も抱いているのにここはいつも、きゅうっと私のモノを締め付けて緩むことがない」
恍惚とした声で言い、蓮華院は激しく腰を揺らした。
「ひ、あ……」
最奥を開かれて、僕の背筋を快楽の波が駆け上がる。
気持ちいい、という想いはある。声も自然と出るし、快楽も確かに感じている。
けれどいつも、心は空虚だった。
蓮華院のあと、昼を挟んでふたりの客を相手にし、僕は四時前に娼館へと戻る。
朝と変わらない格好で受付に座るリイナに売上金を渡す。
給料は翌月の十日にまとめて支払われるため、すぐには受け取れなかった。
「あんたみたいに十年以上こんな仕事を続ける奴はほんと稀だよ。子供、育ててるんだっけ」
「あぁ」
短く答え、僕は彼女に背を向ける。
「帰るのかい?」
「シャワー浴びてからね」
そうしないと、匂いでカナタにばれかねない。
この仕事はカナタには内緒にしていた。知れば彼を傷つけるかもしれないからだ。
それは僕の望むことじゃない。
身体を入念に洗い、特に中に出された精液をかきだす。
「う……あ……」
朝の蓮華院と言い、最後の客と言い、ゴムを使いたがらない奴がいる。
中出しされると腹を壊すから嫌なのに、僕の願いはいつも聞き届けられなかった。
身体中を綺麗にして僕は娼館を後にする。早く帰らないと、夕食の支度が間に合わなくなる。
電車に乗り、タカサキに戻ると高校生たちの姿が多く見られた。
「でさー、数学の宿題なんだけど」
なんていう会話を横に聞きながら僕は足早に人が多い駅前を抜けてバスに乗り、家へと急いだ。
冷蔵庫に何があったっけ。
挽肉がすこし残っているからそれでそぼろを作ればいいか。それに鮭があったと思うからそれを焼けばいいか。あと米を炊いて、味噌汁を作って。
ごちゃごちゃと考えているうちに、マンションの最寄のバス停に着く。
太陽はすでに傾き始めていて、そらがオレンジ色に染まり始めていた。
この夕焼けを僕は何度、目にしただろう。そして僕はこれからもずっと、この空を見つめるだろう。
変わりゆく町の中、成長するカナタを見つめながら僕だけが変わらず異質であり続ける。
家に帰り、バタバタと風呂の掃除をして食事の準備を始める。
洪水により日本の多くの都市は水没し、原子力発電所も使えなくなってしまった。
今は水力、風力、太陽光発電などを使い、電力の供給はなんとか保たれている。だから不便さはなかった。
けれどガソリンは手に入りにくくなっているため、バスや電車が主な交通手段となっていた。
鮭を焼き、そぼろを作っていると、玄関から音が響いた。
「ただいまー!」
勢いよく廊下に続く扉が開き、カナタが姿を現す。
「お帰り、カナタ」
「あ、鮭のムニエル? おいしそうー!」
カウンターキッチンの向こう側からカナタがこちらを覗き込んでくる。
「あとそぼろとサラダだよ」
「やったー。俺そぼろ好きなんだ」
だから昨日、ハンバーグをつくった時にわざと挽肉をすこし残していたんだろう。
カナタは部屋に荷物を片付けに行き、部屋着に着替えてリビングへと戻ってくる。
「俺、お茶用意するね」
カナタは冷蔵庫を開けて、麦茶が入ったボトルを取り出す。
それに食器棚からグラスなどを取り出した。
来週、二十一日の金曜日に、カナタは十八歳になる。いわゆる成人だ。
高校生の内は面倒を見ると覚悟を決めているが来年からだどうなるのだろうか。
十二年もこの生活を続けてきた。
カナタのために娼夫になり、カナタのために時間を使ってきたがもうすぐ終わる、のだろうか。
来年の話を僕たちはしていない。
カナタは高校三年生だ。就職なり進学なりもう決めているはずだ。
だけどその話をカナタがしてくることはないし、僕から聞くこともなかった。
どちらかともなく避けている。
夕食の用意を終え、僕たちは向かい合って食卓に着く。
「いただきます」
「いただきます」
食事をとりながら僕はカナタの顔を見る。
「カナタ」
「ん……何?」
「来週の誕生日、何欲しい?」
そう尋ねると、彼は箸を握ったまま視線を上に向けた。
「どうしよ……悩んでるんだよね」
彼の七歳の誕生日から毎年プレゼントを上げている。
キャラクターグッズや本、テレビゲームへと変遷し、去年は外食が言い、と言われた。
しばらく悩んだカナタはいい事思いついた、というように目を輝かせて言った。
「ピアスしたい!」
「……卒業してからね」
間髪入れずに僕が言うと、カナタは身を乗り出すようにして言った。
「わかってるって! だから俺、卒業したらつけるから、音耶にピアス買ってほしい!」
ピアスは校則で禁止されているはずだ。だから卒業したらまあ、いいか……と思い、僕は承諾することにした。
「でもなんでピアスしたいの?」
「だって俺、耳長いじゃん? 町で見る耳長い人がピアスつけてるの超かっこいいからさ!」
と、高校生らしい事を言う。
「そう。わかったよ。じゃあ、明日一緒に買いにいく?」
どうせ明日は買い出しで外に行く。そのついでにと思ったけれど、カナタは目を見開いた後、首を横に振った。
「でも、ほら、当日までの楽しみにしたいから」
などと言い出す。
なら仕事のついでに買いに行くしかないか。
どんなピアスがいいのかさっぱりわからないけれど。
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