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53 心が揺れる
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眠りは浅く、目が覚めてスマホを確認してしまう。
メッセージが届いていて、表示された名前に心臓が跳ねた。
千早……
メッセージの受信時刻は、二十三時半。
ちょうど瀬名さんとやり取りしていたころ……かな。
千早、大丈夫かな。
あいつがどれだけ不安定なのか、俺は知ってる。
ひとりの夜なんて、過ごせるんだろうか。
俺は震える指で、スマホをタッチしてメッセージを確認する。
書かれていたのは一言だった。
『そばにいてほしい』
メッセージを見て、心が揺れる。
千早、どうしてるんだろう。
俺のいない土曜日の夜を、どう過ごしてるんだろう。
「行きたいの?」
瀬名さんの声が聞こえたかと思うと、彼は動きそして、気がついたら俺は、瀬名さんに覆いかぶさられていた。
え、何?
驚きで声も出ない。
オレンジ色の淡い光の中で、いつもの笑顔と違う、切羽詰まったような顔が視界に映る。
そして――俺を抱くときの千早と同じギラついた目をして、俺を見つめている。
ど、どういうことだよ……
何でこの人、こんな獣みたいな目をしてるんだ?
「君といると、僕は自分がアルファだって、思い知らされるよ。僕はずっと、君を犯したくてたまらないんだから」
……なんで?
俺はオメガじゃないのになんで。
「アルファとしての征服欲、支配欲かな? 最初は本当に興味だったよ。なんでベータである君が、マーキングなんてされてるのかって。そして、彼の存在を知って……手に入らないと思うと欲しくなる。奪いたくなる。僕もしょせん、アルファなんだ」
苦しげな、瀬名さんの声。
「せ、な……」
「悠人、だよ、琳太郎」
この声。
千早と同じ響きの声。
人を従わせようとする、威圧のある声に、俺は弱い。
「ゆ、うと……さん」
俺の声は震えていた。
恐怖が、俺の心を侵し始めてる。
「そうだよ、琳太郎。よく言えました。この間……水飲ませたときだって本当は、抱きたくて仕方なかった。でも、そんなことしたら僕は親や、君の彼と同じになる。それはそれで、耐えられない」
あのキスされたとき、そんなこと考えてたのかよ?
「仕方ないから自分でなんとかしたけど、虚しくなったよね。君が手元にいるのに、なんでこんなことしてるんだろうって。僕は、アルファとしての本能が希薄だと思ってた。誰かを支配したいとか、犯したいなんて思ったことなかったから。でも、僕はしょせん、アルファなんだ」
瀬名さんの顔が近付きそして、唇が重なる。
触れるだけのキスに、心が跳ねる。
「行きたいと言うなら止めるよ? 彼が迎えに来たら、僕は君を渡さない。彼、近くまでま来てるんじゃないかな? うちの場所は知ってるはずだし」
千早が……近くに……?
「彼もアルファだからね。番を取り戻す為に来てるとは思うけど。でもあれかな。僕が、君を傷つけてるのはお前だって話したから、躊躇してるのかも」
本当に千早はそばまで来てるんだろうか?
どうしよう、俺。
メッセージ返したい、けど、今は動けない。
「なんでただのベータに、こんなに心を乱されるのかって思うよ。僕らの道理に君を巻き込むのは間違ってるのに」
言いながら瀬名さんは首を振り、そして、切なげに俺を見つめた。
「琳太郎、僕は、君を抱きたいんだ」
また、この声。
人を従わせる声だ。
俺が、瀬名さんに抱かれる……?
そんなの拒絶したいのに声が出ない。
拒絶が悪い事のような気がして、何も言えない。
「弱ってる君に選択させるのはひどいことだとわかってるのに、そんな君をレイプしようとしてる僕はほんと、最低だ」
その声に含まれているのは、嫌悪の声。
アルファとしての本能をこの人は嫌悪してる……のかな?
俺は瀬名さんに抱かれるのか?
なんで。
どうして。
俺はベータなのに。
「ゆうと……さん」
「ああ、君に名前を呼ばれるのは心地いいね。それだけでイっちゃいそうだ」
うっとりとした顔でそんなことを呟く。
何言ってるんだこの人は。
「ねえ、君を今すぐ抱きたい。犯したい。中に挿れて快楽に染まる顔を見たい。さっき、琳太郎、欲情してたでしょ? 顔、すごく色っぽかったよ」
ああ、やっぱり気が付いてたんだ。
そう思うと恥ずかしさに身体中が熱くなる。
「琳太郎は、僕に抱かれるの、嫌?」
嫌に決まってる。
なのに俺は動けない。
何も答えられず俺は、黙って瀬名さんの顔を見つめた。
すると瀬名さんは首を振り、
「ほんと、僕は最低だ。今の君に選ばせようとするのはいけないことだってわかってるのに」
と、苦しげな声で言う。
瀬名さんは、服の上から俺の身体を撫で、
「ずっと触れたかったよ。君に」
と呟く。
手が乳首を掠めたとき、思わず声を漏らしてしまう。
「あ……」
「色っぽい声だね。乳首、相当開発されてるのかな。そう思うと悔しいよ」
そしてまた、胸を撫でる。
指が乳首を探り当て、服の上から抓られまた、声が出てしまう。
「あ、ン……」
「やっぱり抱きたい。でも駄目だとわかってる。そんなことしたら、もっと君の心、壊しちゃうよね」
言葉とともに手が止まり、瀬名さんは俺の隣りに横たわると身体を抱きしめてきた。
骨が折れるんじゃないかってくらい、強く。
「彼に渡したくないなあ。今夜はこのままここにいて、僕の隣で寝てほしいよ」
余裕のない声が、耳のすぐそばで響く。
どうしよう、俺。
心がゆらゆらと揺れ動く。
瀬名さんが苦しんでる。
そう思うと心が乱れてしまう。
でも俺は、瀬名さんに言われたことも気になって仕方なかった。
千早が、そこにいるかもしれない。
そう思うと、会いたい気持ちが膨らんでくる。
俺の苦しさを、瀬名さんは受け止めると言っていた。
じゃあ、千早の苦しみは一体誰が受け止めるんだろう?
メッセージが届いていて、表示された名前に心臓が跳ねた。
千早……
メッセージの受信時刻は、二十三時半。
ちょうど瀬名さんとやり取りしていたころ……かな。
千早、大丈夫かな。
あいつがどれだけ不安定なのか、俺は知ってる。
ひとりの夜なんて、過ごせるんだろうか。
俺は震える指で、スマホをタッチしてメッセージを確認する。
書かれていたのは一言だった。
『そばにいてほしい』
メッセージを見て、心が揺れる。
千早、どうしてるんだろう。
俺のいない土曜日の夜を、どう過ごしてるんだろう。
「行きたいの?」
瀬名さんの声が聞こえたかと思うと、彼は動きそして、気がついたら俺は、瀬名さんに覆いかぶさられていた。
え、何?
驚きで声も出ない。
オレンジ色の淡い光の中で、いつもの笑顔と違う、切羽詰まったような顔が視界に映る。
そして――俺を抱くときの千早と同じギラついた目をして、俺を見つめている。
ど、どういうことだよ……
何でこの人、こんな獣みたいな目をしてるんだ?
「君といると、僕は自分がアルファだって、思い知らされるよ。僕はずっと、君を犯したくてたまらないんだから」
……なんで?
俺はオメガじゃないのになんで。
「アルファとしての征服欲、支配欲かな? 最初は本当に興味だったよ。なんでベータである君が、マーキングなんてされてるのかって。そして、彼の存在を知って……手に入らないと思うと欲しくなる。奪いたくなる。僕もしょせん、アルファなんだ」
苦しげな、瀬名さんの声。
「せ、な……」
「悠人、だよ、琳太郎」
この声。
千早と同じ響きの声。
人を従わせようとする、威圧のある声に、俺は弱い。
「ゆ、うと……さん」
俺の声は震えていた。
恐怖が、俺の心を侵し始めてる。
「そうだよ、琳太郎。よく言えました。この間……水飲ませたときだって本当は、抱きたくて仕方なかった。でも、そんなことしたら僕は親や、君の彼と同じになる。それはそれで、耐えられない」
あのキスされたとき、そんなこと考えてたのかよ?
「仕方ないから自分でなんとかしたけど、虚しくなったよね。君が手元にいるのに、なんでこんなことしてるんだろうって。僕は、アルファとしての本能が希薄だと思ってた。誰かを支配したいとか、犯したいなんて思ったことなかったから。でも、僕はしょせん、アルファなんだ」
瀬名さんの顔が近付きそして、唇が重なる。
触れるだけのキスに、心が跳ねる。
「行きたいと言うなら止めるよ? 彼が迎えに来たら、僕は君を渡さない。彼、近くまでま来てるんじゃないかな? うちの場所は知ってるはずだし」
千早が……近くに……?
「彼もアルファだからね。番を取り戻す為に来てるとは思うけど。でもあれかな。僕が、君を傷つけてるのはお前だって話したから、躊躇してるのかも」
本当に千早はそばまで来てるんだろうか?
どうしよう、俺。
メッセージ返したい、けど、今は動けない。
「なんでただのベータに、こんなに心を乱されるのかって思うよ。僕らの道理に君を巻き込むのは間違ってるのに」
言いながら瀬名さんは首を振り、そして、切なげに俺を見つめた。
「琳太郎、僕は、君を抱きたいんだ」
また、この声。
人を従わせる声だ。
俺が、瀬名さんに抱かれる……?
そんなの拒絶したいのに声が出ない。
拒絶が悪い事のような気がして、何も言えない。
「弱ってる君に選択させるのはひどいことだとわかってるのに、そんな君をレイプしようとしてる僕はほんと、最低だ」
その声に含まれているのは、嫌悪の声。
アルファとしての本能をこの人は嫌悪してる……のかな?
俺は瀬名さんに抱かれるのか?
なんで。
どうして。
俺はベータなのに。
「ゆうと……さん」
「ああ、君に名前を呼ばれるのは心地いいね。それだけでイっちゃいそうだ」
うっとりとした顔でそんなことを呟く。
何言ってるんだこの人は。
「ねえ、君を今すぐ抱きたい。犯したい。中に挿れて快楽に染まる顔を見たい。さっき、琳太郎、欲情してたでしょ? 顔、すごく色っぽかったよ」
ああ、やっぱり気が付いてたんだ。
そう思うと恥ずかしさに身体中が熱くなる。
「琳太郎は、僕に抱かれるの、嫌?」
嫌に決まってる。
なのに俺は動けない。
何も答えられず俺は、黙って瀬名さんの顔を見つめた。
すると瀬名さんは首を振り、
「ほんと、僕は最低だ。今の君に選ばせようとするのはいけないことだってわかってるのに」
と、苦しげな声で言う。
瀬名さんは、服の上から俺の身体を撫で、
「ずっと触れたかったよ。君に」
と呟く。
手が乳首を掠めたとき、思わず声を漏らしてしまう。
「あ……」
「色っぽい声だね。乳首、相当開発されてるのかな。そう思うと悔しいよ」
そしてまた、胸を撫でる。
指が乳首を探り当て、服の上から抓られまた、声が出てしまう。
「あ、ン……」
「やっぱり抱きたい。でも駄目だとわかってる。そんなことしたら、もっと君の心、壊しちゃうよね」
言葉とともに手が止まり、瀬名さんは俺の隣りに横たわると身体を抱きしめてきた。
骨が折れるんじゃないかってくらい、強く。
「彼に渡したくないなあ。今夜はこのままここにいて、僕の隣で寝てほしいよ」
余裕のない声が、耳のすぐそばで響く。
どうしよう、俺。
心がゆらゆらと揺れ動く。
瀬名さんが苦しんでる。
そう思うと心が乱れてしまう。
でも俺は、瀬名さんに言われたことも気になって仕方なかった。
千早が、そこにいるかもしれない。
そう思うと、会いたい気持ちが膨らんでくる。
俺の苦しさを、瀬名さんは受け止めると言っていた。
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