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5本当にやってきた
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カスカード公国には幅の大きな滝がある。
その大きさは大陸随一とも言われている。
滝と湖の国なので、産業の中心は漁業と林業と観光だ。
大学の誘致にも積極的で、隣国フラムテールに程近いこの町プレリーには大きく有名な大学がある。
だから、プレリーは学生の町と言われていて、学生向けのアパートメントや格安のお店がたくさんある。
だから私みたいな若い女性がひとり暮らししていてもさほど目立たなかった。だからひとり暮らしを満喫できていたし、神官見習いの仕事も楽しくできていた。
半年前に魔法を教えあっていたユリアンと暮らすようになり、ひとり暮らしではなくなったけれど、彼との生活はうまくいっている。
まあ、私は仕事で日中は家にいないし、ユリアンも基本私にあまり干渉してこないからなんだろうけれど。
さて、私は心底困惑していた。
一年前直接マティアス様にお話ししたとき、許嫁の話はなくなったと思ってたのにな。
おかしい。
なんでこうなるんだろう?
父が毎月使者を寄越すのも、単に誰でもいいから結婚しろって話だと思ってたけれど。
マティアス様は無かったことにするつもりはないってことだよね?
じゃなくちゃあんな賭けとか言い出さないよね。
いやほんと、どうやって諦めてもらおう。
うーん、一緒に暮らしていたらきっと嫌な部分とか目につくよね?
それで呆れてなかったことにってなるかもしれないし。
よし、それにかけよう。
「そういうことでユリアン、一階のお部屋片付けるの手伝って」
「うん、わかった」
一週間後に引っ越してくるというマティアス様のために、私は部屋のそうじをしたり布団の準備等をした。
そして、約束どおり本気で王子様は私の家に引っ越してきた。
と言っても旅行鞄ひとつ持ってきただけなんだけど。
「ていうか、なんですかこれ」
呆れ顔でいうのはリュシーだった。
私の侍女で、今は実家に戻り家の手伝いをしながら週に一度私の様子を見に来て実家に報告をしている。
リュシーいわく、私の父はこの展開を喜んでいるらしい。
いや、普通に考えて女のひとり暮らしの家に大人の男が転がり込むとかおかしいと思うんだけれど。
親なら止めろよと思うんだけれど。
喜ぶって、どういうことなの。
「このままご婚約されたらと、思っているようですよ」
というリュシーの言葉に私は首を横に振った。
「やめてよ、リュシー。
私が結婚なんてすると思うの?」
そう問いかけると、彼女は肩をすくめた。
「そうですねえ、人生何があるかわかりませんから」
などと言ってあさってのほうを見ている。
荷物を置いて居間に戻ってきたマティアス様は、リュシーを見て頭をさげた。
「リュシーさんですね。
話は伺っています」
すると、リュシーも深々と頭を下げた。
「エステル様に長らくお仕えしております、リュシーでございます。
よろしくお願いいたします。
殿下は町で働いて見識を深めたいとわざわざこちらで仕事見つけたと伺いましたけれど」
「えぇ、外で働いて暮らしてみたかったんですよね」
なんて言って、マティアス様は微笑む。
「なんかどこかで聞いたようなお言葉」
ぼそりとリュシーが言う。
彼女は私の方を向いて、
「似た者同士のようですから、お似合いだと思いますが」
なんて事を言い出す。
どこがにてるの、どこが。
「何言ってるの、リュシーは。
私はそんな気はないの。
あと一年はここで暮らすんだから」
「そのあとはどうなさるんですか?
ユリアンさんだっていますし」
そう言われて、私は押し黙る。
じつはあれこれ理由をつけてここに住み続ける計画とは言えない。
家を一度出てしまえば、そう簡単に連れ戻されはしないだろうと踏んでいる。
言いくるめてあと一年、あと一年と先伸ばしにして結婚を諦めさせる計画なんだけれどなあ。
それが顔に出たのだろうか。
リュシーがじと目になる。
「あ、何か企んでいらっしゃいますね」
「何のことかしらね」
私はすっとぼけてそっぽを向く。
そうねえ、結婚とかどうでもいいけど、付き合うはしてみたいかも。
でもなあ、いないんだよね誰も。
幸せな夫婦ならたくさん見るんだけれど、それ以外で会う異性はだいたい既婚者だ。
ちなみに獣人とは結婚できない。
子供できないし、寿命が余りにも違いすぎるからだ。
「まあ、私からはとやかく言えませんが。
ところでエステル様、お父様のご命令で私は週に七回、ここに通うよう申し付けられたのですが」
「へえ、週に七回ねぇ」
ん?
ちょっと待て?
「それって毎日じゃないの?」
すると、リュシーは大きく頷いた。
「はい、まあ、家事をお手伝いするのは一日おきとなりますが、様子だけは毎日見に行くようにとのお申し付けで」
「リュシー、家のことはいいの?」
「実家にいても暇ですから、まだ家事をしていた方が楽しいです」
リュシーの家には侍女や侍従がいるもんね。
そもそも私が家をでたからお目付け役として実家に帰されてるだけだし。
「エステルさんがいるから、私も親を説得するのが楽でした」
マティアス様はにこやかに言った。
私が親を説得するのにリュシーを利用したように、殿下は私を利用したのか。
うーん、文句言えない。
「ですが、女のひとり暮らしの家に住むって反対されませんか、普通」
「『将来結婚するなら問題ない』とか言ってたかな」
ああ、確かに結婚するなら問題ないか。
いや、でも私にはその気がないから。
私が彼の同居を認めたのだって、ユリアンのお母さんを探すのに恩を売っとけば便利かなとか思っただけだし。
「賭けで許嫁を決めてしまうような方々ですからねぇ。
普通とは違うかと」
ぼそりと言うリュシーに私はため息をついて頷いた。
にしても、王子が会社で事務員とか、なんていうかおかしな話だね。
「事務仕事なんてできるんですか?」
と尋ねると、彼は、
「多少はね」
と答えた。
ていうか、王子なのに働くとかすごいな。
働かなくてもフラムテール王国なら生きていけるだろうに。
「俺は臨時で一年間雇われることになっただけだから、まあ、気楽にやるよ」
「そうですか。
ところで殿下」
「名前で呼んでもらえるほうがありがたいんだけれど。
とりあえず、身分を隠しているから」
あ、そうか。
そうなるとマティアス様もまずいから……えーと……
「マティアス、さん」
呼び捨てにもできないから、考えて妥協した呼び方だったんだけれど。
「まあ、それでもいいけど」
なぜかマティアス様は口を抑えて笑っている。
おかしいの、これ、おかしい?
よくわかんないけどいいや。
私は彼に握っていた鍵を差し出した。
「この家の鍵です。とりあえず渡しておきます」
「ありがとう、エステルさん」
「あと、二階には絶対に上がらないで下さいね」
二階は私とユリアンの部屋がある。
絶対、を強調して言うと、彼は頷いた。
「約束はそれだけでいいの?」
「はい」
他になにかあるか?
「じゃあ俺からはこれを」
そして差し出された手に握られていたのは、明らかに指輪が入っています、という感じの小さな白い箱だった。
って何これ。
呆然としつつ、差し出された箱を受けとる。
「一年後、その気が起きなかったら返してくれればいいから。
一年以内にその気がすこしでも起きたら、その中身を出してほしいかな」
「そんな気、起きますかねえ」
ぼそりと呟き、私は箱をあけた。
中には予想どおり、指輪が入っている。
淡い青の宝石がついた指輪だ。
「大きさは問題ないと思うんだけど、極端に太ったり痩せたりしなければ」
「って、なんで私の指輪の……」
と言いかけて私は隣にいるリュシーを見た。
案の定、彼女はそっぽを向いている。
犯人はリュシーか。
彼女なら私の指輪の大きさわかるもんね。
私は箱の蓋をしめ、
「わかりました」
と頷いた。
とりあえず、これ、部屋にしまっとこう。
つけることはないだろうし。たぶん。
その前に返すことになると期待するんだけれど。
「それじゃあよろしくね、エステルさん」
そして差し出された手を、私は握った。
その大きさは大陸随一とも言われている。
滝と湖の国なので、産業の中心は漁業と林業と観光だ。
大学の誘致にも積極的で、隣国フラムテールに程近いこの町プレリーには大きく有名な大学がある。
だから、プレリーは学生の町と言われていて、学生向けのアパートメントや格安のお店がたくさんある。
だから私みたいな若い女性がひとり暮らししていてもさほど目立たなかった。だからひとり暮らしを満喫できていたし、神官見習いの仕事も楽しくできていた。
半年前に魔法を教えあっていたユリアンと暮らすようになり、ひとり暮らしではなくなったけれど、彼との生活はうまくいっている。
まあ、私は仕事で日中は家にいないし、ユリアンも基本私にあまり干渉してこないからなんだろうけれど。
さて、私は心底困惑していた。
一年前直接マティアス様にお話ししたとき、許嫁の話はなくなったと思ってたのにな。
おかしい。
なんでこうなるんだろう?
父が毎月使者を寄越すのも、単に誰でもいいから結婚しろって話だと思ってたけれど。
マティアス様は無かったことにするつもりはないってことだよね?
じゃなくちゃあんな賭けとか言い出さないよね。
いやほんと、どうやって諦めてもらおう。
うーん、一緒に暮らしていたらきっと嫌な部分とか目につくよね?
それで呆れてなかったことにってなるかもしれないし。
よし、それにかけよう。
「そういうことでユリアン、一階のお部屋片付けるの手伝って」
「うん、わかった」
一週間後に引っ越してくるというマティアス様のために、私は部屋のそうじをしたり布団の準備等をした。
そして、約束どおり本気で王子様は私の家に引っ越してきた。
と言っても旅行鞄ひとつ持ってきただけなんだけど。
「ていうか、なんですかこれ」
呆れ顔でいうのはリュシーだった。
私の侍女で、今は実家に戻り家の手伝いをしながら週に一度私の様子を見に来て実家に報告をしている。
リュシーいわく、私の父はこの展開を喜んでいるらしい。
いや、普通に考えて女のひとり暮らしの家に大人の男が転がり込むとかおかしいと思うんだけれど。
親なら止めろよと思うんだけれど。
喜ぶって、どういうことなの。
「このままご婚約されたらと、思っているようですよ」
というリュシーの言葉に私は首を横に振った。
「やめてよ、リュシー。
私が結婚なんてすると思うの?」
そう問いかけると、彼女は肩をすくめた。
「そうですねえ、人生何があるかわかりませんから」
などと言ってあさってのほうを見ている。
荷物を置いて居間に戻ってきたマティアス様は、リュシーを見て頭をさげた。
「リュシーさんですね。
話は伺っています」
すると、リュシーも深々と頭を下げた。
「エステル様に長らくお仕えしております、リュシーでございます。
よろしくお願いいたします。
殿下は町で働いて見識を深めたいとわざわざこちらで仕事見つけたと伺いましたけれど」
「えぇ、外で働いて暮らしてみたかったんですよね」
なんて言って、マティアス様は微笑む。
「なんかどこかで聞いたようなお言葉」
ぼそりとリュシーが言う。
彼女は私の方を向いて、
「似た者同士のようですから、お似合いだと思いますが」
なんて事を言い出す。
どこがにてるの、どこが。
「何言ってるの、リュシーは。
私はそんな気はないの。
あと一年はここで暮らすんだから」
「そのあとはどうなさるんですか?
ユリアンさんだっていますし」
そう言われて、私は押し黙る。
じつはあれこれ理由をつけてここに住み続ける計画とは言えない。
家を一度出てしまえば、そう簡単に連れ戻されはしないだろうと踏んでいる。
言いくるめてあと一年、あと一年と先伸ばしにして結婚を諦めさせる計画なんだけれどなあ。
それが顔に出たのだろうか。
リュシーがじと目になる。
「あ、何か企んでいらっしゃいますね」
「何のことかしらね」
私はすっとぼけてそっぽを向く。
そうねえ、結婚とかどうでもいいけど、付き合うはしてみたいかも。
でもなあ、いないんだよね誰も。
幸せな夫婦ならたくさん見るんだけれど、それ以外で会う異性はだいたい既婚者だ。
ちなみに獣人とは結婚できない。
子供できないし、寿命が余りにも違いすぎるからだ。
「まあ、私からはとやかく言えませんが。
ところでエステル様、お父様のご命令で私は週に七回、ここに通うよう申し付けられたのですが」
「へえ、週に七回ねぇ」
ん?
ちょっと待て?
「それって毎日じゃないの?」
すると、リュシーは大きく頷いた。
「はい、まあ、家事をお手伝いするのは一日おきとなりますが、様子だけは毎日見に行くようにとのお申し付けで」
「リュシー、家のことはいいの?」
「実家にいても暇ですから、まだ家事をしていた方が楽しいです」
リュシーの家には侍女や侍従がいるもんね。
そもそも私が家をでたからお目付け役として実家に帰されてるだけだし。
「エステルさんがいるから、私も親を説得するのが楽でした」
マティアス様はにこやかに言った。
私が親を説得するのにリュシーを利用したように、殿下は私を利用したのか。
うーん、文句言えない。
「ですが、女のひとり暮らしの家に住むって反対されませんか、普通」
「『将来結婚するなら問題ない』とか言ってたかな」
ああ、確かに結婚するなら問題ないか。
いや、でも私にはその気がないから。
私が彼の同居を認めたのだって、ユリアンのお母さんを探すのに恩を売っとけば便利かなとか思っただけだし。
「賭けで許嫁を決めてしまうような方々ですからねぇ。
普通とは違うかと」
ぼそりと言うリュシーに私はため息をついて頷いた。
にしても、王子が会社で事務員とか、なんていうかおかしな話だね。
「事務仕事なんてできるんですか?」
と尋ねると、彼は、
「多少はね」
と答えた。
ていうか、王子なのに働くとかすごいな。
働かなくてもフラムテール王国なら生きていけるだろうに。
「俺は臨時で一年間雇われることになっただけだから、まあ、気楽にやるよ」
「そうですか。
ところで殿下」
「名前で呼んでもらえるほうがありがたいんだけれど。
とりあえず、身分を隠しているから」
あ、そうか。
そうなるとマティアス様もまずいから……えーと……
「マティアス、さん」
呼び捨てにもできないから、考えて妥協した呼び方だったんだけれど。
「まあ、それでもいいけど」
なぜかマティアス様は口を抑えて笑っている。
おかしいの、これ、おかしい?
よくわかんないけどいいや。
私は彼に握っていた鍵を差し出した。
「この家の鍵です。とりあえず渡しておきます」
「ありがとう、エステルさん」
「あと、二階には絶対に上がらないで下さいね」
二階は私とユリアンの部屋がある。
絶対、を強調して言うと、彼は頷いた。
「約束はそれだけでいいの?」
「はい」
他になにかあるか?
「じゃあ俺からはこれを」
そして差し出された手に握られていたのは、明らかに指輪が入っています、という感じの小さな白い箱だった。
って何これ。
呆然としつつ、差し出された箱を受けとる。
「一年後、その気が起きなかったら返してくれればいいから。
一年以内にその気がすこしでも起きたら、その中身を出してほしいかな」
「そんな気、起きますかねえ」
ぼそりと呟き、私は箱をあけた。
中には予想どおり、指輪が入っている。
淡い青の宝石がついた指輪だ。
「大きさは問題ないと思うんだけど、極端に太ったり痩せたりしなければ」
「って、なんで私の指輪の……」
と言いかけて私は隣にいるリュシーを見た。
案の定、彼女はそっぽを向いている。
犯人はリュシーか。
彼女なら私の指輪の大きさわかるもんね。
私は箱の蓋をしめ、
「わかりました」
と頷いた。
とりあえず、これ、部屋にしまっとこう。
つけることはないだろうし。たぶん。
その前に返すことになると期待するんだけれど。
「それじゃあよろしくね、エステルさん」
そして差し出された手を、私は握った。
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