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3 お兄ちゃん
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蒼と藤。
私の推し配信者で、アイドルグループのメンバー。そして私の新しいお兄ちゃんたち。
うちの近所にあったカフェのマスターがふたりのお母さんで、そこは私も小さい頃から何度も行っているお店だった。
お父さんとマスターがいつの間にか気が合って結婚って事になったのが二か月前。
結婚する前に開かれた食事会。
そこで会った蒼と藤の姿を見たとき、心臓が飛び出すんじゃないかってくらいびっくりした。
「ちざき……ふうか……です」
ぎこちなく挨拶した私に、ふたりはアイドルスマイルで言った。
「蒼です」
「藤です。俺、弟だから、妹できるのうれしいなー」
軽い口調で言う藤。
おろおろする私。
「ふたりは、アイドル目指してるのよ」
て、苦笑してお義母さんが言った。
知ってる。すごく知ってる。
でも私は緊張でなんにも言えなくて、キョロキョロしてばっかりだった。
新しいお母さんはかっこいい人で、ふたりのお母さん、ってきいてそうだろうなってなる感じだった。
明るい茶色の髪に、きりっとした茶色の瞳。蒼君も藤君も、髪の毛が茶色いのは元からなんだってその時知った。てっきり染めてるのかと思ってた。
「こんにちは、楓花ちゃん」
そう笑った新しいお母さん。
「よろしくね」
って笑う蒼君の顔は、今までみたどの笑顔よりずっと素敵でドキドキした。
それから二ヶ月以上経ったけど私、お義母さんにもずっとぎこちない。それは私がどうしたらいいのかわかんないからなんだけど。
ふたりの新しいお兄ちゃんにも、どう話しかけたらいいのかわかんないままだ。
特に蒼兄。
だって、ずっと動画を見てかっこいいなーって思っていた人が家族になったんだもん。そんなのどうしたらいいのかわかんないにきまってる。
カードゲームを取りに行った蒼兄を待つ間、お父さんが言った。
「持ち物にカードゲームあるんだなー。お父さんの時はトランプかウノくらいだったけど」
「俺は推理物のやつ持っていったよ。けっこう盛り上がったし」
て、藤兄がお父さんの後ろに立って言う。
「あぁ、最近色んなカードゲーム見るもんねぇ」
男同士だからか、お父さんと藤兄は距離感があんまりない。
お父さんもゲームとか好きだからかも。ふたりともゲームの話すごくしてるし。
いいな、私もあんなふうに自然にしゃべれたらいいのに。
ドキドキしながら蒼兄を待っていると、がちゃり、とドアがあく音がした。
「あ、兄貴」
「これ」
と、蒼兄は藤兄に箱を渡す。
「あぁ、これちょうどいいかも」
なんだろう、って思うと、藤兄が私に紫色の箱を渡してきた。
「これ、犯人カードを誰が持ってるのかあてるやつ。単純だけど楽しいよ」
「あ、これ知ってる。動画で見た」
嬉しくなって、私はそのカードゲームを受け取る。
「兄貴がボドゲ好きなんだよ。だから動画でもやってるんだけど」
って言う。
「そうなの?」
そんな話、動画でしてたっけ。全然覚えてないけど。
「学童に色々ボドゲやカードゲームあったから。それでかな?」
と、藤兄は笑う。
「私も、学童でよくボードゲームやったよ」
「だよねー」
ふたりも学童行っていたんだ。そう思うとちょっと嬉しい。
蒼兄はダイニングテーブルの方に戻って座って勉強を始める。
こんなにうるさくって集中できるのかな。私には無理だ。
「修学旅行ってどこ行くの?」
「鎌倉と、水族館。江ノ電? っていう電車にも乗るよ」
「あー、あったあった。俺も乗ったー。バスケの漫画のやつ!」
って、超笑顔で藤兄が言う。
バスケの漫画って古い漫画だっけ。
そういえば藤君は、動画で漫画やアニメのこと話してることが多い。
「学校違っても行く場所一緒なんだねー」
「うん、そうだね」
答えて私は荷物を詰める。
「藤。勉強」
って、蒼兄の低い声が聞こえてちょっとどきってしちゃう。
なんだろう、このドキドキ。
藤兄は振り返って、
「はーい」
って、抜けた声で返事をする。
「お父さん、お小遣いなんだけど」
「ちゃんとお母さんが準備してくれてて。はい、楓花。千円分は小銭にしてあるから」
言いながら、お父さんはポチ袋を私に差し出した。
受け取ると、ちょっと重い。
小銭って、十円とかも入ってるのかな。
「ありがとう、お父さん」
お義母さんにもお礼を言った方がいいかな。
今、お義母さんはここにいなくて、たぶんお風呂なはず。
「酔い止めは大丈夫?」
「うん。私、酔わないし」
それにたぶん、バスの中でアニメとか見るよね。車には酔わないと思う。
「わかった。これで荷物はオッケーかな?」
お父さんが、しおりの持ち物のページをみせてくる。
ペンで全部チェックがついてるし、たぶんだいじょうぶじゃないかな。
私はうんうん、って頷いて、
「大丈夫だよ」
って答えた。
そしてダイニングテーブルの方をちらって見る。
お土産、買って来た方がいいのかな?
私の推し配信者で、アイドルグループのメンバー。そして私の新しいお兄ちゃんたち。
うちの近所にあったカフェのマスターがふたりのお母さんで、そこは私も小さい頃から何度も行っているお店だった。
お父さんとマスターがいつの間にか気が合って結婚って事になったのが二か月前。
結婚する前に開かれた食事会。
そこで会った蒼と藤の姿を見たとき、心臓が飛び出すんじゃないかってくらいびっくりした。
「ちざき……ふうか……です」
ぎこちなく挨拶した私に、ふたりはアイドルスマイルで言った。
「蒼です」
「藤です。俺、弟だから、妹できるのうれしいなー」
軽い口調で言う藤。
おろおろする私。
「ふたりは、アイドル目指してるのよ」
て、苦笑してお義母さんが言った。
知ってる。すごく知ってる。
でも私は緊張でなんにも言えなくて、キョロキョロしてばっかりだった。
新しいお母さんはかっこいい人で、ふたりのお母さん、ってきいてそうだろうなってなる感じだった。
明るい茶色の髪に、きりっとした茶色の瞳。蒼君も藤君も、髪の毛が茶色いのは元からなんだってその時知った。てっきり染めてるのかと思ってた。
「こんにちは、楓花ちゃん」
そう笑った新しいお母さん。
「よろしくね」
って笑う蒼君の顔は、今までみたどの笑顔よりずっと素敵でドキドキした。
それから二ヶ月以上経ったけど私、お義母さんにもずっとぎこちない。それは私がどうしたらいいのかわかんないからなんだけど。
ふたりの新しいお兄ちゃんにも、どう話しかけたらいいのかわかんないままだ。
特に蒼兄。
だって、ずっと動画を見てかっこいいなーって思っていた人が家族になったんだもん。そんなのどうしたらいいのかわかんないにきまってる。
カードゲームを取りに行った蒼兄を待つ間、お父さんが言った。
「持ち物にカードゲームあるんだなー。お父さんの時はトランプかウノくらいだったけど」
「俺は推理物のやつ持っていったよ。けっこう盛り上がったし」
て、藤兄がお父さんの後ろに立って言う。
「あぁ、最近色んなカードゲーム見るもんねぇ」
男同士だからか、お父さんと藤兄は距離感があんまりない。
お父さんもゲームとか好きだからかも。ふたりともゲームの話すごくしてるし。
いいな、私もあんなふうに自然にしゃべれたらいいのに。
ドキドキしながら蒼兄を待っていると、がちゃり、とドアがあく音がした。
「あ、兄貴」
「これ」
と、蒼兄は藤兄に箱を渡す。
「あぁ、これちょうどいいかも」
なんだろう、って思うと、藤兄が私に紫色の箱を渡してきた。
「これ、犯人カードを誰が持ってるのかあてるやつ。単純だけど楽しいよ」
「あ、これ知ってる。動画で見た」
嬉しくなって、私はそのカードゲームを受け取る。
「兄貴がボドゲ好きなんだよ。だから動画でもやってるんだけど」
って言う。
「そうなの?」
そんな話、動画でしてたっけ。全然覚えてないけど。
「学童に色々ボドゲやカードゲームあったから。それでかな?」
と、藤兄は笑う。
「私も、学童でよくボードゲームやったよ」
「だよねー」
ふたりも学童行っていたんだ。そう思うとちょっと嬉しい。
蒼兄はダイニングテーブルの方に戻って座って勉強を始める。
こんなにうるさくって集中できるのかな。私には無理だ。
「修学旅行ってどこ行くの?」
「鎌倉と、水族館。江ノ電? っていう電車にも乗るよ」
「あー、あったあった。俺も乗ったー。バスケの漫画のやつ!」
って、超笑顔で藤兄が言う。
バスケの漫画って古い漫画だっけ。
そういえば藤君は、動画で漫画やアニメのこと話してることが多い。
「学校違っても行く場所一緒なんだねー」
「うん、そうだね」
答えて私は荷物を詰める。
「藤。勉強」
って、蒼兄の低い声が聞こえてちょっとどきってしちゃう。
なんだろう、このドキドキ。
藤兄は振り返って、
「はーい」
って、抜けた声で返事をする。
「お父さん、お小遣いなんだけど」
「ちゃんとお母さんが準備してくれてて。はい、楓花。千円分は小銭にしてあるから」
言いながら、お父さんはポチ袋を私に差し出した。
受け取ると、ちょっと重い。
小銭って、十円とかも入ってるのかな。
「ありがとう、お父さん」
お義母さんにもお礼を言った方がいいかな。
今、お義母さんはここにいなくて、たぶんお風呂なはず。
「酔い止めは大丈夫?」
「うん。私、酔わないし」
それにたぶん、バスの中でアニメとか見るよね。車には酔わないと思う。
「わかった。これで荷物はオッケーかな?」
お父さんが、しおりの持ち物のページをみせてくる。
ペンで全部チェックがついてるし、たぶんだいじょうぶじゃないかな。
私はうんうん、って頷いて、
「大丈夫だよ」
って答えた。
そしてダイニングテーブルの方をちらって見る。
お土産、買って来た方がいいのかな?
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