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極上の蜜~執事アンディの執着~
第39章 主の代理人
【第39章:主の代理人】
カタカタ…車輪の音が黒光りする大理石床に冷たく響く。
電子ロックの解除音とともに、執事アンディがカートを押して入室した。
きちんと整えられた執事服が、広い肩幅と締まった筋肉のラインをすっきりと浮かび上がらせる。
その立ち姿は執事というより、静かなボディーガードのようだった。
整った横顔を、細縁の眼鏡がきっちりと縁取っていた。
細い銀縁の奥、青みがかった切れ長の黒い瞳が、
薄いネグリジェ越しの胸元から脚先までを、舐めるようにゆっくりとなぞる。
伏し目がちに俯いている僕は、視線から逃げたくてシーツを握りしめた。
薄いネグリジェと下着だけの姿でベッドに座ったまま、僕は小さく尋ねた。
「ねえ、アンディさん。みかど様が帰るまでの間、服…着てもいい?」
眼鏡越しの視線が細まり、薄ピンクの唇が微かに弧を描く。
指先がカートのラテックス手袋箱に触れながら、穏やかだが底に熱を潜めた声で答えた。
「みかど様が蜜様の美しい肌が布で擦れて痛むのを嫌がられます。このままで…みかど様のご命令です」
『みかど様の命令か…でも恥ずかしい…ずっとこの姿なんて…』
頰が熱くなり、漆黒の前髪が湿った額に張り付く。
「…そうなんだ…」
『いままでは…そばにみかど様がいたから…アンディさんとふたりきりだと…』
それまでの環境とは違い、一気に羞恥心が高まっていた。
でも、それを言葉に出して伝えることはできなかった。
「では、みかど様のご命令の身体測定を開始します。壁カメラとタブレットにて送信しております」
手袋をパチンと装着した。
カートの上には手袋、消毒液、タオル、小型タブレットが整然と並び、既に画面が点灯して僕の姿を捉えている。
僕の体調管理として、毎日行われるケアの一環だった。
全身の計測から始まり、肌のきめ細かさ、粘膜の淡い紅潮まで――その対象は細大漏らさずチェックされる。
消毒液のツンとした匂いが鼻腔を刺し、手袋のビニール音が耳に響く中、冷たいメジャーが太腿内側の柔肉に触れる。
『…モルモットみたいだ』
メジャーの金属が内腿を滑る感触に微かな震えが走り、切れ長の瞳がその震えを一瞬も逃さず追っていた。
指先が、血管の薄い青みを、必要もないのに辿っていく。
『このタブレットの向こうで、みかど様が見てるんだよね…』
「毎日…必要なんですか?なんだか…」
拒否したいわけではない。
ただ、『みかど様に会えないのに、こんなに整えても…』と感じていた。
ネグリジェの裾が捲れ、下着の後ろ側のTバックの縁が尻肉に食い込む感触が、羞恥を煽っていく。
無意識に唇をぐっと噛みしめると、汗の微かな塩味を感じた。
『なのに、いちばん近いところで舐めるみたいに見てくるのは、アンディさんの視線で…胸がざわざわする…』
『耐えないと…これは、みかど様のため…』
『僕だけが…緊張してるんだ…』
「…あれを」
アンディさんが静かに指差した壁に目を向けると、小さな赤い点灯が見えた。
気がつくと、それは部屋の四隅で、静かに瞬いている。
監視カメラ――無数の赤い瞳が、僕を見張っていた。タブレット画面にも同じ赤点が同期点滅している。
「いつでも、みかど様はご覧になっております」
声は変わらず穏やかだ。だがその言葉に、背筋に冷たい電流が走った。
まるで目に見えない檻がそこに存在しているかのように感じた。
僕の漆黒の髪が首筋に張り付き、透き通った肌が無防備に晒される。
心臓のどくん、どくんという鼓動が耳元で鳴り響く。
『みかど様が…いつも見ててくれる…僕のことを…』
そう思うと嬉しく感じてしまう。
ここにはいないみかど様が、いつも傍にいてくれるような錯覚を、僕は起こしていた。
「みかど様は蜜様のすべてを愛でてらっしゃいます。この美しい白い肌も、敏感な反応も…すべて」
アンディの指先が鎖骨の窪みをなぞり、汗の粒を優しく拭い取っていく。
その動きは業務的だが、瞳の奥にねっとりとした光が見えた。
薄い手袋越しの指の腹が肌に密着しながら、鎖骨から首筋へとゆっくり滑っていく。
漆黒の髪を、微かに震える指で無駄に梳きながら。
穏やかな声に僅かな掠れが混じった。
「…ですから、私がみかど様の代理として、完璧に管理いたします。ご安心を」
安心させようと微笑むその笑顔さえ、業務の一環なのか…とも思ってしまう。
だが眼鏡調整の隙に、僅かに舌で唇を湿らせる仕草が、僕の心を微かに揺らした。
カタカタ…車輪の音が黒光りする大理石床に冷たく響く。
電子ロックの解除音とともに、執事アンディがカートを押して入室した。
きちんと整えられた執事服が、広い肩幅と締まった筋肉のラインをすっきりと浮かび上がらせる。
その立ち姿は執事というより、静かなボディーガードのようだった。
整った横顔を、細縁の眼鏡がきっちりと縁取っていた。
細い銀縁の奥、青みがかった切れ長の黒い瞳が、
薄いネグリジェ越しの胸元から脚先までを、舐めるようにゆっくりとなぞる。
伏し目がちに俯いている僕は、視線から逃げたくてシーツを握りしめた。
薄いネグリジェと下着だけの姿でベッドに座ったまま、僕は小さく尋ねた。
「ねえ、アンディさん。みかど様が帰るまでの間、服…着てもいい?」
眼鏡越しの視線が細まり、薄ピンクの唇が微かに弧を描く。
指先がカートのラテックス手袋箱に触れながら、穏やかだが底に熱を潜めた声で答えた。
「みかど様が蜜様の美しい肌が布で擦れて痛むのを嫌がられます。このままで…みかど様のご命令です」
『みかど様の命令か…でも恥ずかしい…ずっとこの姿なんて…』
頰が熱くなり、漆黒の前髪が湿った額に張り付く。
「…そうなんだ…」
『いままでは…そばにみかど様がいたから…アンディさんとふたりきりだと…』
それまでの環境とは違い、一気に羞恥心が高まっていた。
でも、それを言葉に出して伝えることはできなかった。
「では、みかど様のご命令の身体測定を開始します。壁カメラとタブレットにて送信しております」
手袋をパチンと装着した。
カートの上には手袋、消毒液、タオル、小型タブレットが整然と並び、既に画面が点灯して僕の姿を捉えている。
僕の体調管理として、毎日行われるケアの一環だった。
全身の計測から始まり、肌のきめ細かさ、粘膜の淡い紅潮まで――その対象は細大漏らさずチェックされる。
消毒液のツンとした匂いが鼻腔を刺し、手袋のビニール音が耳に響く中、冷たいメジャーが太腿内側の柔肉に触れる。
『…モルモットみたいだ』
メジャーの金属が内腿を滑る感触に微かな震えが走り、切れ長の瞳がその震えを一瞬も逃さず追っていた。
指先が、血管の薄い青みを、必要もないのに辿っていく。
『このタブレットの向こうで、みかど様が見てるんだよね…』
「毎日…必要なんですか?なんだか…」
拒否したいわけではない。
ただ、『みかど様に会えないのに、こんなに整えても…』と感じていた。
ネグリジェの裾が捲れ、下着の後ろ側のTバックの縁が尻肉に食い込む感触が、羞恥を煽っていく。
無意識に唇をぐっと噛みしめると、汗の微かな塩味を感じた。
『なのに、いちばん近いところで舐めるみたいに見てくるのは、アンディさんの視線で…胸がざわざわする…』
『耐えないと…これは、みかど様のため…』
『僕だけが…緊張してるんだ…』
「…あれを」
アンディさんが静かに指差した壁に目を向けると、小さな赤い点灯が見えた。
気がつくと、それは部屋の四隅で、静かに瞬いている。
監視カメラ――無数の赤い瞳が、僕を見張っていた。タブレット画面にも同じ赤点が同期点滅している。
「いつでも、みかど様はご覧になっております」
声は変わらず穏やかだ。だがその言葉に、背筋に冷たい電流が走った。
まるで目に見えない檻がそこに存在しているかのように感じた。
僕の漆黒の髪が首筋に張り付き、透き通った肌が無防備に晒される。
心臓のどくん、どくんという鼓動が耳元で鳴り響く。
『みかど様が…いつも見ててくれる…僕のことを…』
そう思うと嬉しく感じてしまう。
ここにはいないみかど様が、いつも傍にいてくれるような錯覚を、僕は起こしていた。
「みかど様は蜜様のすべてを愛でてらっしゃいます。この美しい白い肌も、敏感な反応も…すべて」
アンディの指先が鎖骨の窪みをなぞり、汗の粒を優しく拭い取っていく。
その動きは業務的だが、瞳の奥にねっとりとした光が見えた。
薄い手袋越しの指の腹が肌に密着しながら、鎖骨から首筋へとゆっくり滑っていく。
漆黒の髪を、微かに震える指で無駄に梳きながら。
穏やかな声に僅かな掠れが混じった。
「…ですから、私がみかど様の代理として、完璧に管理いたします。ご安心を」
安心させようと微笑むその笑顔さえ、業務の一環なのか…とも思ってしまう。
だが眼鏡調整の隙に、僅かに舌で唇を湿らせる仕草が、僕の心を微かに揺らした。
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