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4章
疑心と憤怒
しおりを挟む店の中に入るとマイに案内されある一角で止まる。
「こっちは食べ物で向こうには飲み物もあります、
見た限りやつらは居ないようですが上の階に居るかもしれないので極力音は立てないでください。」
すぐに作業に取りかかるマイに唖然としたが二人も棚を調べる…、
かなり暗くてよくわからないが食べ物らしい。
「しかし広いな…、
ちょっと巡回してくる。」
剣を手に店内を見回りに行くライルを見送るとマイがヴィーリオに疑問をぶつける。
「ヴィーリオさんは王子なんですか?」
「そんなところだ、なりたいとか言うなよ?
国王なんて椅子に座って書類に埋もれて問題が起これば頭を痛める職業だ。」
頭に浮かぶのは山のような城の修理の見積りと止むことのない訪問者ども…。
「大変ですね。」
ヴィーリオがため息をついて手近にある缶に手を伸ばした瞬間叫び声が響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二人から離れたライルはさっきマイにされた質問を頭の中で反芻していた…。
「【旅が終われば】か…。」
旅が終われば国に帰らなくてはならない、
それはヴィーリオのように帰るか帰らないかの選択肢などなく強制だ…。
「…旅なんて終わらなければ良いのにな。」
勇者として願ってはならないことだが旅をしているうちに芽生えた自国への疑心がそう思わせるのだ。
「【魔族は邪悪、我らは潔癖】か…。」
旅をするなかで魔族は魔族で意思があり全てが悪ではないと知り更に自国の今までの行いを思い出した今ではこの言葉がもっとも疑わしい…。
階段に差し掛かりふと地下で何かの気配が蠢くのを感じてそちらを見るが見なければよかった、
暗闇から虚ろな目をした人々がこちらに気づき一斉に手を伸ばしてきたのだ。
これでは声を出すなという言いつけも意味を成さない、異常を知らせようにもかなり距離がある…。
駆けようとするよりも早く群れの一人がライルの腕をつかんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ライル!」
ヴィーリオとマイが声の元にたどり着くとライルが群れに捕まりかけていた、
「ヴィーリオ!
この下にまだ居るぞ!」
「バカか!?
そんなもの腕を叩っ切ってしまえ!!」
「だが人間だぞ!?」
ライルにはそう見えているらしい、
苛立ったヴィーリオが群れに雷を放つとくらった数人は倒れ後は煙をたてて溶けた…。
「これは…?」
「魔物が混じっていた、
ザコだが人に化けて悪さをするタチの悪いやつらだ。」
ライルがマイをつれて外に出るのを見送るとヴィーリオが暗闇の奥を睨む、
すると気配が慌てて引っ込んだがヴィーリオの足元にいた者は逃げ遅れたらしく踏んづけられた。
「次は無いぞ。」
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