没落貴族令嬢ですが、王子様が私を優しく癒してくれます

冬後ハル(とうご はる)

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プロローグ

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「ソフィア、私たちの為にこの婚約を受け入れなくてもいいのよ」

灯りの少ない食卓で、ソフィアの母親が言った。

この春に18歳となったソフィアは、スチール階級の貴族であるモブ家の次男から婚約の申し出を受けていた。

ソフィアたちの国では、貴族は全部で5つの階級に分かれており、上から、『ゴールド』、『シルバー』、『ブロンズ』、『スチール』、そして、『ノンストーン』と呼ばれていた。

但し、『ノンストーン』は衰退した貴族たちが大半を占めており、平民と変わらない生活をしている者も多くいたため、他の貴族階級からは平民として扱われていたのだ。

ソフィアの家は、『ノンストーン』に属しており、いわゆる没落貴族である。

そして、貴族の世界において、上位階級者の言葉に逆らうことは難しく、『ノンストーン』は、特にその傾向が強かった。

「何を言っているんだ。相手は、スチールだぞ。ノンストーンの私たちが、この婚約を拒否することはできないだろう」

ソフィアの父親が、悔しそうに言った。

「お父さん、お母さん、心配しないで。私、大丈夫だから」

ソフィアは、意識して、明るく答えた。

それからは、誰一人口を開くことはなく、コツコツと、木の食器に木の匙が当たる音だけが部屋に響いていた。





「けっ、何で俺がノンストーンの女と婚約しなきゃならないんだ」

ランボ・モブは、自分の部屋のベッドに寝転がっていた。

ランボは、今日、ソフィアを婚約者として迎えるのである。

ランボは、短期で暴力的、そして自己中心的な性格で知られており、スチール階級の貴族からは婚約者を見つけることが出来なかったのだ。

そこで、下位階級のソフィアの家、スプリング家に婚約の申し出があったのである。

ランボは、何時まで待っても両家の挨拶の場に現れなかった。

「すまない、ランボは体調が優れぬ」

ランボの父親が、ぶっきらぼうに言う。

そして、机の上に金貨1枚を置いた。

「婚約成約金だ。そして、約束通り婚姻後は、毎月鉄銭20枚を支援金として贈る」

「お心遣い感謝します」

ソフィアの父親は、深々と頭を下げて金貨を胸元に入れた。

ランボの父親が提示した鉄銭20枚とは、使用人1人を1ヶ月間維持するのに最低限必要とされる金額であった。

つまり、モブ家は、ソフィアを嫁としてではなく、使用人として見ているということの証であった。

ソフィアの父親は、大事な娘を使用人として扱われたことに怒りを覚えたが、苦しい台所事情もあり、支援金の条件を受け入れた。

「では、ここに我がモブ家次男ランボと、スプリング家長女ソフィアの婚約の成立を宣言する。婚姻は、来年の春とする」

ソフィアは、未だ目の前に姿を見せないランボの婚約者となった。

そして、来年の春には、彼の妻となることが決定したのだ。
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