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3―1 王国建国記念日での出来事
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ランボと市場に出かけた次の日の朝、ソフィアは自分の行動をひどく後悔していた。
昨夜、市場に置き去りにされたソフィアは、王子の臣下である騎士カインドに自宅まで送ってもらったのだ。
そして、あろうことか、自宅に送ってもらったお礼として、手作りの手拭きを、王子に渡してもらうようにカインドに頼んだのである。
昨夜は、ソフィアの両親も慌てふためいており、2人ともソフィアの行動を咎めはしなかった。
一夜明けて冷静になると、ソフィアは、自分がとんでもない事をしたということに気がついた。
王子の臣下である騎士が、王子の馬車を使ってソフィアを家まで送ったのである。
しかも、ソフィアの家は、貴族階級最底辺の『ノンストーン』なのである。
ソフィアを乗せた馬車には、王子の紋章が入っていた。
ソフィアは、昨夜は夜の闇が深く、誰も王子の馬車に気づかなかったことに安堵していた。
もし、誰かに気がつかれていれば、今頃は、多くの人がソフィアの家に押しかけていただろう。
もちろん、王子の心遣い、カインドの紳士的な対応に、ソフィアは心から感謝をしている。
ソフィアは、感謝の思いから、王子に手拭きを贈ったのだ。
ソフィアの父親は、ソフィアの婚約者であるランボの行動に、激しく怒っていた。
ソフィアは、この先も、昨日の様な仕打ちを受けるかと思うと、正直泣きたい気分であった。
その時、ソフィアの家の扉を激しく叩く音がした。
ソフィアたちは、驚き互いの顔を見合わせた。
ソフィアの父親が、恐る恐る扉を開けると、ランボの実家、モブ家からの使いであった。
モブ家の使いは、ランボの命を受け、3日後の王国建国記念日に開催される舞踏会に、ソフィアも参加するように伝えに来たのである。
そして、モブ家の使いは、昨日ランボがソフィアに買い与えた髪飾りを付けて来ることを忘れないようにと、ソフィアに何度も念を押してくる。
ソフィアは、モブ家の使いに、舞踏会の件と髪飾りの件について了承したことを伝えた。
モブ家の使いは、ソフィアの返事を聞くと、さっさとソフィアの家を後にした。
モブ家の使いは、ランボがどの様な髪飾りをソフィアに与えたか知らないのであろう。
ソフィアは、市場でランボに投げ渡されたおもちゃの髪飾りを見つめてため息をついた。
ソフィアの両親は、ランボとの婚約を断われなかったことを、心から悔やんでいた。
王国建国記念日の日、至るところで催しが開かれていた。
今日、ソフィアが参加する舞踏会も、王国建国記念日を祝う催しのひとつであった。
ソフィアが舞踏会の会場に行くと、既に多くの男女が集まっており、楽団の演奏に合わせて踊ったり、談笑を交わしたりしていた。
ソフィアは、会場内に入り、ランボの姿を探した。
ランボは、同じ『スチール』階級の者たちと話をしていた。
ランボの隣で笑っていた男性が、ランボに何やら囁くと、ランボはソフィアの方を見て顔をしかめた。
ランボは、ゆっくりとソフィアに近づくと、フロアの隅を指差し、舞踏会が終わるまで隅でじっとしているように命じた。
ソフィアは、ランボの仕打ちに、涙をこぼしそうになる。
「何をしてる? 早く行けよ、俺に逆らうのか」
ランボは、ソフィアを睨み、恫喝した。
ソフィアは、うつむきながらフロアの隅へと歩いて行った。
「あれが、ランボの相手でしょ、ほら、確か『ノンストーン』の……」
「ランボなんかと可哀想にねぇ、私なら絶対嫌だわ……」
「『ノンストーン』でしょ、お金ね、きっと……」
ソフィアの周りで、ヒソヒソと言い合う声がする。
ソフィアは、聞こえない振りをしていた。
ランボは、元いた場所に戻り、笑っている。
会場内にいた者は、ランボのことを気にして、誰もソフィアに話しかけて来なかった。
同じ、『ノンストーン』階級の者も何人かいたが、ランボと関わり合うことを嫌い、ソフィアに近づいては来ない。
ソフィアは、談笑と楽団の演奏する音楽の中で、ひとり俯いていて立っていた。
その時、舞踏会場の扉が開いて、ひとりの若者が入って来た。
その姿に気がついた者がひれ伏すのを、その若者は手で制する。
場内にざわつきが起こり、楽団は音楽を奏でるのを止めていた。
そんな中、うつむいたままのソフィアは、涙を必死にこらえていた。
「今日も、ひとりなのか?」
入り口からまっすぐソフィアに向かって歩いて来た若者が、優しくソフィアに問いかけた。
ソフィアは、聞き覚えのある声に頭をあげる。
目の前に、この国の王子、レオン・ワイン・ウイングが立っている。
「私も、ひとりだ。よかったら、私といっしょに踊ってくれないか?」
周りにいた者たちは、ソフィアの返事を固唾を飲んで待っている。
「いえ、私の婚約者なら彼処にいます」
王子は、ソフィアの指差した方を見た。
ランボは、なぜ自分の婚約者が王子と話しをしているのか分からず、戸惑っている様子であった。
「そうか、あの男なのだな、そなたを悲しませているのは」
ソフィアは、何も答えずに俯いた。
「ソフィア、結婚を前提にお付き合いをさせて欲しい」
突然、この国の王子、レオン・ワイン・ウイングが片膝をついて、ソフィアに告白をした。
「えっ」
ソフィアは、驚きの声をあげて王子の顔を見る。
王子は、まっすぐソフィアの瞳を見て、もう一度言う。
「ソフィア、結婚を前提にお付き合いをさせて欲しい」
昨夜、市場に置き去りにされたソフィアは、王子の臣下である騎士カインドに自宅まで送ってもらったのだ。
そして、あろうことか、自宅に送ってもらったお礼として、手作りの手拭きを、王子に渡してもらうようにカインドに頼んだのである。
昨夜は、ソフィアの両親も慌てふためいており、2人ともソフィアの行動を咎めはしなかった。
一夜明けて冷静になると、ソフィアは、自分がとんでもない事をしたということに気がついた。
王子の臣下である騎士が、王子の馬車を使ってソフィアを家まで送ったのである。
しかも、ソフィアの家は、貴族階級最底辺の『ノンストーン』なのである。
ソフィアを乗せた馬車には、王子の紋章が入っていた。
ソフィアは、昨夜は夜の闇が深く、誰も王子の馬車に気づかなかったことに安堵していた。
もし、誰かに気がつかれていれば、今頃は、多くの人がソフィアの家に押しかけていただろう。
もちろん、王子の心遣い、カインドの紳士的な対応に、ソフィアは心から感謝をしている。
ソフィアは、感謝の思いから、王子に手拭きを贈ったのだ。
ソフィアの父親は、ソフィアの婚約者であるランボの行動に、激しく怒っていた。
ソフィアは、この先も、昨日の様な仕打ちを受けるかと思うと、正直泣きたい気分であった。
その時、ソフィアの家の扉を激しく叩く音がした。
ソフィアたちは、驚き互いの顔を見合わせた。
ソフィアの父親が、恐る恐る扉を開けると、ランボの実家、モブ家からの使いであった。
モブ家の使いは、ランボの命を受け、3日後の王国建国記念日に開催される舞踏会に、ソフィアも参加するように伝えに来たのである。
そして、モブ家の使いは、昨日ランボがソフィアに買い与えた髪飾りを付けて来ることを忘れないようにと、ソフィアに何度も念を押してくる。
ソフィアは、モブ家の使いに、舞踏会の件と髪飾りの件について了承したことを伝えた。
モブ家の使いは、ソフィアの返事を聞くと、さっさとソフィアの家を後にした。
モブ家の使いは、ランボがどの様な髪飾りをソフィアに与えたか知らないのであろう。
ソフィアは、市場でランボに投げ渡されたおもちゃの髪飾りを見つめてため息をついた。
ソフィアの両親は、ランボとの婚約を断われなかったことを、心から悔やんでいた。
王国建国記念日の日、至るところで催しが開かれていた。
今日、ソフィアが参加する舞踏会も、王国建国記念日を祝う催しのひとつであった。
ソフィアが舞踏会の会場に行くと、既に多くの男女が集まっており、楽団の演奏に合わせて踊ったり、談笑を交わしたりしていた。
ソフィアは、会場内に入り、ランボの姿を探した。
ランボは、同じ『スチール』階級の者たちと話をしていた。
ランボの隣で笑っていた男性が、ランボに何やら囁くと、ランボはソフィアの方を見て顔をしかめた。
ランボは、ゆっくりとソフィアに近づくと、フロアの隅を指差し、舞踏会が終わるまで隅でじっとしているように命じた。
ソフィアは、ランボの仕打ちに、涙をこぼしそうになる。
「何をしてる? 早く行けよ、俺に逆らうのか」
ランボは、ソフィアを睨み、恫喝した。
ソフィアは、うつむきながらフロアの隅へと歩いて行った。
「あれが、ランボの相手でしょ、ほら、確か『ノンストーン』の……」
「ランボなんかと可哀想にねぇ、私なら絶対嫌だわ……」
「『ノンストーン』でしょ、お金ね、きっと……」
ソフィアの周りで、ヒソヒソと言い合う声がする。
ソフィアは、聞こえない振りをしていた。
ランボは、元いた場所に戻り、笑っている。
会場内にいた者は、ランボのことを気にして、誰もソフィアに話しかけて来なかった。
同じ、『ノンストーン』階級の者も何人かいたが、ランボと関わり合うことを嫌い、ソフィアに近づいては来ない。
ソフィアは、談笑と楽団の演奏する音楽の中で、ひとり俯いていて立っていた。
その時、舞踏会場の扉が開いて、ひとりの若者が入って来た。
その姿に気がついた者がひれ伏すのを、その若者は手で制する。
場内にざわつきが起こり、楽団は音楽を奏でるのを止めていた。
そんな中、うつむいたままのソフィアは、涙を必死にこらえていた。
「今日も、ひとりなのか?」
入り口からまっすぐソフィアに向かって歩いて来た若者が、優しくソフィアに問いかけた。
ソフィアは、聞き覚えのある声に頭をあげる。
目の前に、この国の王子、レオン・ワイン・ウイングが立っている。
「私も、ひとりだ。よかったら、私といっしょに踊ってくれないか?」
周りにいた者たちは、ソフィアの返事を固唾を飲んで待っている。
「いえ、私の婚約者なら彼処にいます」
王子は、ソフィアの指差した方を見た。
ランボは、なぜ自分の婚約者が王子と話しをしているのか分からず、戸惑っている様子であった。
「そうか、あの男なのだな、そなたを悲しませているのは」
ソフィアは、何も答えずに俯いた。
「ソフィア、結婚を前提にお付き合いをさせて欲しい」
突然、この国の王子、レオン・ワイン・ウイングが片膝をついて、ソフィアに告白をした。
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ソフィアは、驚きの声をあげて王子の顔を見る。
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