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プロローグ
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「冬花(とうか)、これを着けて祝言に出てくれ」
少年は、樫の木を削り作ったかんざしを、目の前の少女に渡した。
冬花と呼ばれた少女は、耳まで真っ赤にしている。
「ありがとう、優季(ゆうき)。必ず着ける。ずっと、大事にする」
ここは、大陸北部の寒村である。
冬は厳しいが、山の恵みにより、人々の暮らしはそこまで厳しいものではなかった。
土地の者は、互いに助け合い、集落全体がひとつの家族みたいなものだった。
冬花は、この村に母親と2人で暮らしていた。
村の者たちは、山で取れた肉や山菜をひとり親の冬花の母親にも分け与えていた。
優季が、冬花に告白したのは、もう3年も前の話である。
この村では、女の子は16歳になるまで結婚はできず、家の手伝いをする決まりになっている。
冬花は、あと1ヶ月で16歳の誕生日を迎えるため、結婚に向けての準備が慌ただしく進められていた。
その頃、都では流行り病が猛威を振るっていた。
朝廷内でも、多くの者が病に倒れ、現王唯一の後継者である太子も病に倒れていた。
国王は、太子の病に心を痛め、国王自身も心労から床に伏せってしまった。
王朝存続の危機に際して、先王からの重臣である丞相真意(しんい)が王に進言する。
「恐れながら真意、我が王に申し上げます。王が太子であられた頃、北部の寒村で難を避けられたことがあると存じ上げます。その時、その家に年頃の娘がいたかと……」
「真意、まさか? その時の娘が、余の子を孕んだというのか?」
「はい、左様でございます」
「い、今、その者たちはどうしておる?」
「今も、その寒村に暮らしておられます」
王は、寝床から起き上がり、丞相真意の前に歩み寄っている。
「で、私の子は、男か?それとも女か?」
「姫様でございます。私、真意が今日までこの事を我が王にお伝えしなかったのは、姫様であったことと、太子様の姉となることを踏まえて、要らぬ争いの種を朝廷内に持ち込まぬ方が良いと判断したからです」
「そうであるな、妃の気性から考えれば、その判断は正しい」
王は、身震いをした。
「ですが、我が王、今太子様は病に伏せっておられです。万が一のことがあれば、お世継ぎがいなくなります。一旦姫様をお迎えになられてもよろしいかと」
「ああ、少し考えさせてくれ。妃のことを思うとな……」
「分かりました、但し、時間はありません。姫様の住む村では、16歳になれば結婚が可能になりますので。その土地の者と祝言を挙げられては面倒なことに」
◆
いよいよ、明日が冬花の16歳の誕生日である。
優季は、祝言の段取りを確認している。
優季は、既に冬花の母親を「義母さん」と呼んでいた。
「明日は、まず義母さんに挨拶して、…………」
優季は、何度も何度も繰り返し練習していた。
次の日、遂に祝言の日を迎えた。
優季は、冬花を迎えに家を出た。
冬花の家の前に、たくさんの兵士がいることに驚いた優季は、兵士たちに質問した。
「この家には、国王の娘、姫様がお住まいである。今、我々が、王城にお連れするところだ。邪魔だから、あっちへ行け」
「違う、ここは、俺の妻の家だ。お姫様なんかいない」
戸が開いて、中から冬花の母親が出てきた。
「義母さん、義母さん」
冬花の母親は、優季から視線を反らした。
そして、冬花が家から出てきた。
「冬花、嘘だよな、行くな、冬花っ」
優季は、兵士たちに羽交い締めにされている。
「冬花、逃げたくなったら、俺のかんざしを付けろ。必ず俺がお前を連れ去ってやる」
優季の声が、早朝の村に響いていた。
少年は、樫の木を削り作ったかんざしを、目の前の少女に渡した。
冬花と呼ばれた少女は、耳まで真っ赤にしている。
「ありがとう、優季(ゆうき)。必ず着ける。ずっと、大事にする」
ここは、大陸北部の寒村である。
冬は厳しいが、山の恵みにより、人々の暮らしはそこまで厳しいものではなかった。
土地の者は、互いに助け合い、集落全体がひとつの家族みたいなものだった。
冬花は、この村に母親と2人で暮らしていた。
村の者たちは、山で取れた肉や山菜をひとり親の冬花の母親にも分け与えていた。
優季が、冬花に告白したのは、もう3年も前の話である。
この村では、女の子は16歳になるまで結婚はできず、家の手伝いをする決まりになっている。
冬花は、あと1ヶ月で16歳の誕生日を迎えるため、結婚に向けての準備が慌ただしく進められていた。
その頃、都では流行り病が猛威を振るっていた。
朝廷内でも、多くの者が病に倒れ、現王唯一の後継者である太子も病に倒れていた。
国王は、太子の病に心を痛め、国王自身も心労から床に伏せってしまった。
王朝存続の危機に際して、先王からの重臣である丞相真意(しんい)が王に進言する。
「恐れながら真意、我が王に申し上げます。王が太子であられた頃、北部の寒村で難を避けられたことがあると存じ上げます。その時、その家に年頃の娘がいたかと……」
「真意、まさか? その時の娘が、余の子を孕んだというのか?」
「はい、左様でございます」
「い、今、その者たちはどうしておる?」
「今も、その寒村に暮らしておられます」
王は、寝床から起き上がり、丞相真意の前に歩み寄っている。
「で、私の子は、男か?それとも女か?」
「姫様でございます。私、真意が今日までこの事を我が王にお伝えしなかったのは、姫様であったことと、太子様の姉となることを踏まえて、要らぬ争いの種を朝廷内に持ち込まぬ方が良いと判断したからです」
「そうであるな、妃の気性から考えれば、その判断は正しい」
王は、身震いをした。
「ですが、我が王、今太子様は病に伏せっておられです。万が一のことがあれば、お世継ぎがいなくなります。一旦姫様をお迎えになられてもよろしいかと」
「ああ、少し考えさせてくれ。妃のことを思うとな……」
「分かりました、但し、時間はありません。姫様の住む村では、16歳になれば結婚が可能になりますので。その土地の者と祝言を挙げられては面倒なことに」
◆
いよいよ、明日が冬花の16歳の誕生日である。
優季は、祝言の段取りを確認している。
優季は、既に冬花の母親を「義母さん」と呼んでいた。
「明日は、まず義母さんに挨拶して、…………」
優季は、何度も何度も繰り返し練習していた。
次の日、遂に祝言の日を迎えた。
優季は、冬花を迎えに家を出た。
冬花の家の前に、たくさんの兵士がいることに驚いた優季は、兵士たちに質問した。
「この家には、国王の娘、姫様がお住まいである。今、我々が、王城にお連れするところだ。邪魔だから、あっちへ行け」
「違う、ここは、俺の妻の家だ。お姫様なんかいない」
戸が開いて、中から冬花の母親が出てきた。
「義母さん、義母さん」
冬花の母親は、優季から視線を反らした。
そして、冬花が家から出てきた。
「冬花、嘘だよな、行くな、冬花っ」
優季は、兵士たちに羽交い締めにされている。
「冬花、逃げたくなったら、俺のかんざしを付けろ。必ず俺がお前を連れ去ってやる」
優季の声が、早朝の村に響いていた。
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