女王の想い人~16年間寒村で育った私が、王の娘だったなんて

冬後ハル(とうご はる)

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第1編 王女編

1 王女冬花

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「さあ、顔をあげなさい」

冬花(とうか)は、父でありこの国の王、政良(せいりょう)の前で平伏していた。

冬花の母親も、冬花よりかなり離れた位置で平伏している。

「どうした、早く我が娘の顔を父に見せてくれ」

冬花は、恐る恐る顔をあげた。

政良は、冬花の顔を覗き込む。

政良は、涼しげな眼差しが印象的な、かなりの美丈夫であった。

冬花は、長年の農作業により、肌は日に焼け、黒髪も痛みが激しかった。

手は荒れ、筋肉がついた体は、とても1国の王女とは思えない体つきである。

だが、政良は、冬花を抱きしめ「我が娘」と呼び涙を流した。

冬花は、涼しげな眼差しが政良に瓜二つであり、政良への謁見の前に官女が行った簡易的な化粧だけでも十分過ぎるほどの美しさを見せていたのだ。

「真意(しんい)、よくぞ我が娘を探し出した。お前のような忠臣を持ち、余は幸せだ。褒美を取らせよう」

丞相真意は、王の言葉に深々と頭を下げる。

「恐れながら、我が王。私に褒美は不要でございます。私は、先王から姫様のことをお聞きしていただけであり、私の功は何ひとつありません。それに、今は太子様のことをお考えになるべきです」

政良は、真意の言葉に自身が浮かれていたことを知り、冬花を危うい立場へ追い込んでいたことに気づかされた。

「本来であれば、お前も政の名を与えるべきであるが、慣れ親しんだ名前がよいだろう。そのまま、冬花と名乗るがよい」

この発言で、暗に政良の後継者は、太子の政望(せいぼう)だけであると宣言されたのだ。

つまり、冬花は、王女であることは認められたが、万が一の時の保険として、血筋を維持するためだけの存在とされたのだ。

冬花が祝言をあげるはずだった日から、10日後のことである。

国王政良との謁見後、冬花とその母親は、王城の外れにある離れと、官女2名を与えられた。

官女の内、1人は見習いであり、年も冬花と同い年であった。

急な環境の変化を心配した、政良の親心である。

見習い官女の名前は、春花(しゅんか)といい、同い年の冬花と春花は、すぐに打ち解けた。

この時代、女の子に『花』と名付けることが多く、2人が同じ『花』の名前であることは珍しいことではなかった。

「冬花、本当によかったの、母さんのために無理してるんじゃないのかい?」

冬花の母親が、荷物を整理している冬花に問いかけてきた。

「何言ってるの、お母さん。2人で決めたじゃない。優季(ゆうき)だって、わかってくれてるよね……」

冬花は、樫の木で作られたかんざしを布に大事に包んでいる。

「冬花様、寒村夫人様、お食事の準備が出来ました」

部屋の向こうから、春花が呼び掛けてくる。

冬花の母親は、王城内では寒村夫人と 呼ばれるようになっていた。

「さあ、お母さん、ご飯にしよう」
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