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第一章 ドク博士、何か発明す
第24話 『登攀』
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「お、おう? それはじゃな?」
助手くんの、素の質問返しにドク博士は少しだけ困惑の表情を見せましたが、直ぐもとの顔に戻ると、こう答えました。
「もちろん、しがみつくんじゃよ。こういうふうにな」
「ヤッパリ……」
助手くんは、両膝をつき、地面に身体を大の字に広げ、はいつくばるような仕草を交えながら説明するドク博士を、何処か、遠い目で見ながらぼそりとつぶやきます。
ですが、ドク博士はそんな遠い目も気にする事なく、片膝をつきながら立ち上がると、ズボンの裾辺りをぱんぱんとほろいながらこう言いました。
「じゃが、あれじゃのう。その質問をするという事は、ようやくタイムマシンに乗ってくれる気になってくれたという事かのう?」
「イエ、全然」
「何でじゃあ~!!」
助手くんの即答に、ドク博士は両手を上げて『ぷんぷん』してしまいます。しかし助手くんは、立て続けにこんな事を聞いてきました。
「ソレニ、博士。搭乗部分が頂上ということは、この『ツルツル』の表面をヨジ登る、とイウ事デスよね?」
「うむ、そうじゃが?」
ドク博士は、何を当たり前な事を。といった感じで答えます。が、次の助手くん言葉にちょっとだけ立腹してしまいます。
「博士は、登レルのデスカ?」
「なんじゃ、助手くん。儂がこのタイムマシンを登る事が出来ず、右往左往するのでは、と思っとるのか?」
「ソレは……その……」
助手くんは、口元に右手をあて僅かばかり口ごもりますが、右手を下ろし、姿勢を正すとはっきりとこう言いました。
「ソウデス」
「なんじゃとお!?」
断言されたドク博士は、思わず両手を上げて『ぷりぷり』してしまいます。
「何をいうか、助手くん! これは、儂が発明したタイムマシンじゃぞ!? 乗れん訳があるまい!?」
「いや、シカシ、博士の力と登攀能力デスト……」
「よおし分かったぞ、助手くん。そこまで言うのなら、儂が、このタイムマシンを登れるところを見せてやるぞい!!」
ドク博士はそう言うと、助手くんの左隣に移動し、タイムマシンの前に立ちました。
「ダ、大丈夫ですか……? 無理をシナイ方が……」
「良いから、黙ってそこで見ておれ!」
助手くんの両腕は、心配が表に出たように胸元で『あわわ』させてしまいますが、ドク博士は、その両腕を振り払うかのように身体を大の字に広げ、タイムマシンに抱きつきます。
「では、いくぞい!」
一声、気合いを入れたドク博士は両腕と両足を交互に上下に動かし、タイムマシンを登り始めます。
「うんしょ、うんしょ」
両足が地面から離れた瞬間、ドク博士は、自身の重さをささえきれず、早々に地面に『すとん』と両足をつけてしまいます。
「ぬぬ~っ! もう一度!」
再度、挑戦しますが、結果は先程と痛いほど一緒でした。現実を突き付けられたドク博士は、その場で頭を抱えながらしゃがみ込み、ギャグ的な涙を噴き出しながら、泣き出してしまいました。
「わ~~ん~~っっ!! 登れないんじゃああぁぁっっ!!」
タイムマシン起動まで、残り時間5分。助手くんは、そんなドク博士の姿を、目からオイルが流れるのをこらえるかの様に、天を仰ぎ見ながら、「くっ」と漏らすのでした。
助手くんの、素の質問返しにドク博士は少しだけ困惑の表情を見せましたが、直ぐもとの顔に戻ると、こう答えました。
「もちろん、しがみつくんじゃよ。こういうふうにな」
「ヤッパリ……」
助手くんは、両膝をつき、地面に身体を大の字に広げ、はいつくばるような仕草を交えながら説明するドク博士を、何処か、遠い目で見ながらぼそりとつぶやきます。
ですが、ドク博士はそんな遠い目も気にする事なく、片膝をつきながら立ち上がると、ズボンの裾辺りをぱんぱんとほろいながらこう言いました。
「じゃが、あれじゃのう。その質問をするという事は、ようやくタイムマシンに乗ってくれる気になってくれたという事かのう?」
「イエ、全然」
「何でじゃあ~!!」
助手くんの即答に、ドク博士は両手を上げて『ぷんぷん』してしまいます。しかし助手くんは、立て続けにこんな事を聞いてきました。
「ソレニ、博士。搭乗部分が頂上ということは、この『ツルツル』の表面をヨジ登る、とイウ事デスよね?」
「うむ、そうじゃが?」
ドク博士は、何を当たり前な事を。といった感じで答えます。が、次の助手くん言葉にちょっとだけ立腹してしまいます。
「博士は、登レルのデスカ?」
「なんじゃ、助手くん。儂がこのタイムマシンを登る事が出来ず、右往左往するのでは、と思っとるのか?」
「ソレは……その……」
助手くんは、口元に右手をあて僅かばかり口ごもりますが、右手を下ろし、姿勢を正すとはっきりとこう言いました。
「ソウデス」
「なんじゃとお!?」
断言されたドク博士は、思わず両手を上げて『ぷりぷり』してしまいます。
「何をいうか、助手くん! これは、儂が発明したタイムマシンじゃぞ!? 乗れん訳があるまい!?」
「いや、シカシ、博士の力と登攀能力デスト……」
「よおし分かったぞ、助手くん。そこまで言うのなら、儂が、このタイムマシンを登れるところを見せてやるぞい!!」
ドク博士はそう言うと、助手くんの左隣に移動し、タイムマシンの前に立ちました。
「ダ、大丈夫ですか……? 無理をシナイ方が……」
「良いから、黙ってそこで見ておれ!」
助手くんの両腕は、心配が表に出たように胸元で『あわわ』させてしまいますが、ドク博士は、その両腕を振り払うかのように身体を大の字に広げ、タイムマシンに抱きつきます。
「では、いくぞい!」
一声、気合いを入れたドク博士は両腕と両足を交互に上下に動かし、タイムマシンを登り始めます。
「うんしょ、うんしょ」
両足が地面から離れた瞬間、ドク博士は、自身の重さをささえきれず、早々に地面に『すとん』と両足をつけてしまいます。
「ぬぬ~っ! もう一度!」
再度、挑戦しますが、結果は先程と痛いほど一緒でした。現実を突き付けられたドク博士は、その場で頭を抱えながらしゃがみ込み、ギャグ的な涙を噴き出しながら、泣き出してしまいました。
「わ~~ん~~っっ!! 登れないんじゃああぁぁっっ!!」
タイムマシン起動まで、残り時間5分。助手くんは、そんなドク博士の姿を、目からオイルが流れるのをこらえるかの様に、天を仰ぎ見ながら、「くっ」と漏らすのでした。
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