世捨て魔王と世に捨てられた勇者達は互いに何を見る?

軽見 歩

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第5話 さあ、逝け!人間ども!

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 先へ進む二人の勇者討伐隊とそれを追う私。あれからそれなりに時間が経ち辺りはもうすっかり暗くなっていた


「暗いな・・・」


 私にはしっかりと見えているので、恐る恐る廊下を進む人間の姿はなかなかシュールだ。


「明かり使う?」


「バカ言え、こっちの位置もバレバレになるだろうが。ん?」


 日も落ちてしまい、彼らは暗い道を警戒しながらしばらく進んでいると前方に気配がした。面白くなりそうだ


「むッ、前方に人影!」


「ターゲットか!? 食らえエアニール!」


 私の直ぐ前に居る人間が人影に向かって魔法の風の刃を飛ばすと、人影はそれを見事弾いてみせた


「ウラアア!」


 こちら側が遠距離攻撃の手段をっていると判断するやいなや、人影”2人”はこちらに向かって突進してこちらの二人に斬りかかる


「ゴラアア!ついに出やがったな!」

  「死にさらせ!」

     「賞金は俺がもらったぁ!」

 「俺、この戦いが終わったら、馬好きな彼女と結婚するんだ」


 武器と武器がぶつかり合い火花を散らす。実に滑稽で愛おしい光景だが、残念ながらその火花で互いの顔が見え彼らは気づいてしまった


「あ、あれ?」


「なんだお前らか・・・、驚かせやがって」


「落とし穴に落ちたはずじゃ?」


「死体を引っ張り出す為の通路が運良く開いててな、そっから出て来たんだよ」


 なんてことだ・・・、錯乱した仲間と涙ながら殺し合うシチュエーションを期待していたというのに。幻覚剤でも用意しろ、ここの設計者の美的センスを疑うぞ。それとも用意はしてあったが劣化して使い物にならない状態だったのか? いや待てたしか・・・


「まあなんにせよ、無事に合流出来てよかったよ」


「これで取り分が二倍になったって喜んでただろうが」


 ・・・そういえば落とし穴の中には騎兵の進軍を止める為の曲げると広がる骨格パンタグラフにトゲが付いた携帯用の鋲が流用されている物もあると聞く。その鋲が城が引き払われる時に持ち出されていたのか、どうりで落とし穴の上を通っても血の臭いもなにもしなかったはずだ。私としたことが気がゆるみ過ぎていたか


「あ、俺達もお前らが諦めて帰ってくれたら取り分が二倍だなって言ってたぜ」


「なんだ、考える事は一緒かよ」


「「「「ハハハハハ!」」」」


 じゃれ合ってないでさっさと進め!地獄まで! 私が見たいのは友情ごっこではない!


「そんじゃま、さっさと先に進みますか」


 そうだ行け!はらわたぶちまける様な苦しみを味わいながら死んで逝け!


「よし! 行くぞお前ら!」


「「「おう!」」」


 気合を入れて先に進む人間共


「えいや!」


「めんどくさい仕掛けばかり作りやがって! このぉ!」


 彼らは幾多の試練を乗り越え


「まさか、あの石像の持っていた宝石が鍵になっているとは!」


「あ、外れねえ!? 売り飛ばせねえじゃねえか!!」


 道中の奇妙な仕掛けに戸惑いながらも進み、ついにたどり着いた


「この扉の中に獲物が居るな、きっと」


「ああ神様、どうか我らをお守りください」


 少なくとも世界を葬れる力を持った存在が貴様の後ろにいるが、私は貴様らを助ける気は無い、むしろ苦しめ、私に喜劇苦しみもがき足掻く様を見せろ


「よし! オレが先に行く!」


 そう言って先頭の男が扉を開けて中に入ると・・・・


「シュ・・・ゥン」


 彼はペロッとめくれるように二人になって倒れた。正確には真横から縦に斬られて二人に増えた様に見えただけだが。きっと勇者が壁際で待ち構えていて、彼が入って来た所を切り裂いたのだろう。魔法ではない、早かったが一瞬刀身が見えた


「おい…?」


 勇者討伐隊の1人が状況を理解できずに呆けていると、他の仲間が叫んだ。彼らにも剣が見えたらしい


「左の壁だ!気を付けろ!」


「壁に張り付いたままであの剣速ッ、相当腕がいいぞ!」


 剣が見えただけでなく、勇者の位置まで把握したらしい。良い目と勘だ、これは期待できるだろう、善戦できるかもな・・・・


「ガッ!」


 ・・・・だがそれは、その良い目と勘に身体が追いついていればの話だ。勇者の位置まで感づいた彼に、勇者が壁ごしに殴り飛ばした石の壁の一部が飛んでいき喉を潰されてしまう


「がっ…! おご!」


「大丈夫か! 今治してや…」


 苦しみもがく彼に、呆けていた男が駆け寄って治癒魔法を唱えようとしたが・・・


「バシュウゥゥン!」


「げほ!げほ!」


 ・・・勇者の投げた煙玉を顔に投げられ喉を塞がれた。この香りは刺激性の粉塵が混じっているな、人間にはきついだろう


「シュゥンッ!」


 おっと、煙で苦しむ彼に気を取られてもう一人の元気な方が事切れるのを見逃してしまった。こちらも綺麗に両断されている


「ギュウウン」


 そして煙で苦しむ彼も、石材に喉を潰された彼もまとめて勇者に両断された。断末魔すらないとは・・・、やれやれ


「手ごたえも歯ごたえも無い連中だ・・・」


 勇者はそう言って手に持った両手持ちの剣についた血をぬぐう。これでは呆気なさ過ぎる、道中のトラップの方がまだ楽しめた。次の連中が来る前にちょっと改良してやるかな、勇者にバレぬように・・・


「・・・お前もそう思うだろ? あまりにも呆気ない」


 ・・・などと考えていると、勇者はこちらを向きそう言った。どうやら今のは私に言ったらしい
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