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1.意識覚醒
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「ウッ…」
ドサッ!!
――タララッタッタッタ――
いつかどこかで聞いたことがあるような軽快なレベルアップ音が脳内に高らかに鳴り響く。
その瞬間、私の意識は覚醒した。
「痛い!!痛い痛い痛い!」
突然、ツンとした強烈な刺激臭と、激しい頭痛に襲われた!
――と思ったら、数秒で波は引き、かわりに世界の景色がガラッと切り替わる。
これまでの愚鈍な思考が嘘のように視界はキラキラと色付き始め、霧がかっていた脳みそが本来の働きを取り戻す。
そして忘れていたはずの前世やら、ボーッと生きてきた今世やらの記憶が一気に脳内を駆け巡った。
「うっ」
吐き気を抑えようと思わず口元に当てた右手を見て、私はあるはずのソレがないことに気づいた。
ない!
ない!
右手がない!!
それよりもーー
「私、すっごいミドリじゃん!!」
どこにでもいる平均的な日本人女性。それが前世の私だった。
朝起きて出勤して仕事して残業こなして帰宅して、晩酌程度のお酒と長風呂を楽しんで明日に備える。そんな日常の繰り返し。あらかた平凡な毎日だった。
まぁ、少しばかり感情が面に出にくい表情筋のせいで他人に誤解されやすかったり、頼み込まれると断れない性格が祟ってトラブルに巻き込まれては損をする苦労しがちな人生ではあったけども。
なんなら死因もそこそこひどかったけども。
見ず知らずの男に刺されそうになって、逃げて逃げて逃げついた先が工事中で空いてたマンホールの――
(あ、これ、多分死ぬな……)
直感的に悟った。
案の定、落ちた。
何故だか痛みは全く感じなかった。だからこそ余計に、間違いなく死ぬなと感じた。
真っ赤に染まっていく視界がただ無性に寂しくて怖くて。薄れゆく意識の中ーー
『まだ死にたくない!』って心から思った。
(あぁ、もしも生まれ変わりがあったなら、今度は絶対人間以外がいい。誰にも裏切られたりしない楽しい人生。例えば癒される愛玩動物とか。 そう、スコティッシュフォールドにして… ガクッ)
今際の際に、あんなこと考えなきゃよかった!
まさか本当に生まれ変わるなんて夢にも思わなかった。
ここは日本でもなければ、外国でもない。地球ですらない。完全な異世界。剣と魔法と魔物がはびこる恐ろしい世界。
緑色の腕の先、深青の血の滴る綺麗な断面図を眺めながら、私はこの恐ろしい状況を理解しようと深呼吸と一緒に深いため息を吐いた。
ここは薄暗く肌寒い、死の匂いの充満した室内。
そこは6畳程の空間だった。
壁際に半分ほど水の入った壺と陶器製のコップが置かれたテーブルが一つ、松明がそれぞれの壁に2本ずつ、他には何もない。
恐らく、私を監禁するためだけの部屋なのだろう。
食糧を口にした記憶もなければ、その後にお花を摘んだ記憶もないので、ここにいる間、私は一切の飲食をしていなかったのかもしれない。
「魔物に人権などない!」
ーーと、言わんばかりの劣悪な環境。
目の前に横たわるのは、脂ギッシュでメタボリックな中年男性。左手で己の胸元を掴み、苦悶の表情を浮かべ、右手は何故か私の切り落とされた右手と硬く握手を交わしている。
どうやら私の右手を切り落とした拍子に、なんらかの原因でご臨終あそばせたらしい。その体型から推察するに、心臓発作でも起こしたのだろうか?
(心からザマァみろだわ)
生まれ変わった私は、もう何年もの間ここで重い鎖に両足を繋がれている。
ここでの私の仕事は殺されること。殺されて復活してまた殺されてーー
そうして殺した相手に経験値を与えてきた。
それが、この異世界にて人間以外の生物へと転生した私に与えられた生きる道
世界最弱の魔物 ーーゴブリン ーーへと転生してしまった私の運命だった。
ドサッ!!
――タララッタッタッタ――
いつかどこかで聞いたことがあるような軽快なレベルアップ音が脳内に高らかに鳴り響く。
その瞬間、私の意識は覚醒した。
「痛い!!痛い痛い痛い!」
突然、ツンとした強烈な刺激臭と、激しい頭痛に襲われた!
――と思ったら、数秒で波は引き、かわりに世界の景色がガラッと切り替わる。
これまでの愚鈍な思考が嘘のように視界はキラキラと色付き始め、霧がかっていた脳みそが本来の働きを取り戻す。
そして忘れていたはずの前世やら、ボーッと生きてきた今世やらの記憶が一気に脳内を駆け巡った。
「うっ」
吐き気を抑えようと思わず口元に当てた右手を見て、私はあるはずのソレがないことに気づいた。
ない!
ない!
右手がない!!
それよりもーー
「私、すっごいミドリじゃん!!」
どこにでもいる平均的な日本人女性。それが前世の私だった。
朝起きて出勤して仕事して残業こなして帰宅して、晩酌程度のお酒と長風呂を楽しんで明日に備える。そんな日常の繰り返し。あらかた平凡な毎日だった。
まぁ、少しばかり感情が面に出にくい表情筋のせいで他人に誤解されやすかったり、頼み込まれると断れない性格が祟ってトラブルに巻き込まれては損をする苦労しがちな人生ではあったけども。
なんなら死因もそこそこひどかったけども。
見ず知らずの男に刺されそうになって、逃げて逃げて逃げついた先が工事中で空いてたマンホールの――
(あ、これ、多分死ぬな……)
直感的に悟った。
案の定、落ちた。
何故だか痛みは全く感じなかった。だからこそ余計に、間違いなく死ぬなと感じた。
真っ赤に染まっていく視界がただ無性に寂しくて怖くて。薄れゆく意識の中ーー
『まだ死にたくない!』って心から思った。
(あぁ、もしも生まれ変わりがあったなら、今度は絶対人間以外がいい。誰にも裏切られたりしない楽しい人生。例えば癒される愛玩動物とか。 そう、スコティッシュフォールドにして… ガクッ)
今際の際に、あんなこと考えなきゃよかった!
まさか本当に生まれ変わるなんて夢にも思わなかった。
ここは日本でもなければ、外国でもない。地球ですらない。完全な異世界。剣と魔法と魔物がはびこる恐ろしい世界。
緑色の腕の先、深青の血の滴る綺麗な断面図を眺めながら、私はこの恐ろしい状況を理解しようと深呼吸と一緒に深いため息を吐いた。
ここは薄暗く肌寒い、死の匂いの充満した室内。
そこは6畳程の空間だった。
壁際に半分ほど水の入った壺と陶器製のコップが置かれたテーブルが一つ、松明がそれぞれの壁に2本ずつ、他には何もない。
恐らく、私を監禁するためだけの部屋なのだろう。
食糧を口にした記憶もなければ、その後にお花を摘んだ記憶もないので、ここにいる間、私は一切の飲食をしていなかったのかもしれない。
「魔物に人権などない!」
ーーと、言わんばかりの劣悪な環境。
目の前に横たわるのは、脂ギッシュでメタボリックな中年男性。左手で己の胸元を掴み、苦悶の表情を浮かべ、右手は何故か私の切り落とされた右手と硬く握手を交わしている。
どうやら私の右手を切り落とした拍子に、なんらかの原因でご臨終あそばせたらしい。その体型から推察するに、心臓発作でも起こしたのだろうか?
(心からザマァみろだわ)
生まれ変わった私は、もう何年もの間ここで重い鎖に両足を繋がれている。
ここでの私の仕事は殺されること。殺されて復活してまた殺されてーー
そうして殺した相手に経験値を与えてきた。
それが、この異世界にて人間以外の生物へと転生した私に与えられた生きる道
世界最弱の魔物 ーーゴブリン ーーへと転生してしまった私の運命だった。
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