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34.大脱出?
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「この辺滑るから、足下気をつけて」
「あ、はい」
「私こう見えて、脱出はこれが初めてじゃないから、安心して任せ……」
ツルンッ
ゴンッ!
ガクッーー
「……え?」
言ったそばから、振り向きざまに派手にすっ転び後頭部を強打、そのまま十数分間黄泉の国の住人と化した。
そして、蘇るなり恨みがましい目で私を覗き込む隻眼の貞子と見があい、回復したばかりのHPを半分以上も献上した。
どうやら優しいオークの姫は、死んだ私をその膝に乗せ優しく介抱してくれていたらしい。
何というありがた迷惑。うん、どの口が言う。
大口を叩いて脱出計画をスタートさせた癖に、最初の数歩でいきなりその残念ぶりを見せつけてしまうなんて…… よかった、あの2人がいなくて……
今度はしっかりと松明を取り出してーー
「この辺滑るから、足下気をつけて」
「え? あ…… はい」
まるで何事もなかったかのように、最初からやり直した。
暗くジメジメとした地下牢は、思った以上に簡素で適当な造りだったで、二つの鉄格子付きの洞穴の他には何も見当たらない。
地上へと続く一本道には、見張りの者も居なければ、脱出を拒むような特別な仕掛けも一切ない。
見張り番の存在を警戒して暗闇を移動しようとしたせいで、とんだタイムロスと無駄死にをやらかした。
まったく! 警戒心が薄いというかなんというか、やる気あんのかここの村人は! 見張り無しなら無しと、先に伝えておいてほしい。
無論、難易度イージーに越したことはないのだが、カッコつけた分恥ずかしさのやり場がなくて、心の中で村人に八つ当たりする。
「あ、あそこに明かりが……」
オークの姫が、嬉しさを含ませた声をあげる。
十数メートル程進んだ先に、階段とは名ばかりの滑りやすそうな上り坂が出現した。
さらにその先には、ところどころ隙間から外の光が漏れる簡易的な木の蓋のようなものが見受けられる。
どうやらあそこが唯一の出口らしい。
行きは捕らえられた宇宙人さながらに、屈強な村人たちに両脇を抱えられていたため気づかなかったが、この適当感満載のきつい傾斜角の階段モドキを、転び死にすることなく登りきるのは中々骨が折れそうである。
ぐぬぬ、貧弱な肉体が恨めしい。
「ここは私が……」
不意にオークの姫が、背後から私の両肩を掴んだ。
「ヒッ!」
消え入りそうなほどにか細い声で囁かれると、違う意味でドキーッ! として、寿命が縮む。
何かというとすぐに天に召されがちな私を、姫はヒョイッと軽々しく持ち上げ、抜群の安定感でその胸元に抱き上げた。
さすがオーク、力持ち!
そしてそのままこともなげに階段モドキをスルスルと歩み進める。
「フヒ、フヒ、フヒ」
おかげで無駄死にする心配もなく快適な脱出の旅……と言いたいところではあるが、そうは問屋が卸さない。
絶妙な位置関係により生じた弊害。
緑の貞子が耳まで裂けた大きな口から大量の涎を垂らして、か弱い私を覗き込む。ニタニタと笑い、薄気味悪い声の混じった息を漏らす。
怖い。普通に怖い。ただただ怖い。
脆弱なメンタルゲージが減っていく……
ーーガチン!
いつの間にやら到着したのか、脱出を拒む重い金属音でハッと我に返った。
「あっ……鍵……」
頭上から漏れる絶望。
宿主の感情を察してか、あんなにもニタニタと楽しそうだったソレの表情が一瞬で無へと変化する。
怖っ! これはこれで怖っ!
「ムリムリムリムリ……」
途端に姫の腕の力が抜け、危うくずり落ちそうになる。
「待って! 落とさないで! なんとかするから!」
墜落死の危険を感じ、私は慌てて『銀の匙』を発動させ、【鉄製の鍵付きの木蓋】を【鉄製のシャケを咥えた木彫の熊(大きめ)】へと変化させた。
何故に木彫の熊…… それは私にもわからない。
錬成可能物の最初の項目がソレだったからとしか、言いようがない。
故に、ツッコミは不要なのだ。
今はそんなことを気にしている場合ではない。一刻も早くここから抜け出し、ミギエさんと合流し、美少年タラバの貞操の危機を救わねばならない!
「急ごう!」
熊を『トランクルーム』へと放り込み、姫に声をかけた瞬間ーー
「スゴイスゴイスゴイスゴイスゴイ……」
感動のあまりに極まった姫が、ニタニタ貞子越しに私を覗き込む。
「ヒッ!」
思わず収納したばかりの木彫りのソレを、姫の頭上へと落とした。
私は悪くない……
地下の穴から地上へと抜けると、そこはこの屋敷の食糧庫とでもいうべき場所だった。二、三人が通れるほどのスペースの周りには、所狭しと野菜や干し肉、謎物体が保管されている。種類は多くないが、なかなかの量である。
さすがは村長の屋敷といったところだろうか。
まぁ、ここが本当に村長の屋敷と仮定するならば! ではあるが……
私は迷わず速やかにソレらを『トランクルーム』へと収納した。
何より嬉しかったのは、バルパスではお目にかかれなかったほうれん草やダイコン、カボチャ、そして椎茸等のキノコ類があったこと。
さらにそれらの種も一緒に保管されていて、思わず今の状況も忘れ、一心不乱にソレらを詰め込んだ。
途中、何度か涙目で頭頂部を押さえる姫と、謎物体を貪り食べている胸元の貞子を目の端に捉えたが、もちろん見なかったことにして作業を続けた。
触らぬ神に祟りなし。
食糧庫を出ると、その先は比較的大きな台所だった。
大小様々な鍋や食器類が所狭しと並べられてはいたものの、どれも中身は空っぽで日も沈みかけた夕飯の支度時にもかかわらず、人の気配はなく静まりかえっている。
「静か過ぎる……」
金貨に浮かれて大宴会を催していてもおかしくないと思っていたのに、辺りは不気味なほど静かだ。
飲み過ぎて全員酔い潰れた?
いや、それにしては台所がキレイ過ぎる……。
小首を傾げつつも手を動かし、鍋や食器を『トランクルーム』へと放り込んでいると、ふと、台所の扉前で姫がしゃがみこんでいるのに気づいた。
「なに? どうしたの?」
「あれ…… なんか怖い……」
涙目で首を振り台所の左奥を指さす姫。心なしか胸元の貞子の顔色も優れない。
どうやら台所の一角に置かれた酒樽付近に原因があるようだ。
恐る恐る近寄ると、なんとも言えない禍々しいモヤのようなものがうっすらと漂っている。
本来であれば、この酒樽もテイクアウトさせていただくところだが…… 君子危うきに近寄らず。怪しいものはスルーしろと本能が告げている。
こんな時、ミギエさんなら迷うことなく開けて中身を確かめていることだろう。
「先を急ごう」
半ば逃げ出すような気持ちで奥へと続く扉に手をかけた。
次の瞬間、
「うおおおお!」
ーーバンッ! ガタンッ! バンッ!
突然、奥の部屋へと複数の人々が慌てた様子で飛び込んでくる音がした。
一瞬にして、私を盾にした姫が背中にしがみつく。ついでに首を伸ばした貞子が、こちらを覗き込む。
本気でやめてほしい。
くっ……、こんな時、ミギエさんが居てくれたら……
『土下座して謝るまで許さない!』
そう言って悪びれもせず仁王立ちした姿を思い出す。
うん、今なら土下座くらいお安い御用である。いくらでも頭くらい下げるから、早く助けにきて欲しい。
「シクシクシクシク……」
背中の姫が、啜り泣く。
あぁ、めんどくさい。何かあるとすぐに泣く。お前はか弱い女子か! あ、女子だ。紛れもなく女子だ。
私は『トランクルーム』から木彫の熊を取り出して、姫に手渡し、大きく頷いた。
特に意味はない。気に入ったみたいだから、落ち着くかなと思って……
姫は一瞬キョトンとして、大きく頷き返した。何故だか、貞子も頷いた。
ゆっくりと音を立てないように慎重に扉へと近づく。
「フヒ、フヒ、フヒ……」
う、うるせぇ。鼻息がうるせぇ。2匹してうるせぇ。
私は後ろを振り返り、口元に人差し指を立てて、背後の姫に音を立てないよう合図をした。
ソレを見た姫が、迷うことなく胸元の貞子の口に鉄製のシャケを突っ込む。
「グヒッ……」
貞子の隻眼が驚きのあまり飛び出しそうなほどに大きく見開かれた。
衝撃の展開に、吹き出しそうになるのを必死で堪える。
大人しそうに見えて、なかなか曲者な姫である。
私は大きく深呼吸し跪くと、ゆっくりと慎重に扉の下の隙間を覗き込んだ。
一人、二人、三人…… 村人……だろうか?
足下しか見えないが、慌てた様子で家具を動かし、扉の前にバリケードを作っている。怒号とも罵声とも取れる声が響く。
(何かに追われている? )
ーーと、そのうちの1人がフラフラとした足取りで、こちらの扉へと向かってきているのに気づいた。
(やばい! 隠れなきゃ!)
そう思い背後の姫へと声をかけようと頭を上げかけた瞬間ーー
ガチャ。
(ヤバイ! 間に合わない!)
「ブヒーッ!!」
ーーゴンッ!!
「「あ…… 」」
貞子の口から勢いよく飛び出した木彫りの熊が、扉を開けた男の顔面へとクリーンヒットした。
「誰だ!?」
不審な物音に気づいた残りの2人が、慌てて駆けつける。
「ゴブリン! お前、どうやっ……」
て? と言い終わらないうちに、背後の姫に気付いた男達の表情が恐怖に引き攣りーー
「ヒッ、ヒィィィィィイ!」
腰を抜かして後退りを始めた。
「え?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
背後からつんざくように響いた不快音に、思わず振り向いた瞬間ーー
バグゥッ!
私はその頭部を、ミドリの貞子に喰い千切られた。
「あ、はい」
「私こう見えて、脱出はこれが初めてじゃないから、安心して任せ……」
ツルンッ
ゴンッ!
ガクッーー
「……え?」
言ったそばから、振り向きざまに派手にすっ転び後頭部を強打、そのまま十数分間黄泉の国の住人と化した。
そして、蘇るなり恨みがましい目で私を覗き込む隻眼の貞子と見があい、回復したばかりのHPを半分以上も献上した。
どうやら優しいオークの姫は、死んだ私をその膝に乗せ優しく介抱してくれていたらしい。
何というありがた迷惑。うん、どの口が言う。
大口を叩いて脱出計画をスタートさせた癖に、最初の数歩でいきなりその残念ぶりを見せつけてしまうなんて…… よかった、あの2人がいなくて……
今度はしっかりと松明を取り出してーー
「この辺滑るから、足下気をつけて」
「え? あ…… はい」
まるで何事もなかったかのように、最初からやり直した。
暗くジメジメとした地下牢は、思った以上に簡素で適当な造りだったで、二つの鉄格子付きの洞穴の他には何も見当たらない。
地上へと続く一本道には、見張りの者も居なければ、脱出を拒むような特別な仕掛けも一切ない。
見張り番の存在を警戒して暗闇を移動しようとしたせいで、とんだタイムロスと無駄死にをやらかした。
まったく! 警戒心が薄いというかなんというか、やる気あんのかここの村人は! 見張り無しなら無しと、先に伝えておいてほしい。
無論、難易度イージーに越したことはないのだが、カッコつけた分恥ずかしさのやり場がなくて、心の中で村人に八つ当たりする。
「あ、あそこに明かりが……」
オークの姫が、嬉しさを含ませた声をあげる。
十数メートル程進んだ先に、階段とは名ばかりの滑りやすそうな上り坂が出現した。
さらにその先には、ところどころ隙間から外の光が漏れる簡易的な木の蓋のようなものが見受けられる。
どうやらあそこが唯一の出口らしい。
行きは捕らえられた宇宙人さながらに、屈強な村人たちに両脇を抱えられていたため気づかなかったが、この適当感満載のきつい傾斜角の階段モドキを、転び死にすることなく登りきるのは中々骨が折れそうである。
ぐぬぬ、貧弱な肉体が恨めしい。
「ここは私が……」
不意にオークの姫が、背後から私の両肩を掴んだ。
「ヒッ!」
消え入りそうなほどにか細い声で囁かれると、違う意味でドキーッ! として、寿命が縮む。
何かというとすぐに天に召されがちな私を、姫はヒョイッと軽々しく持ち上げ、抜群の安定感でその胸元に抱き上げた。
さすがオーク、力持ち!
そしてそのままこともなげに階段モドキをスルスルと歩み進める。
「フヒ、フヒ、フヒ」
おかげで無駄死にする心配もなく快適な脱出の旅……と言いたいところではあるが、そうは問屋が卸さない。
絶妙な位置関係により生じた弊害。
緑の貞子が耳まで裂けた大きな口から大量の涎を垂らして、か弱い私を覗き込む。ニタニタと笑い、薄気味悪い声の混じった息を漏らす。
怖い。普通に怖い。ただただ怖い。
脆弱なメンタルゲージが減っていく……
ーーガチン!
いつの間にやら到着したのか、脱出を拒む重い金属音でハッと我に返った。
「あっ……鍵……」
頭上から漏れる絶望。
宿主の感情を察してか、あんなにもニタニタと楽しそうだったソレの表情が一瞬で無へと変化する。
怖っ! これはこれで怖っ!
「ムリムリムリムリ……」
途端に姫の腕の力が抜け、危うくずり落ちそうになる。
「待って! 落とさないで! なんとかするから!」
墜落死の危険を感じ、私は慌てて『銀の匙』を発動させ、【鉄製の鍵付きの木蓋】を【鉄製のシャケを咥えた木彫の熊(大きめ)】へと変化させた。
何故に木彫の熊…… それは私にもわからない。
錬成可能物の最初の項目がソレだったからとしか、言いようがない。
故に、ツッコミは不要なのだ。
今はそんなことを気にしている場合ではない。一刻も早くここから抜け出し、ミギエさんと合流し、美少年タラバの貞操の危機を救わねばならない!
「急ごう!」
熊を『トランクルーム』へと放り込み、姫に声をかけた瞬間ーー
「スゴイスゴイスゴイスゴイスゴイ……」
感動のあまりに極まった姫が、ニタニタ貞子越しに私を覗き込む。
「ヒッ!」
思わず収納したばかりの木彫りのソレを、姫の頭上へと落とした。
私は悪くない……
地下の穴から地上へと抜けると、そこはこの屋敷の食糧庫とでもいうべき場所だった。二、三人が通れるほどのスペースの周りには、所狭しと野菜や干し肉、謎物体が保管されている。種類は多くないが、なかなかの量である。
さすがは村長の屋敷といったところだろうか。
まぁ、ここが本当に村長の屋敷と仮定するならば! ではあるが……
私は迷わず速やかにソレらを『トランクルーム』へと収納した。
何より嬉しかったのは、バルパスではお目にかかれなかったほうれん草やダイコン、カボチャ、そして椎茸等のキノコ類があったこと。
さらにそれらの種も一緒に保管されていて、思わず今の状況も忘れ、一心不乱にソレらを詰め込んだ。
途中、何度か涙目で頭頂部を押さえる姫と、謎物体を貪り食べている胸元の貞子を目の端に捉えたが、もちろん見なかったことにして作業を続けた。
触らぬ神に祟りなし。
食糧庫を出ると、その先は比較的大きな台所だった。
大小様々な鍋や食器類が所狭しと並べられてはいたものの、どれも中身は空っぽで日も沈みかけた夕飯の支度時にもかかわらず、人の気配はなく静まりかえっている。
「静か過ぎる……」
金貨に浮かれて大宴会を催していてもおかしくないと思っていたのに、辺りは不気味なほど静かだ。
飲み過ぎて全員酔い潰れた?
いや、それにしては台所がキレイ過ぎる……。
小首を傾げつつも手を動かし、鍋や食器を『トランクルーム』へと放り込んでいると、ふと、台所の扉前で姫がしゃがみこんでいるのに気づいた。
「なに? どうしたの?」
「あれ…… なんか怖い……」
涙目で首を振り台所の左奥を指さす姫。心なしか胸元の貞子の顔色も優れない。
どうやら台所の一角に置かれた酒樽付近に原因があるようだ。
恐る恐る近寄ると、なんとも言えない禍々しいモヤのようなものがうっすらと漂っている。
本来であれば、この酒樽もテイクアウトさせていただくところだが…… 君子危うきに近寄らず。怪しいものはスルーしろと本能が告げている。
こんな時、ミギエさんなら迷うことなく開けて中身を確かめていることだろう。
「先を急ごう」
半ば逃げ出すような気持ちで奥へと続く扉に手をかけた。
次の瞬間、
「うおおおお!」
ーーバンッ! ガタンッ! バンッ!
突然、奥の部屋へと複数の人々が慌てた様子で飛び込んでくる音がした。
一瞬にして、私を盾にした姫が背中にしがみつく。ついでに首を伸ばした貞子が、こちらを覗き込む。
本気でやめてほしい。
くっ……、こんな時、ミギエさんが居てくれたら……
『土下座して謝るまで許さない!』
そう言って悪びれもせず仁王立ちした姿を思い出す。
うん、今なら土下座くらいお安い御用である。いくらでも頭くらい下げるから、早く助けにきて欲しい。
「シクシクシクシク……」
背中の姫が、啜り泣く。
あぁ、めんどくさい。何かあるとすぐに泣く。お前はか弱い女子か! あ、女子だ。紛れもなく女子だ。
私は『トランクルーム』から木彫の熊を取り出して、姫に手渡し、大きく頷いた。
特に意味はない。気に入ったみたいだから、落ち着くかなと思って……
姫は一瞬キョトンとして、大きく頷き返した。何故だか、貞子も頷いた。
ゆっくりと音を立てないように慎重に扉へと近づく。
「フヒ、フヒ、フヒ……」
う、うるせぇ。鼻息がうるせぇ。2匹してうるせぇ。
私は後ろを振り返り、口元に人差し指を立てて、背後の姫に音を立てないよう合図をした。
ソレを見た姫が、迷うことなく胸元の貞子の口に鉄製のシャケを突っ込む。
「グヒッ……」
貞子の隻眼が驚きのあまり飛び出しそうなほどに大きく見開かれた。
衝撃の展開に、吹き出しそうになるのを必死で堪える。
大人しそうに見えて、なかなか曲者な姫である。
私は大きく深呼吸し跪くと、ゆっくりと慎重に扉の下の隙間を覗き込んだ。
一人、二人、三人…… 村人……だろうか?
足下しか見えないが、慌てた様子で家具を動かし、扉の前にバリケードを作っている。怒号とも罵声とも取れる声が響く。
(何かに追われている? )
ーーと、そのうちの1人がフラフラとした足取りで、こちらの扉へと向かってきているのに気づいた。
(やばい! 隠れなきゃ!)
そう思い背後の姫へと声をかけようと頭を上げかけた瞬間ーー
ガチャ。
(ヤバイ! 間に合わない!)
「ブヒーッ!!」
ーーゴンッ!!
「「あ…… 」」
貞子の口から勢いよく飛び出した木彫りの熊が、扉を開けた男の顔面へとクリーンヒットした。
「誰だ!?」
不審な物音に気づいた残りの2人が、慌てて駆けつける。
「ゴブリン! お前、どうやっ……」
て? と言い終わらないうちに、背後の姫に気付いた男達の表情が恐怖に引き攣りーー
「ヒッ、ヒィィィィィイ!」
腰を抜かして後退りを始めた。
「え?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
背後からつんざくように響いた不快音に、思わず振り向いた瞬間ーー
バグゥッ!
私はその頭部を、ミドリの貞子に喰い千切られた。
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