ヒーローズマキナ

鷹ピー

文字の大きさ
上 下
18 / 34
第1章

18話 宿場町ドロネ

しおりを挟む
ドロネはララニアと同じく、グランディアス王国西部に広がるファラの森にある町だ。

そしてここから東に進めば王都グランダル、西に進めばララニア、南に進めばバルベル、北に進めばグラファル山脈がある。

その為、昔からドロネは要所要所に行く時の宿場町として栄えていた。

町には宿屋が多く、視界に入っている建物すべてが宿だと言うから驚きだ。




ドロネに着くとまずダミアンさんが予約していた宿まで馬車を送った。

今回の依頼では僕達の宿代もダミアンさんが出してくれる事になっているので、僕達は各自用意された部屋に荷物を置いた後、食堂で今後の予定を話し合う事になった。

1人1部屋取ってもらえる辺り、ダミアンさんの商売はうまく行っているのだろう。

ダミアンさんはチェックインを済ませると、商品をチェックしに荷台へ向かった。



「明日からの道のりはいつ魔物や盗賊が襲ってきてもおかしく無い。気を引き締めて行くぞ」
今は食堂にある丸テーブルのイスにアナベル、タツヤ、僕、カヨの順番で座っている。

「分かりました」「おう!」「は、はい」
アルベルがみんなの顔を見ながら言葉を発し、そして何か納得した様に頷く。


「よし。まず確認だがエルムは探知魔術が使えるんだよな」

「使えます」

「よし。では陣形は今日と同じで行く。だがエルムは魔力残量に気を付けて探知魔術を使ってくれ」

「分かりました」
できる事なら透視を使いたいけど、森の中を行くので魔力探知を使わざる終えない。
透視は目に頼る事になるので見逃しが怖いからだ。

まぁ食事さえできれば問題ないはず。
この体は食べ物を食べればすぐに魔力に変換されるからね。


「戦闘になった時は私とエルムとタツヤが前衛、カヨが後衛だが属性魔術が使えるタツヤはカヨを守る様にして戦ってくれ」

「おう、任せろ!」
エリーから話を聞いた後、僕は前衛職の装備を揃えた。
でもメイド服はそのままである。

前世では後衛だったのでうまく立ち回れるか不安だな。
因みに装備は盾とメイスだ。

タツヤは前衛である事に拘りがあるのか、今までと装備は変わらない。



「お話は終わりましたか?」
商品のチェックが終わったのかダミアンさんが僕達のいるテーブルに近付き、給仕に椅子持って来てもらってアナベルとタツヤの間に座った。

「はい。今終わりました」

「では食事にしましょう」
すると給仕がお飲み物が入った人数分のコップと、芋とベーコンを一緒に炒めた料理が大皿に山盛りで出て来た。
コップの中身は匂いと濃い紫色をしている事からブドウのお酒だろう。

「ジャーマンポテトみたいだな」
タツヤが反応しているという事は、タツヤの居た国で似た料理があったのだろう。

「まだ料理は出て来ますがとりあえず乾杯しちゃいましょう!」
ダミアンさんがそう言うとアナベルがコップを持って立ち上がる。

みんながコップを持つのを待ってから話し始めた。


「ではリーダーの私が音頭を取らせて頂く。まずはこの宿と豪勢な料理を用意してくれたダミアンさんに感謝を」

「いえいえ、こちらも冒険者あっての商売ですからこれぐらいはさせて下さい」

「皆ダミアンさんの好意を無駄にしない為にも残さず食べる様に、それでは旅の無事を祈って。乾杯っ」

「「「「乾杯」」」」


飲み物を口に含むと独特な渋みが口に広がり、喉を通った時のあの感じはどこか懐かしくも感じる。

でもこの体だと酔わないんじゃないかな?
後でエリーに聞いてみよう。


「なあエルム、これ酒だよな」

「ん?そうだよ」

「そうか・・・」
そう言うとタツヤは意を決した様子でコップを煽った。

「苦っ」
後で聞くと、どうやらタツヤはこれが初めてのお酒がった様で口に合わなかったらしい。


この後大皿で2皿分の料理が出て来たけど、カヨは少食の様で1皿目で食べれなくなり、2皿目でアナベルとタツヤがダウンしたので3皿目は僕1人で食べた。

どうやら最大まで魔力を溜めても満腹にはならないみたいだ。




でも食べ終わった時、食堂にいる人が一斉に歓声を上げるのはやめてほしかった。


そして次の日、朝食を取った後すぐにドロネの町を出発した。

目指すはバルベルの途中にある村の1つ、テナス村だ。
しおりを挟む

処理中です...