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しおりを挟む「待たせてごめんね」
ドアの鍵を開ける祐一。
前髪が鬱陶しかったので、近所の理容店に行っていたらしい。
そういえば、全体的に短くなっていると納得する麗奈。
昨日は前髪で眼鏡が隠れていたが、今日はレンズの上の方に触るか触らないかくらいの長さになっている。
猫毛で、短くするとハネるのであまり切り過ぎたくないのだという。
「朝、焦るんだよね。
ありえない方向にハネてるんで」
あはは、と笑う祐一の顔に釘付けの麗奈。
まるで今、見逃したら一生の不覚という勢いでガン見である。
「取り敢えずどこか出かけようか?
何処へ行きたいの?」
「あ。え~と」
実は考えてなかった。
羞恥の沼で悶えるので精一杯だったので計画を立てるのはすっかり忘れていた。
「じゃあさ、ランチに行こうか。
あと1時間位で昼だしさ」
ぱあーっと明るい笑顔になった麗奈を見て、祐一は実家で飼っている犬を思い出した。
吹き出しそうになったのは内緒だ。
××
マンションから降りて目の前の公園を突っ切り反対側に出ると、レンガ作りのこじんまりした建物があった。
コーヒーの香りと美味しそうな料理の入り混じったいい匂いが漂ってくる。
木枠のガラス戸は軽くて、開けると優しいカウベルの音がした。
「喫茶店だけど、食事も出来るから」
落ち着いた雰囲気の店内はウェスタン調で、天井が低く木張りの床が歩くと『ギシッ』という独特の音がする。
カウンター席にカウボーイが座っていても不思議じゃない感じがする。
壁一面に英文字の本がディスプレイされていて、客が適当に手に取り席に持っていくのが麗奈の目に入った。
鉢植の大きな観葉植物がホールのあちこちに配置されていてボックス席同士が気にならない様に配慮されていてるのが心地良い。
そのうちの1つに座るとメニューから日替わりランチを2人は選んだ。
「今朝、君のご両親と妹さんと会ちょ、じゃない。
お祖父さんが俺んちに来てたよ」
「ええ~!」
メニューをウェイターに返しながら祐一がサラッと麗奈に爆弾を落とす。
「さすがに昨日の今日で家族全員に会うとは思わなかったよ」
あはははと笑う祐一。
「ご迷惑をお掛けしまして申し訳ありません」
ひえぇ! と焦りながら思わず頭を下げる麗奈。
「いや、まあいいんだけどさ。
まさかの会長と社長じゃん、流石に焦ったよ」
「うう・・・」
恐縮しまくりの麗奈を見て、ああやっぱり昨日は無理をかなりしてたんだなと、再確認して安堵した祐一である。
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