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31 その名もチャッピー♡
しおりを挟む闘技場内で大声が響く。
『不服であるッ!』
「なんでよッ?!」
『威厳が無いではないかッ!』
「可愛いからイイじゃないの~ッ!」
可愛い・・・ とは?
一人と一匹の不毛な言い合いを、呆れ顔で見守る従兄弟達二人。
「シルファもアジェスも、可愛いくてイイって思うよね?
ベヒモスの名前『チャッピー♡』でッ!?
ねッ?」
ねっ? て。
同意を求められても困る・・・
大人の象くらいあるサイズのヘビメタチックで厳ついクロサイによく似た魔物と自分達の従姉妹を見比べ、困惑の表情を浮かべるアジェスと片眉を面白そうに上げるだけのシルファ。
「「主の決めた名前だからな。仕方ないだろ(う)な・・・」」
「ほら、二人も!
同意してるじゃない!」
多分、同意はしていない。
×××
例の青黒のツートンカラーの魔道具の金色のボタンをソフィアが押した途端に、闘技場の丁度真ん中に、全身が鶯色で腹部だけが瑠璃色をした象サイズのベヒモスが転移魔法陣と共に現れた。
突然見知らぬ場所に連れ出されたせいなのか、ベヒモスはキョロキョロとそのつぶら・・・ に見えないこともない黒くてクリっとした瞳で周りを興味深げに見回してから首を捻った。
「来たッ!
クロサイヘビメタ仕様の象サイズモンスターッ!
私と勝負ッ!」
その大声の主である正面にいるソフィアにやっと焦点が合ったらしく、ベヒモスは目をパチパチと瞬きさせる。
――意外に睫毛が長かったのでソフィア達3人はちょっとだけ驚いたが――
『勝負と言ったか? 小さき者?』
「そうよッ!」
形の良い胸をツーンと張り、右手の人差し指をベヒモスに向けるソフィア。
「私が勝ったら私の従魔になりなさい」
『・・・ それはまた実に豪気だな。
私をベヒモスと知ってそのセリフを言っているのか?』
「勿論よ!
負けないから」
そう言うとソフィアは自分の手の中に魔術師の杖を呼び出した。
ソフィアの身長より30センチは長いであろう金の長柄の先端には太陽を模った装飾がされていて、中央には赤い魔石が埋め込まれている。
「テイムするわよ~」
『・・・ 我は魔獣では無く魔物だぞ?
テイムするつもりなのか?
変り者よのう』
首を傾げながら、後ろに立ち見守るシルファとアジェスを見た後で再びソフィアに目を向けるベヒモス。
『フム。其れも面白い。
しかもお主は我より魔力がべらぼうに多そうだな。
後ろの二人も私と変わらぬくらいには多そうだ。
人の子もその様な進化を遂げたということか?』
「「「え?」」」
ベヒモスは、かなり知的交流が可能な魔物だった事が判明した。
×××
魔獣をテイム出来る条件は、大雑把に説明すると対象の生き物よりテイマー側が上位であると認めさせ屈服させるのが基本となる。
少し変った例ではテイマーの側に居ることで魔獣が自身の利を得られると判断しあちらからテイムされにやって来る場合だ。
因みにコレは群れを作るタイプの魔獣に多い。
そして手に入れた魔獣に、主となったテイマーが名前を付ける事で従魔として使役出来る様になるのだ。
しかし目の前のベヒモスはソフィア達との意思疎通が言葉で可能なくらい知性が高く、彼女が自分をテイムしようとする事に対して不快感はないらしく寧ろ面白いと宣って名付けをしてみろと言ってきたのである。
そして今・・・
×××
『幾らなんでも私の図体で『チャッピー♡』は有り得んだろう?』
ソフィアのネーミングセンスが謎すぎると、希少な魔物は遠い目で主予定の少女の顔を見つめていた。
――しかも微妙な『♡』付きはナンダ?
と物申している所である。
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