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56 試合出場? え無理。〜里奈視点②〜
しおりを挟む北部第1小隊が通常の見回り勤務を終え帰って来た王領区の軍務塔。
「「「リーナちゃん、お疲れ~」」」
魔術師のローブを来た女性が同僚の隊員達に声をかけられ振り返った。
「あ、はーい。
お疲れ様でした」
調査団に配属され、そろそろ3週間。
流石に周りの環境にも慣れてきた魔術師リーナである。
×××
リーナの中の人の名前は柏田里奈といい、前世ではごく普通の女子高生だった。
今生で目覚めた当初は随分戸惑ったものの、自分の置かれている立場がどうやら乙女ゲームのヒロインの立場であり、既にゲーム上でいえばエンドロールが流れた後なのだろうと理解するに至った。
当然だが結果はバットエンドである。
仕方なく他の団員達に遅れを取らないように必死で魔法の腕を磨いた彼女だが、最近は森に住む魔獣の駆除にも随分慣れてきた。
その一生懸命さを周りも認めてくれたようで今では普通に接してくれるし、中身は基本礼儀正しい日本の女の子なので騎士達からも可愛がられるようになっていた。
ゴブリンにはいまだに慣れないが・・・
「もっと早く目が覚めてたら、絶対にシルファ王子になんかちょっかい出さなかったのに・・・」
自室に戻ってマントを脱ぐと溜息をつく。
元のリーナの意識はこの身体には全然残っていないようだったが記憶はちゃんと細胞レベルで覚えていたようで、この身体の元々の持ち主がやってきた記憶を夢で知って愕然となったのは10日前。
「ただの一般人が王太子の婚約者を馬鹿にしてただで済むと思ってんの?!
馬鹿すぎるわこの女」
初めて夢で見た時はベッドの上で頭を抱えた。
リーナの見た目は華奢で文句なしの美少女。
前世日本人だった柏田里奈の時の凹凸の寂しい顔と比べたら雲泥の差だ。
流れるような豪奢な金髪は平民には少ないだろうし赤ワインの様な瞳も綺麗だと思う。
肌はきめ細かく色白で、リップ無しでもピンク色でぷっくりした唇に桜色の頬も可愛い。
でも・・・
「馬鹿すぎる」
ゲームの内容を覚えている里奈でも流石にアレはない。
「そもそもシルファ王子ルートは一歩間違えばヤンデレルートなんだから・・・
どうしてそんなアブナイ人に近づくのよ!
転生前の記憶も無いくせにどうしてざまぁ一直線コースになるような真似を・・・」
カン違いヒロインを転生者でも無かったくせに何故地でやるの?!
頭が痛い。
「アンタのお陰でえらい目に会っちゃってるわよ・・・
あーもう。
文句言う先がなくてモヤモヤするわ」
その時部屋のドアをノックする音がした。
「え?
御前試合の代表? 私がですか?」
メガネの女性事務官がA4サイズの説明書を手渡してきた。
「ええ。
この砦の魔術師の中で1番強いのはあなたですから、自然とそうなりますね。
騎士の代表と共に頑張って下さい」
ニッコリ笑う事務官の笑顔が里奈には鬼のように見えるのだった・・・
×××
「ぎゃあああ! 無理いっ!」
相手の魔術師が放った魔法は里奈に向かって一直線に飛んできたが、慌てて防御結界を張ると同時に無詠唱で何時ものアレをやってしまった。
ゴブリンに対してやってしまう、大岩落としである。
思わず全力で岩を召喚したのだが、今日は魔物を一切倒していなかったので、呼び出した岩のサイズがとんでもないものになってしまい、自分自身で驚いて、つい
「ぎゃあああぁッ!!」
と、叫んだのである・・・
「勝者リーナッ!」
審判の旗が上がった。
「2回戦進出しちゃった・・・
どうしよう・・・」
事務官がお祝いにプレゼントしてくれたロッドを握りしめたまま、ボソリと呟いて気が遠くなりそうな里奈である・・・
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