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一章.聖女と出会いと王宮と
フラグ回収は無しで!
隠蔽魔法で姿を隠してウロウロし、結局寝台の下に隠れることにしたミリアンヌ。
『逃げても根本解決にならないしな~ 』
拐われた理由が分からないと対処ができないというのは言い訳で、犯人を見つけて倍返しをしてやるつもりで、ここはひとつ誰が来るのかを見届けようという腹積もりのミリアである。
考えられる敵のパターンは
一、父の政敵
ニ、他国の間者
三、悪役令嬢ルートフラグ
である。そう言えば今日の謁見室でアレク王子の姉が居たなと思い出した。
『誰のルートの悪役令嬢? 』
寝台の下に寝そべって考えるが分からない。
何故ミリアンヌがわからないのか?それは彼女(彼)がゲームをプログラムする側であって、プレイヤーではなかったからだ。
楽しんでプレイするのなら覚えてもいるだろうが、製作者側、それもプログラム担当者なんて、キャラクターが動くため、ストーリーが正常に起動する為に心血を注ぐためだけの存在である。
ストーリー展開毎のスチルがきちんと表示されるかどうかとか、アップデートが上手く行くかどうかとか、そんなこんなんなんなん?的にバグ取りとかメンテナンスばっかりやってるのである。
ハッキリ言ってストーリーは二の次っていうか、覚えていたとしても単純に十四年前の記憶なんぞ薄ぼんやりしたものであろう。
『うーん? 一度くらいはキチンとプレイしても良かったかもしれませんが、これぞアフター・カーニバル・・・』
第一すでにミリアンヌの動きが、学園に通っていない時点で乙女ゲームから完全に外れているので参考にもならないということに未だに思い至らないミリア。
『まあ、行きあたりばったりですかねえ』
・・・呑気である。
××××××××××
寝台の下に飽きてきて、うつらうつらし始めた頃にドアが開く音がした。
「こちらのお部屋です、ごゆっくり」
と言う声が聞こえる。
厚い絨毯の上を歩いてくるので、靴音はしない。どうも一人だけのようだ・・・
ドアが閉まった音がした。
「何でこんなに気分が悪いんだろう・・・」
ため息を吐き、男性が独り言を言いながら、ドサッという音とソファに座った気配がした。
『・・・? 全然寝台の方には興味無さそうだし、気分が悪くなっただけの人? 』
テーブルに置かれた水差しからグラスに水を移したのだろう。飲み込む音だけが響き、その後何の音もしなくなった・・・
『? 』
あまりに静かなので寝台の下から這い出てくるミリア。
ソファーに近づくと男性が一人、頭を背もたれに仰向けに乗せ、ぐったりと座っている。
標準的な黒いタキシードを着ているのでバルの参加者の身内だろうか。
銀色の長い髪は黒いリボンで一纏めに括られており、前髪はキッチリと撫で付けられており、目は閉じている。二十歳前半といった所だろうか? 細面だが中々のイケメンである。
『この人マジで気分が悪いだけみたいだな~ ひょっとして関係ないのかも? 』
腕を組んで、考えているとノックの音がして声が掛けられた。
「ティーダー伯爵様、宜しいでしょうか 」
青年が身じろぎして低い声で
「ああ。どうかしたか」
と答えた。
彼が目を開けたので、遠慮なく顔を確認するミリア。
『ウ~ン蜂蜜みたいな色の目ですね~。覚えが全く無いという事は、攻略対象者ではないってことですし・・・ 』
ドアが開いて侍従が遠慮気味に顔を出した後、入室し略式の礼をする。
「何かあったのか? 」
「ご休憩の所、まことに申し訳ございません。実はこちらの不手際で、ティーダー卿がこちらの部屋に入室する直前においでになった方がいらっしゃった様なのですが・・・何か変わったことはございませんか? 」
「いや、誰もいないようだが? 」
部屋を見回す伯爵と侍従の二人。
『・・・私、見えませんしねえ』
ミリアが肩を竦めてみてもやっぱり誰も見えない。
「そのようですね。失礼致しました。何か手違いがあったようです。ごゆっくりお休みください」
侍従が一礼をすると、伯爵と呼ばれた男が手を挙げた。
『ウ~ンここに居ても仕方なさそうだしな~ 』
ドアを開けて出て行こうとする侍従と一緒にミリアは猫のようにスルリとドアを潜り、休憩室を後にしたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
見えないと何も起こらない。あら不思議。
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