【完結】転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!

hazuki.mikado

文字の大きさ
33 / 189
一章.聖女と出会いと王宮と

フラグ回収は無しで!

しおりを挟む
 
 隠蔽魔法で姿を隠してウロウロし、結局寝台の下に隠れることにしたミリアンヌ。


『逃げても根本解決にならないしな~ 』


 拐われた理由が分からないと対処ができないというのは言い訳で、犯人を見つけて倍返しをしてやるつもりで、ここはひとつ誰が来るのかを見届けようという腹積もりのミリアである。


 考えられる敵のパターンは

一、父の政敵
ニ、他国の間者
三、悪役令嬢ルートフラグ

 である。そう言えば今日の謁見室でアレク王子の姉が居たなと思い出した。


『誰のルートの悪役令嬢? 』


 寝台の下に寝そべって考えるが分からない。


 何故ミリアンヌがわからないのか?それは彼女(彼)がゲームをプログラムする側であって、プレイヤーではなかったからだ。

 楽しんでプレイするのなら覚えてもいるだろうが、製作者側、それもプログラム担当者なんて、キャラクターが動くため、ストーリーが正常に起動する為に心血を注ぐためだけの存在である。

 ストーリー展開毎のスチルがきちんと表示されるかどうかとか、アップデートが上手く行くかどうかとか、そんなこんなんなんなん?的にバグ取りとかメンテナンスばっかりやってるのである。

 ハッキリ言ってストーリーは二の次っていうか、覚えていたとしても単純に十四年前の記憶なんぞ薄ぼんやりしたものであろう。


『うーん? 一度くらいはキチンとプレイしても良かったかもしれませんが、これぞアフター・カーニバル・・・』


 第一すでにミリアンヌの動きが、学園に通っていない時点で乙女ゲームから完全に外れているので参考にもならないということに未だに思い至らないミリア。


『まあ、行きあたりばったりですかねえ』


 ・・・呑気である。


××××××××××


 寝台の下に飽きてきて、うつらうつらし始めた頃にドアが開く音がした。


「こちらのお部屋です、ごゆっくり」


 と言う声が聞こえる。


 厚い絨毯の上を歩いてくるので、靴音はしない。どうも一人だけのようだ・・・

 ドアが閉まった音がした。


「何でこんなに気分が悪いんだろう・・・」


 ため息を吐き、男性が独り言を言いながら、ドサッという音とソファに座った気配がした。


『・・・? 全然寝台の方には興味無さそうだし、気分が悪くなっただけの人? 』


 テーブルに置かれた水差しからグラスに水を移したのだろう。飲み込む音だけが響き、その後何の音もしなくなった・・・
 

『? 』


 あまりに静かなので寝台の下から這い出てくるミリア。

 ソファーに近づくと男性が一人、頭を背もたれに仰向けに乗せ、ぐったりと座っている。

 標準的な黒いタキシードを着ているのでバルの参加者の身内だろうか。

 銀色の長い髪は黒いリボンで一纏めに括られており、前髪はキッチリと撫で付けられており、目は閉じている。二十歳前半といった所だろうか? 細面だが中々のイケメンである。


『この人マジで気分が悪いだけみたいだな~ ひょっとして関係ないのかも? 』


 腕を組んで、考えているとノックの音がして声が掛けられた。


「ティーダー伯爵様、宜しいでしょうか 」


 青年が身じろぎして低い声で


「ああ。どうかしたか」


 と答えた。

 彼が目を開けたので、遠慮なく顔を確認するミリア。


『ウ~ン蜂蜜みたいな色の目ですね~。覚えが全く無いという事は、攻略対象者ではないってことですし・・・ 』


 ドアが開いて侍従が遠慮気味に顔を出した後、入室し略式の礼をする。


「何かあったのか? 」

「ご休憩の所、まことに申し訳ございません。実はこちらの不手際で、ティーダー卿がこちらの部屋に入室する直前においでになった方がいらっしゃった様なのですが・・・何か変わったことはございませんか? 」

「いや、誰もいないようだが? 」


 部屋を見回す伯爵と侍従の二人。


『・・・私、見えませんしねえ』


 ミリアが肩を竦めてみてもやっぱり誰も見えない。


「そのようですね。失礼致しました。何か手違いがあったようです。ごゆっくりお休みください」


 侍従が一礼をすると、伯爵と呼ばれた男が手を挙げた。


『ウ~ンここに居ても仕方なさそうだしな~ 』


 ドアを開けて出て行こうとする侍従と一緒にミリアは猫のようにスルリとドアを潜り、休憩室を後にしたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



見えないと何も起こらない。あら不思議。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

処理中です...