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26 廊下
しおりを挟むその国の国王及びその家族の住居である本宮と呼ばれる建物と、離宮と呼ばれる国外使節団や自国の貴族達を招いたり宿泊客として饗す場所を総じて王宮と呼ぶ。
政治を支える文官の働く場所が文官塔、軍事を支える武官達が勤務する武官塔、魔術師の勤務する場所が魔術師塔等だ
それらの全てが統合され厳重な壁で囲まれた場所の総称が所謂『王城』である。
当然だが国の中枢たる王城には招かれざるものは入城できない。
訪れるにはそれなりの前触れを寄越し、許可証を得て入場する決まりがある。
国を揺るがすような有事に関わること以外に特例はない・・・ 筈である。
その王城の廊下を案内も無しにズカズカと歩くのはアリステッド女王陛下率いるセラフィと侍女のマーサ、そして宙に浮いている透明な玉に閉じ込められたシルビア嬢である。
×××
「ちょっとアンタ!
王城の警備兵をブチのめして入場するなんてッ!
なんて恐ろしい事してるのよ!」
登城許可証の無いまま歩いて城門をくぐり抜けようとした――馬車は城前で降り邸に返した―― アリステッド達一行を止めようとして集まった警備兵達は、武力行使に移行する直前、全員問答無用でアリステッドの魔法により地面にへばり付く結果になった。
何とか立ち上がろうとしても、ものすんごい重力が個人個人に掛かり増々地面にめり込んでいく為、最終的には声も出せなくなったのだ。
気絶した者は即時開放だったが、そのままおネンネである。
泡玉の様に形を変える透明の膜の内側から、シンシア嬢の喚き声が聞こえてくる。
「元気よのう。
我もあんな風に血気盛んに吠えている時期があったやも知れぬ」
シンシアを横目でチラリと見た後、アリステッドが感慨深そうに呟くが、
「えぇ? 絶対に無かったと思うけどぉ?」
何言ってんの君? という顔になったセラフィ。
「・・・・・・」
無言を貫くマーサである。
当然だが案内人はいない。
代わりに紫色の蝶々が数羽、案内の為にアリステッドの前をヒラヒラと飛んでいく。
時折文官の制服を着た者や、侍従服を着た者達が一瞬目を丸くするが、あまりにも堂々と廊下のど真ん中を歩いていくアリステッドを見て、思わず廊下の端に寄ってつい深々と頭を下げてしまう。
『どっか国外から来た王族だろう、ヤベーから頭下げとけ!』
的な、皆に共通するナニかが伝染するのかも知れないが、面白いくらいには誰も歩いていく3人を咎めては来ない。
「ちょっと! 聞いてる?」
「煩い黙っとれ『無音』」
結局シンシア嬢は魔法で口を塞がれ、お人形の入ったガチャの景品の様になってしまった・・・。
×
「ねぇ、このままだと王宮エリアに入っちゃうよ?」
廊下の絨毯の色が薄い萌黄色からロイヤルブルーに変わるのに気がついたのはセラフィ。
「ふむ。
どうやら父君の身柄は王族の住居部分に拉致されたのか」
「いやいやいやいや、拉致されて無いからねッ!?
普通に王家のお迎えの馬車が来たんでしょ?!
私は見てないから 分からないけどさ~」
「蝶の監視によると有無を言わさず登城させられたように見えたが、迎えの馬車は豪華ではあったな・・・」
「ほらぁ」
「しかし、ミア嬢とレオナルド王子の婚約継続を国王に強要されとるように見え・・・ んこともないような、うぅ~む。
父君の方が国王より上手に見えるな」
「え?」
目の前で、ヒラヒラと舞う蝶々が脳内に伝えて来る映像を見て首を傾げるアリステッド。
「伯爵は見掛けは優男だが、中々に強気な御仁のようだ。
アレなら一方的に言い負かされる事もあるまい。
そうだな、ならば先に王子を探せ」
そう指先に留まる蝶にアリステッドが指令を与えると蝶の身体があっという間に分裂して数百羽に増え四方へと散っていく。
「王子探してどうすんのさ?」
「先制攻撃と言ったろう?」
「・・・・・・」
まだやるんだね、とシルフィとマーサの目が――本日2回目―― 二日月の様に細くなった。
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