【完結】引きこもり王女の恋もよう〜ハイドランジア王国物語〜

hazuki.mikado

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episode1 出会い。其れは唐突にやって来る♡

29話 マイペースなヒト 

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 「あの、此方にワタクシをご招待して下さったのは、あなた方御三方と思って宜しいのかしら?」


 女神が首を傾げて3人組に問いかける。

 立ったまま彼女をボンヤリと見ていた黒いマントを羽織った人物達は無反応で、どこか心ここにあらずといった風にも見える。

 シンシアは首を傾げたまま3人組を観察する。

 フードをスッポリ被っているため性別はわからないが、恐らくは男性だろう。

 3人全員がガッチリとした肩幅としており、女性にしては身長が高めの彼女より全員が頭一つ分くらいは高いようだ。

 男性並みに鍛えていて、かなり背の高い女性が居るとすれば、間違いかもしれないが・・・


 「ワタクシを此のような場所に連れて来て、なにか御用でもおありなのかしら?」


 もう一度今度は言葉遣いを変えて声をかけてみる。

 3人の内の一人が自分の喉の辺りに手をやり、ポンポンと軽く当てた。


 「ひょっとして、声が出ないのかしら?」


 シンシアが更に首を傾げながら問うと、残りの2人がゆっくりと頷く。

 どうやら3人は口がきけないらしい。


 「事情の説明は口頭でして頂けませんのね」


 がっかりした様子で肩を落とすシンシア王女である。


 『困ったわ、まさか誘拐されるなんてね・・・』


 首を傾げながら思考に沈むシンシア王女。


 『でもまあ、粗雑に扱われる様子は無いしね』


 そう思いながら、周りを見回すと、直ぐ側に木造りの粗末な椅子があるのに気がついた。


 「あの、座ってもよろしいかしら?」


 椅子を指差すと、3人が同時に首を縦にコクコクと動かす。

 どうやら危害を加える様子は全く無いようである。

 ゆっくりと優雅な動作で椅子に近寄ると、何故か1人が、先回りをして座面に白いハンカチを敷いてくれる・・・ 一体全体どういう扱いなのだろう? ハンカチの置かれた椅子に腰掛けながら悩むシンシアである。


××××××××××


 その頃、紅の離宮の客室から、魔法の残滓を辿り聖獣メルヘンが、背中に聖女ミリアンヌと聖王ミゲルを載せて転移魔法を展開しようとした所を、皇帝グエンによって尻尾を捕まれ止められていた。

 メルは非常に迷惑そうに耳をペタンと寝かせてグエンが掴んでいる自分の長いフサフサの尾に視線を向けている。


 「待て! 聖獣殿! 俺も行く! 連れてってくれ!!」

 「陛下、それちょっと不味くないですか? まだ昨日の片付けが残ってるんじゃ・・・」


 半目になるミリア。


 「大丈夫だ!」


 何処からその大丈夫は来るのだろう・・・


 「普段俺が城にいなくても、ちゃんと廻せてるんだから大丈夫だって!」


 胸を張るグエンに胡乱な目をする神殿組一行である。


 「まあ、一緒に行くのは別に良いんですけど。多分すぐに連れて帰ってきますから」


 溜息を付く聖王ミゲル。


 「それよりも早く行かないと残滓が辿れなくなってしまいます。御主人様」

 「え、困るじゃないですか! 早く行きましょうよ」


 慌てるミリアをドウドウと諌めながら


 「しゃーねーこのまま移転すっか。陛下、そのまま尻尾を掴んどいて下さい」


 そうミゲルが行った途端に3人と一匹の姿は部屋からかき消えた。


××××××××××


 「ハンカチをありがとう御座います」


 シンシアが例を述べると、3人同時にペコリとお辞儀をする。意外にも礼儀正しいのにちょっとびっくりのシンシア王女。


 「うーん、困りましたわ。あなた方は、自分の意志で私を攫ったのですか?」


 すると、全員が首を横にフルフルと振るではないか。


 「では、誰かに頼まれましたの?」


 一人は頷き、一人は頭を横に振り、一人は、首を傾げる。どうやら認識の違いがあるのかもしれない。


 「では、命令でしょうか?」


 この問いに全員が頷く。と、いうことは命令した人物が自分に何らかの用事があるわけだ・・・


 「雇われたということですか?」


 これには全員が同時に首を横に振った。

 
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