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episode1 出会い。其れは唐突にやって来る♡
32話 薄っぺらな
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彼女の舌打ちが終わるか終わらない位の瞬間。
シンシアの真上の空間から『バリバリ』という音と共に、白い大きな猫と人が降ってきた。
「シンシア様~! 大丈夫ですか~ 助けに来ましたよお~ おっと!」
いつものミリアの呑気な声が部屋に響く。どうやら結界を壊して亀裂から飛び込んで来た様である。
「ミリアちゃん! 陛下まで!」
白猫の尻尾を掴んだまま、天井付近の空間から、イケオジ陛下も降って来た。
「シンシア殿! 御無事か!」
「おーい、シンシア大丈夫か?」
緊張感は全く無い面々である・・・
3人の元奴隷達は口をポカンと開けて、天井から降ってくる3人と1匹を眺めていた。
××××××××××
「結界を内外で違う者が張ってたらしいから、来れないかと思いましたわ」
ミリアに抱きつかれて、グリグリされている王女殿下。
「あのような薄っぺらい結界など、吾輩にとっては無いも同然で御座います。王女殿下の御身に何も無かったようで安心致しました」
普段のサイズに戻ったメルヘンが後ろ脚で立ち上がると恭しくお辞儀をする。
「しかし、シンシアの神聖魔法がここに来て発現するとか、思いもしなかったな」
「私も驚いてるわよ。なんでかしらね」
ミゲルの言葉に首を捻る王女殿下。
「瞳の星は一度発現するともう消えませんから、ずっと使えますよね」
ミリアンヌがシンシアの瞳を下から見上げている。
聖王ミゲルや聖女ミリア程数は多くないが、ラピスブルーの瞳に確実に金色の星が浮かんでいるのが見える。
「うーん? 嬉しいのだけど何でかしらねメルちゃん?」
白猫が首を傾げて、
「何かを守りたい、慈しみたいという心が神聖魔法の発露のきっかけになる事が多いですから、そのような気持ちになられるような心境の変化等があったのでは?」
今までシンシアは引き籠もりで、外交に出るような事は、ほぼ無かったと言える。
いつも安全で護られる場所で、ぬくぬくと過ごしてきたと言えるかもしれない。
守られる事に慣れてしまうと『何かを守らなければ』『誰かを助けなければ』という事には思い至らないものだ。
眼の前の青年達のあまりの酷い扱われように、シンシアの中に『憐れみ』と『慈しむ心』が動かされ奇跡が起きたのだろう。
『私は頭でっかち過ぎて、余りにも『心』を使っていなかったのね・・・』
本で得られる知識とは違う、『何か』が自分を変えてくれた。
――それが『経験』なのだろう。
心を動かされる出来事、心が震えるような気持ち・・・
今までフリージア城から殆ど出なかった自分に足りなかった心に響く実感のこもった体験。
それを得られた事が、今回の交換留学で赴いたトリステス帝国での一番の成果かも知れない、と思いながら視線を皇帝陛下に向けるシンシア。
『ああ、この方も。私の心を揺さぶる方ですわね』
そう思い満面の笑みをその美しい顔に浮かべる王女。
「どうかしたか? 俺の女神」
シンシアの手を取りその甲に口付けを落とす。
「いいえ、何でも御座いませんわ。さあ、帰って後始末をしなくてはいけませんわね。ハイドランジアの国民も帰って来ましたしね」
そう言って、黒いマントを着たままの3人に視線を送る。
3人は恭しく跪いた。
「それでは全員、一度紅の離宮に転移いたしますので、そのままお待ちくださいませ」
白猫メルヘンが貴族の礼を恭しく厳かに行うと、金色の魔法陣が各々の足もとで輝いた。
山小屋の中には誰一人として残る者は、居なかった。
episode1
―出会い其れは唐突にやって来る―
シンシアの真上の空間から『バリバリ』という音と共に、白い大きな猫と人が降ってきた。
「シンシア様~! 大丈夫ですか~ 助けに来ましたよお~ おっと!」
いつものミリアの呑気な声が部屋に響く。どうやら結界を壊して亀裂から飛び込んで来た様である。
「ミリアちゃん! 陛下まで!」
白猫の尻尾を掴んだまま、天井付近の空間から、イケオジ陛下も降って来た。
「シンシア殿! 御無事か!」
「おーい、シンシア大丈夫か?」
緊張感は全く無い面々である・・・
3人の元奴隷達は口をポカンと開けて、天井から降ってくる3人と1匹を眺めていた。
××××××××××
「結界を内外で違う者が張ってたらしいから、来れないかと思いましたわ」
ミリアに抱きつかれて、グリグリされている王女殿下。
「あのような薄っぺらい結界など、吾輩にとっては無いも同然で御座います。王女殿下の御身に何も無かったようで安心致しました」
普段のサイズに戻ったメルヘンが後ろ脚で立ち上がると恭しくお辞儀をする。
「しかし、シンシアの神聖魔法がここに来て発現するとか、思いもしなかったな」
「私も驚いてるわよ。なんでかしらね」
ミゲルの言葉に首を捻る王女殿下。
「瞳の星は一度発現するともう消えませんから、ずっと使えますよね」
ミリアンヌがシンシアの瞳を下から見上げている。
聖王ミゲルや聖女ミリア程数は多くないが、ラピスブルーの瞳に確実に金色の星が浮かんでいるのが見える。
「うーん? 嬉しいのだけど何でかしらねメルちゃん?」
白猫が首を傾げて、
「何かを守りたい、慈しみたいという心が神聖魔法の発露のきっかけになる事が多いですから、そのような気持ちになられるような心境の変化等があったのでは?」
今までシンシアは引き籠もりで、外交に出るような事は、ほぼ無かったと言える。
いつも安全で護られる場所で、ぬくぬくと過ごしてきたと言えるかもしれない。
守られる事に慣れてしまうと『何かを守らなければ』『誰かを助けなければ』という事には思い至らないものだ。
眼の前の青年達のあまりの酷い扱われように、シンシアの中に『憐れみ』と『慈しむ心』が動かされ奇跡が起きたのだろう。
『私は頭でっかち過ぎて、余りにも『心』を使っていなかったのね・・・』
本で得られる知識とは違う、『何か』が自分を変えてくれた。
――それが『経験』なのだろう。
心を動かされる出来事、心が震えるような気持ち・・・
今までフリージア城から殆ど出なかった自分に足りなかった心に響く実感のこもった体験。
それを得られた事が、今回の交換留学で赴いたトリステス帝国での一番の成果かも知れない、と思いながら視線を皇帝陛下に向けるシンシア。
『ああ、この方も。私の心を揺さぶる方ですわね』
そう思い満面の笑みをその美しい顔に浮かべる王女。
「どうかしたか? 俺の女神」
シンシアの手を取りその甲に口付けを落とす。
「いいえ、何でも御座いませんわ。さあ、帰って後始末をしなくてはいけませんわね。ハイドランジアの国民も帰って来ましたしね」
そう言って、黒いマントを着たままの3人に視線を送る。
3人は恭しく跪いた。
「それでは全員、一度紅の離宮に転移いたしますので、そのままお待ちくださいませ」
白猫メルヘンが貴族の礼を恭しく厳かに行うと、金色の魔法陣が各々の足もとで輝いた。
山小屋の中には誰一人として残る者は、居なかった。
episode1
―出会い其れは唐突にやって来る―
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