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1 昔々
しおりを挟むそれはそれは仲の良い伯爵夫婦がいた。
彼らの間には一人娘がおり、2人は殊の外この娘を溺愛していて田舎にある伯爵領の中だけで大切に育てていた。
家族仲も良好、領民たちからも慕われる領主一家だった。
娘が15の歳に王城から社交界デビューのための夜会の招待状が届いたが、これに伯爵一家は欠席の届けを出し王都には現れなかった。
この国のデビュタントは、15歳以上ならいくつになっても参加できる。寧ろ辺境近くの領地の者なら辺境伯の主催する夜会で社交界デビューをする者も多いのが普通なので、王家も気にはとめもしなかった。
彼女が18歳になったその年、この国では成人と認められ婚姻出来る年齢になって初めて彼女は辺境伯の城で行われる年始めの夜会に出席した。
豪奢な黄金の髪、美しい湖のような蒼翠の瞳は美しいアーモンド型をしていて、真直ぐにすんなりと通る鼻筋の先に小さいが形の良い鼻梁。
その下に続く唇は薄く紅を引いたようにぽってりと愛らしく艶めいている。
透き通るような白い肌は外に積もる新雪より美しく輝くようで、デビューのために誂えた白いドレスはシンプルで宝飾品もさりげない質素なものであるにも関わらずその場にいた誰よりも光輝いており、夜会の出席者は老若男女関係なく、彼女の美しい姿に釘付けになった。
娘は主催者である辺境伯当主夫妻に先ずは挨拶をし、エスコート役をこなす父親とホールでダンスを踊る。
その姿を間近で見ようと子息達の人集りができた程だったという。
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