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6 森
しおりを挟む隣国との境にある深い森は、どちらの国にも、属さず【迷いの森】として昔からこの地方で恐れられて来た。
用のない者が紛れ込むとグルグルと森の中を彷徨い必ず野垂れ死ぬと言われていて、滅多に人は近寄らない場所だった。
しかし、古くからこの地方ではこの森を【神の森】と呼んで人々が敬っていたという古文書も残っている――
その日、伯爵は妻に内緒で娘の命が助かるかもしれないという一縷の望みをかけ単身その森へ馬で向かった。
執事と屋敷の召使い達に家族を頼み、遠い森へと半日かかってたどり着いて、真っ暗な森の入口へと一歩踏み込んだ途端に目の前に藁葺き屋根と土壁の家が現れて彼は度肝を抜かれた。
「おやまあ、伯爵様。娘の命をそんなに救いたいのかい?」
女性の声が直接頭の中に響き、更に驚いた。
「賢者様、どうかお願いです娘を助けて下さい」
どこに居るかも分からない賢者に向かい彼は思わず大声で叫んだが
「あー、この娘は明日で命が尽きることになってるのう」
そう言いながら、目の前の小さな庵のドアから真っ白なワンピースを着た丸い眼鏡を掛けた少女が分厚い本を抱えて現れた。
「残念ながら、アンタの娘は助からん」
見かけは10代だが喋り方は年寄りのようで年齢がさっぱり見当のつかない彼女は丸眼鏡を頭の上に掛け直すと
「寿命が決まっとるからな」
そう言いながら、手に持っていた本を放り投げる。
それは地面に落ちる前に霧のようにぼやけて消えてしまった。
「そんな・・・たった1人の娘なのです、妻も私もあの子を失う位なら一緒に死んだほうが幸せです・・・」
彼はガックリと地面に膝をついた。
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