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53 逃げていたのは貴方です
しおりを挟む「ああ。そのままだと伯爵夫妻と同じ時間軸では生きてはいけなくなる。瞳の色を元に戻せば緩やかに人として生きていける身体に戻っていくんだ」
彼が少し寂しそうな顔になったと思うのは、アリアの欲目だろうか? 彼女は首を傾げたが、それは何故そんな事を聞くのだという意味だった。
「何で今更そんな事を聞くの? 私はずっとキアンのお嫁さんになるって決めてたのよ? 逃げてたのは多分キアンの方よ?」
アリアの気の強そうな蒼翠色の目が彼を見上げてキラキラと輝く。
「・・・そうだな。俺が長い事生きてるのに飽きちまったから後ろ向きなんだろうな」
「飽きちゃったら、2人で眠っちゃえばいいのよ」
「え?!」
驚くキアンにニコリと鮮やかに微笑むアリア。
「黄昏の狭間で2人で一緒ならきっと安心でずっと眠っちゃうわね。今度はきっと起きるのが嫌になるのよ? で、眠るのに飽きたら又起きたらいいのよ。簡単でしょ?」
クスクスと笑うアリア・シルフィールドはこの世で1番美しい自分だけの女神だ――
キアンは本気でそう思った。
曲が終わり優雅にお辞儀を互いにすると、次の曲が又流れ始める。
この国では社交の場で2曲以上を続けて踊る男女は、互いに婚姻の意思がある事を周りに周知させる行為であるが、キアンが其れを知っているかどうかは謎である・・・
2人は互いに手を取り合い、曲に乗せ自然と体を動かし始める・・・
「やっと見つけたよアリア嬢」
いきなりアリアの肩に馴れ馴れしく置かれた白い手袋に覆われた手は、勿論あのチャラ・・・顔のイイ第2王子フィリップ殿下だ。
ダンスを続けようとしたキアンとアリアは動きを止めた――
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