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転生悪役令嬢はダサいのがお嫌!!
41 最終話 過去からの贈り物
しおりを挟む砂浜に打ち寄せる波打ち際で海の上に浮かぶ白い雲を見ながら佇む、美しい男女の姿。
妻の白い肌が日に焼けないよう細心の注意を払い、夫が白いレースの日傘で陰を作り、彼女の肩を抱いて自分に引き寄せた。
「ちちうえ、ははうえ~」
金色のフンワリした巻き毛を海風に煽られながら、菫色の瞳をした小さな男の子が走ってくる。
後から侍従が慌てて追い掛けているが、本人は全く気にしていないようだ。
「あのね、コレ」
小さな菫のブーケを差し出した。
「綺麗ね。どうしたの?」
女性が差し出されたブーケを受け取ると金色のサテンのリボンが風に靡いた。
あれから、六年経った。
アーレスはイリスと夫婦になった直後に三年は後継者を作らない、といきなり貴族院議会で宣言した。
それまでこの世界の王族は婚姻後一年以内に後継者を作らないと側室を勧められたり、公娼を持つ事を進言されたりするのが普通であった。
それ故に、彼の発言は貴族院で物議を醸す事になったが結局は認められることとなった。
王国各地にある産院や民間の産婆、乳母の経験者達から統計を取り、十代の女性のお産は早産や難産、死産になる可能性が高く、しかも母体となる女性も死の危険性が非常に高いことを示す資料を彼自らが集め、議会に提出したからである。
『君とそっくりな天使が、調べろって言ったのさ』
その事を聞くと彼はいつもそう言う。
『君を失いたくなければ2年以内に死ぬ気でやれ、とね』
そう言いながら綺麗なウィンクをいつも寄こし、イリスに口付けをするのだ。
宣言の通りに4年後にしっかり世継ぎの種を仕込んだ王太子を、まあ、あんだけすりゃあ畑も開発済みでしょうから百発百中ですよね~、と王太子夫妻の側付き達が、彼を生温い目で見ていたのは王宮の極秘情報だ。
「コレは~、ははうえがくれたの~」
「?」
「おんなじかおでね~、ボクのははうえにわたしてねっていうの」
「同じ顔?」
「うん、それでね、しあわせ? ですか、だって」
イリスはすぐ横で日傘を差し掛けている、アーレスを振り返る。
彼は海のように青い目を瞬かせ
「ライオス? 母上にそっくりな人の背中に白い羽根が生えてなかったかな?」
と、日傘を側に控えていた侍従に預けて息子を抱き上げる。
ライオス王子は抱き上げられたのが嬉しくてきゃっきゃと笑いながら
「うん。こーんなおっきなの」
両手を精一杯広げて見せた。
「ああ。そうかやっぱり」
アーレスは、肩によじ登ってきゃっきゃと喜ぶ息子を片手で押さえながら妻を振り返える。
「以前に夢枕に立ったという天使様?」
「そう、多分君の母上」
アーレスはニコリと微笑むと、驚いた顔のイリスの肩をそっと抱き寄せて額に口付けを落とした。
「あ~、ちちうえぼくも~」
ライオスが、母のイリスの頬を両手で押えながら、彼女の鼻の先にチュッとリップ音をさせて、かわいいキスをした。
「あ、こら。俺の嫁さんだぞ」
「ボクのははうえだよ~」
「・・・二人共、別荘に帰りましょうか」
侍従が暴れるライオスを避けるようにイリスに差し掛ける日傘をアーレスがシレっと引っ手繰って、代わりに息子を侍従に押し付けた。
「息子にヤキモチですか?」
呆れ顔のイリスに向かって
「当たり前だ。俺の妻だ」
と、ウィンクをするアーレス。
甘やかす侍従の首にぶら下がりながら楽しげにケラケラ笑う息子を見ながらイリスは、
「幸せよ」
とアーレスの頬に口付けた。
『 転生悪役令嬢はダサいのはお嫌!』
ー了ー
by. hazuki.mikado
2022.9.30.fri.
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