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63 サーシャ視点④
しおりを挟む私と入れ違いになったんだろう。
王子様は既にその場には居なくて多分殴られたほうの頬を抑えて先輩がボンヤリ立っていた。
ハンカチを差し出すと、榛色の目が大きくなってぎょっとしたのが判った。
――へ~、こんな色の目だったんだ。
近くで顔を見たのは2度目だったけど初めてマトモに正面から見た気がする。
喧嘩でもしたのかと聞くと言葉を濁されたので、多分聞かれたくないんだろうなぁ、と思いながら
「早く仲直りできるといいね」
と、当たり障りのない言葉しか掛けられなかったけど、センパイは頷くだけ。
素直にハンカチを受け取って頬を冷やすと『イテテ』という呟きが聞こえたので顔を見上げると口の横に血が滲んでる。
救護室に行くのを勧めて背中を押すと素直に歩き出す。
ん~、この人凄く素直な人なんだな、とその時何となく思った。
後日、図書館の入り口で立っていた先輩にリボンの付いた紙袋を渡された。
「君に借りたやつは血がついて汚れてしまったから」
礼を言って紙袋の中を覗くと、質のいい綿の白いハンカチだった。
もうひとつ、小さな紙袋が中に入ってて家に帰って開けて見るとキャンディがいくつか入ってて・・・
――ま、あの人達から見れば初等科なんか子供だろうし、妥当なお礼なのかな? でもラッキー。
そう思いながら、口に放り込んだら美味しかった。
――おお、高級品!
図書館に通う日課はその後も続き、先輩とも毎日顔を合わせたけど何も話すことはなく、視線が合えば互いに目礼をする。
途中でキラキラ王子様と言い合いながら勉強をしてるのも見掛けたけど、殆ど1人で難しい顔で何かを調べる先輩を見続けた。
――しっかしカッコいいよなあ~、私もあんなふうに生まれてたら騎士になれてたよねえ・・・
気がつけば全校一斉の卒業式の日になっていて、壇上で答辞を述べる先輩の堂々とした姿に感動しながら拍手した。
友人と一緒に渡り廊下を歩いてく時に先輩を見かけたので声を掛けたら、キラキラ王子様も一緒にこっちを向いて、周りの友人達が小声でキャーキャー言ってた。
この2人ちゃんと仲直りしたんだな、とその時実感した。
だって2人共いい笑顔だったから。
――うん、やっぱ男は拳で友情を語るんだね。本に書いてあった通りだった。
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