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64 サーシャ視点⑤
しおりを挟む騎士科への道は家族揃って猛反対され、仕方なく他の進路先を考えたけれど、結局将来を見据えて商業学科に進んだ。
この国に限らず、周辺諸国もどんどん経済状況が変わって工業科が進んでいる。
今迄の王政だってきっと経済界次第でいくらでも変わっていくだろうと、大っぴらには言わないが商業学科では囁かれていた。
蒸気で走る汽車も普通になった。
蒸留酒で走るという馬無しの車も、もうすぐ取り入れられるだろうって言われてる。
電気が普及し、電信技術が広がって電話も普及し始めてる。
交換手という今まで無かった職業も産まれた。
でも、急に経済界が変化し始めたのは海外進出をし始めた商人が立役者であって、国ではない。
国を富ますために商人達は様々な提案をしたり、職人と一緒になって商品開発したり、役に立つモノを輸入をしたりする。
国はそれを許可するだけだ。
戦争で利益を得るのは昔のやり方。
これからは貴族じゃなくて商人や技術者達が国を変えていくだろう。
国自体の今までの考え方を大きく変えさせたのが、6年前我が校を卒業して行ったエイダン・オルコットだと学園では教えられた。
ポケットの中のハンカチはその『英雄』のくれたお守り。
そして私は彼が会長を務めるオルコット商会に難関を突破して入社した。
憧れの人は相変わらず真面目そうで。
そして笑わない人になってた。
元々あまり笑わない人だったけど、偶に微笑んだりキラキラ王子の前では笑ってた気がするんだけど・・・
「え? 会長が男色家??」
「そうなのよ、コレ見て」
隣の席のゴシップ誌大好き事務員さんが嬉々として見せてくれた新聞には、眼鏡の温和な秘書さんと会長が愛人関係にあるらしい云々と書かれていた・・・
えぇー、秘書さんより元奥さんとの仲の方があり得るんじゃない? と首を捻ったが口には出さずに黙っておいた。
だって、ねえ。
人の事は分かんないからさ。
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