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しおりを挟む顔が赤いまま続けるサーシャ嬢。
「え~っと、その。私も会長の夢を見てたわけで・・・」
「あ、そう言ってたな」
「でもそれ最近になって夢が変わっちゃって。昔は図書館で本読んでるだけだったんです。先輩は勉強してて。それが最近になって会長室だったり、応接室だったり、場所が変わって会話も出来ちゃって」
「え、会話?」
「この前から今の会長に姿が変わってしまっていきなり喋り出してビックリしてます」
「え? 俺の夢もだ。君が秘書になってから図書館じゃなくなって、急に喋り始めたんだ」
「「・・・・」」
不思議な偶然? 2人共似たような夢を見てたんだ・・・
ああ。じゃあアレもひょっとしたら?
「なぁ、ちょっとだけ試してもいいか?」
「?」
俺が差し出した手に不思議そうな顔をする彼女。
「手を載せてくれるか?」
そっと自分の大きくてゴツい手の上に載せられる、艶のあるグローブをはめた指先を眺める。
――アディと何かが違うんだ。
「なんだか・・・ 懐かしい?」
「え?」
そう、今日彼女をずっとエスコートしていて判った事。
何だか懐かしいと、ずっと感じてたんだ――
「何かが違うんだ。今までと」
「・・・安心する? ホッとする?」
首を傾げたままで赤く染まっていた顔色が徐々に元に戻っていく彼女を見てた。
「ああ。それに近いかもな」
何故かは分からないけれど。
「ほら」
片手だけでなく両手を繋いでみる。
「・・・何だか気持ちがいいです」
冬の日溜まりで眠る猫みたいな顔だと思った。
「俺もだ。こうやってるのが当たり前みたいに感じる。親や兄弟でも感じたことがない、不思議だなこんな事初めてだ。」
「実は私もです・・・」
困ったな。
手を放したく無いんだが・・・
満天の星の下。
幻想的な灯りが辺りを照らしていて。
やっぱり夢の続きをぼんやりと見ているだけのような気がして―― 妙に現実感が無くて、ふわふわした気分になる。
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