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99* サーシャ視点⑪
しおりを挟む「会長にお客様です」
会長室で資料整理をしていると、いつもの男性社員がやってきた。
「面会の予定はありませんが?」
チャーリーさんが、片方の眉を上げて手元の予定表をちらりとみたのが判った。
最近知ったけど、チャーリーさんは予定外に起こる出来事に関して非常にシビアだ。
「バーンスタイン侯爵夫人なので・・・」
会長の元奥様かぁ~。
1階の会長室で見た鮮やかな赤い髪の美人を思い出した。
彼女はウチの商会の新しい事業の責任者だし、宝飾部門のイメージモデルだから会うんだろうな~・・・
案の定チャーリーさんが隣の社長室にいる会長に知らせる為に出ていった。
その後でお客様にお茶を出しなさいと言われ、仕事を途中で止めて2階の応接室近くにある給湯室で湯が湧くのを待っていると、何だか廊下がザワザワし始めたのに気がついた。
荷物でも届いたかなと呑気にティーセットをワゴンに乗せていると、おかしな事にあの冷静なチャーリーさんの声がする?・・・
「ベイリー嬢ッ!」
え? 慌てて廊下に顔を出すと、腰にチャーリーさんが掻き付いたまま金髪碧眼の男の人が此方に向かって歩いてくるのが見えて驚いた。
「ヒエぇッ・・・」
チャーリーさんが止めようとしているらしい男性はネクタイはしてないし、開襟シャツの前はボタンが止まってなくて肌が見えてるし、辛うじてズボンはちゃんと履いてるけどよく見たら革靴が・・・ 片方が黒、片方が茶色って今の流行りなのかな・・・ 絶対に違うよね?
ひょっとして変質者ッ?!
「ベイリー嬢! 早く応接室に行って会長にお客様だと伝えるんですッ! 早くッ」
お客様なのッ?!
思わず黙ったままコクコクと頷くとワゴンを放り出して応接室に急いで走って行き、中にいた会長に来客を告げた。
秘書って大変な仕事なんだな。
私チャーリーさんに比べたら力はないと思う・・・。
でもお客様もせめてシャツのボタン位はちゃんとはめて欲しい・・・
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