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97 サーシャ視点⑨
しおりを挟む「こ、この本の量は何でしょうか?」
翌日会長室に初出勤後、第1秘書であり直接指導をしてくれる立場にあるチャーリーさんに挨拶をした後で荷ほどきを命じられてから黙々とダンボールを開けていたのだけれど、出るわ出るわ開けども開けども本の山。
外国の言葉で書かれた物から、国内向けに書かれたものまで一体何冊あるのか全く分からない。
「会長は、気がつくと片手に書籍を持ってるような方ですからね・・・」
何か、眼鏡の奥の瞳に光がないような気が・・・
「全てビジネス書です。貴女も読みたいものがあれば持ち帰って良いですよ」
「えッ? いいんですかッ!」
「ええ。ちゃんと返してくれさえすれば。会長は一度読むとほぼ頭に入ってしまうようなので普段の業務で必要とすることは無いですから。むしろ私が使うことが多いですね。なので私に言ってくれさえすれば許可しますよ」
こちらを向いた時は普通の表情だった。
見間違いだったのかな?
「よ、読みたいですッ!」
「はいはい。でも本棚に整理して列べてからですよ。今まで箱入りのまま置いてあったものもここなら本棚に置けますからね」
・・・あの、1階の狭い部屋の荷物ってコレだったのか。本に押し出されて机がはみ出した? 凄い。
「ハイハイ、さっさと出してください。私も手伝いますから」
チャーリーさんが手をパンパンと叩くのを合図に、止まっていた手を動かしていると、ドアが突然開いたので驚いて振り返ると会長が開いたドアの向こうで、こちらを凝視していた。
「おはようございますッ!」
大慌てで立ち上がり、思わず大声で挨拶しながら敬礼してしまった。
「今日付けで、会長付きの第2秘書に抜擢されたサーシャ・ベイリーですッ。宜しくお願いしますッ」
なんか緊張して、いつも以上に大声になってしまったのに気が付き、横を見るとチャーリーさんが耳を塞いでこちらを睨んでいたので、首を傾げてしまう。
「ベイリー嬢、声が大きすぎッ」
チャーリーさんに怒られてしまった・・・
会長は・・・ 苦笑いをしながら頷いていた。
いいなぁ、この人苦笑いでも優しそうに見えるんだ。
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