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136 領主
しおりを挟む「やあ、これはこれは・・・」
ダンスを続ける俺達の元にやってきたのは例の鉄道を延長する予定地の領主だった。
別に領地貴族だから出席していても不思議では無いが、ちょっと話題の人物に鉢合わせするとは思っても無かったので実は驚いた。
顔には全く出ないが。
元々無愛想で良かった・・・。
「オルコット会長には常々お会いしたいと思っておりましたの」
彼が連れているパートナーは妻なのだろうか?
伯爵位の割には2人共に綺羅びやかな衣装だな、と冷静に見つめる。
「こんばんは、ご夫妻揃ってお会いするのは初めてでしたか」
俺の記憶ではこの女の顔に見覚えはないぞ?
この領主の妻はもっと地味で慎ましやかな細君じゃなかったか?
×××
聞けばこの男、ごく最近になって再婚したのだという。
「ここだけの話し前妻は一時行方不明になりましてな・・・。見つかったのはごく最近でして」
痛ましそうな表情を装う割には、新しい妻? に鼻の下を伸ばす中年男。
「傷心の私を支えてくれた彼女を後妻に迎えたんですよ」
この国はパートナーが5年行方知れずだと離婚が成立するが、それより早く死んで見つかったということだろうか? それとも離縁した?
実は俺の親父が母を見つけ出したのもその法律があったからだ。
親父の場合早く探し出さないといけないというより、消息をはっきりさせたかったからだが・・・ 今の母に一目惚れして結婚を急いだらしい。
――まぁ、どっちにしろこの領主の話しは俺にとっては気分の良く無い内容だな。
そう感じて多分俺は額に皺を寄せたんだと思う。
あちらが慌てて、料理の並ぶテーブルに行きましょうと誘ってきたからだ。
隣のサーシャ嬢に目配せをすると彼女は無言で頷き、遠目にダンスを踊りながら此方様子を伺うチャーリーが目の端に映った――
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