不可解部の活動記録01 File02色戦争 ~悪魔やら謎の組織が出てきて夏休みは犠牲になりそうですが、仲間と共にこの街を救います~

西東惟助

文字の大きさ
28 / 30
色戦争、その前

第28話 8月18日-3 白い来訪者

しおりを挟む
 闇の中に銀色の光が軌跡を描いていた。しばらくすると、それは金色の光を小さな花火のように散らして消えた。

 納刀の音。刀刃剣かたなばつるぎはマルコシアスの分身体を一体、斬り捨てた。まともに戦闘したのは初めてだ。やはりというかそこまでの脅威ではない。五体くらいなら斬り合える。

「学生がこんな時間に出歩くとは、感心しませんねぇ」
「何か用?」

 闇から浮かんだ白い装束の男――白騎士。その手に弓はない。青い目の紳士は微笑をその顔に浮かべている。遅い外出を本気で咎めるつもりはなさそうだ。

「いえ、お礼を言っておこうと思いましてね」

 先程の場での剣の腹芸に白騎士は気が付いていたようだった。

「言い訳を言います。通用するという確証はないというだけです。誰も試したことがないゆえに、ですが」
「不可解部の目的は地域の問題の調査と解決。それに手っ取り早く進みたかっただけ」

 騎士団と協力し召喚士を捕縛する。騎士団が来ているなら、不可解部は介入しない手もあるが、それでは多数の死傷者が出ることは明白だった。それを防ぐことのできる五木を含めた不可解部が参戦せずに被害を出すことは創設者の本意ではないだろう。その創設者には一度も会ったことはない上に、何なら顧問すらいないが。
 
「よかったのですか? 五木いつき君を騙すようなことをして」
「五木は愚かじゃない。青龍もいるから今頃事情がわかっているはずだよ」

 五木はおそらく青龍をはじめとした五獣に知恵を借りるだろう。数千年この世界を見ていた存在だ。それなりの知識と経験は積んでいるはず。もしかしたら四ツ橋よつはしの秘技とやらよりも確実な方法を知っているかもしれない。流石にこれは期待しすぎだろうか。

「話は変わりますが、剣君。君は不可解部についてどれほどのことを知っていますか?」

 白騎士はどこまで知っているのだろう。むしろこちらが不可解部について教えて欲しいくらいだ。

「……知っていることといえば、普通じゃない人間を集めている。ただそれだけ」

 そう言いながらも思う。ゴールデンウィークの陰陽五行いんよういつゆきと今回の召喚士騒動。この街で立て続けに事件が起きている。それは多い。

「誰一人、白群びゃくぐん高校が不可解部を設立したことについての詳細を知らない。しらを切っている可能性もありますが、五勢力のトップクラスにおいても同様です」

 調べて、いるのだろう。その動きはこの白騎士だけではないことは分かっていた。

 ゴールデンウィーク、最悪この列島が地図から消える可能性のあった事件。それを不可解部はたった三名で解決してしまった。他の勢力の手を借りることなく。

 五木の話を聞く限り、陰陽五行自体にはそれほどの脅威はないようだった。倒すだけなら、噂に聞く一人法師ならば半日もあれば十分だったろう。あの時点で五木にしか止められなかったあれも一人法師ならば別の解決策を用いていそうだ。

 この事件で不可解部は広く認知されることとなった、特に五木だ、先日も変なあだ名がたくさんつけられていたと嘆いていた。確かそれは今目の前にいる白騎士から告げられたはずだ。
 
 不可解部設立の目的は知らない。それでも五木は別として、剣と風名は目的を持ってあえて加わることにしたはずだ。

「でも誰かが何か目的を持って作ったことはわかるよ」

 自分の目的に考えが巡りそうになり、剣は煙に巻くように言った。

「それはわかるんですけどね。こちらとしては誰に問い詰めればいいのかもわかりません」

 白騎士は苦笑した。確かに管理者のいない不可解部だ。何か知っているとすれば校長だろうか。

 異能を集めたいというのも目的であろうことは推測ができた。剣と風名は目的達成の過程として仲間を集めたい、という点において利害は一致している。

 現状、部員は三人だが白群高校には

「なんでみんな不可解部を調べているのかな」
「一人法師、その再来にならないかという危惧があるのと、リクルート、この二つでしょうね」

 後者はおそらく騎士団の理由だろう。血統の四ツ橋。才智の学院アカデメイア。気ままな不死の暗殺者集団である四死使師しししし。そして一人法師。この四つにはリクルートする気はさらさらないように思える。

「まさか、あの戦争がまた?」

 あの戦争、一人法師の出現により起こった誰が敵で誰が味方かがわからず入り乱れ多数の死者が出た、といわれているこちらの界隈の戦争。その結果は大まかにまとめると、四勢力が五勢力となった。

 まさか、不可解部がさらなる一大勢力になるとでも? 独立勢力止まりがいいところだ。

 それにメンバーの誰にもその気はない。設立を決めた誰かはどう考えているのかわからないが、全員が決死の力を出したのなら、五勢力の一つくらいは用意しなければならないだろう。そんな自信が剣にはある。

「私のように実際にあなた方と接すればそれはない、ということはすぐわかりますがね」
「……それはどうも」

 白騎士に見透かされたようなことを言われ、少し憮然ぶぜんとした調子で剣は言った。白騎士のこの物言いは気に食わない。

「赤騎士はあなたとの再戦を望んでいますが、私としては許可できません。あなたが本気を出せば、頭を叩いて気絶程度では済まないでしょう」

 買い被りすぎだと剣は思った。確かに赤騎士との戦闘では刀刃の奥義は何一つ使用していない。ロングソード、即ち鉄を断ったのは刀刃家の者ならできて当然の技術だ。

 血を操る赤騎士が熟達すれば、名刀血斬りによる剣撃しかない自分は楽に勝てないだろう。負けるとは思わないけれど。

「そうだね。当然、あなたも」

 白騎士に視線を向けた。五勢力、その一角、一部隊の筆頭にもただで負ける気はない。

「それは、まあ。私は本当にあなたたちが敵とならないことを望んでいます。今は協力関係ですが、今後の動きによっては我々のみならず、五勢力が敵に回ることも考えなばならないということです」
「それはわかるよ。僕だってずっと殺陣たてを演じていたいわけじゃないからね」

 この胡散臭い白騎士――確か五木はおしゃべり紳士、と呼んでいたか。彼とも召喚士征伐までだ。無事終われば自国へ帰還するのだろう。

「何度か言っていますが、当日はよろしくお願いします。まだいつかはわかりませんが」
「言われなくとも」

 白騎士は闇に溶けるみたいに、まるで最初からいなかったかのような感触を残し立ち去った。

 やはり侮れない、そう思いながら剣は足を動かした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...