最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語~♡♡♡

ゆきちゃん

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14 王子は誘惑される2

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 予想もしなかったハプニングに、会場は一瞬シーンとなった。

 さらに時間が経つにつれて、観客達は気がついた。



 試合場に上がっている1人の男の子は、世界中で恐れられている暗殺集団の中で将来を期待され、集団の過去の長い歴史に現われた、伝説の先人達を超える戦いの才能をもつと言われていた。



 そして、準決勝まで勝ち上がってくる間の試合では、各国から選ばれた最強の選手達を少しも苦戦することもなく退けていた。



 その男の子がもう1人の男の子に戦いをしかけることもできなかった。

 構えて相対しただけで、完敗の気持ちを示し木剣を捨てた。



「おい、冷酷な暗殺集団に属している男の子が、戦う前から自分の負けを認めたぞ、あり得ない! 」

「確か絶対の不文律があるはずだ! 神聖の力をまとう英雄には命をささげるそうだぞ! 」



「あのゴード王国の王子は、英雄の気質をもっているのか! 」

「この世に起こると言われる災厄と戦い、それに勝ち人々に幸せをもたらすのか! 」



 観客の興奮した話し声がだんだん多くなり、やがて試合場は大歓声に包まれた。



 アーサーはひざまずいているシンに近づき、手を伸ばして体をその体を起した。



「僕はラッキーでした。君と真剣に戦ったら、勝てるかどうか難しかったです。」



「いえ、王子様。絶対に負けていました。御自身の絶対的な強さの気づかれていないのですか? 」



「実は、自分が強いとは少しも思っていません。いつもびくびくしているのですよ。この世界は無限大に広く、君のように強い存在がいます。ぎりぎりの戦いで勝てないかもしれないと――」



「そんなふうにお考えになっているのですか。王子様がどのような方かよくわかりました。誠に突然でぶしつけですが、お願いごとを申し上げて良いのですか。」



「かまいません。僕にできることでしたら。」



「ありがとうございます。私の属している暗殺集団でのおきてでは、英雄にお会いした時は英雄に従い、それからの一生命をささげなければなりません。私を是非配下にお加えください。」



「はい!!! 」



「えっ!!! とてもうれしいのですが。そのように二つ返事で良いのですか。」



「僕としては、あなたの能力に最大限の敬意を表しなければなりません。」



 2人で何を話しているのか全く聞こえなかったが、試合場のそばにいたララはいらいらしていた。

 自分の試合以上に観客が引き込まれ、興奮のるつぼになっていたからだ。



(運がいいだけのバカ王子。きっと、あの暗殺集団の男の子もゴード王国に就職したかったのね。見てらっしゃい、次の決勝線では私が華麗にバカ王子をたたきのめすから。)







 少しの時間を開けて決勝線が始まろうとしていた。



「今から、今年度武芸大会の決勝戦を行う。ゴード王国のアーサー、ロンバルディア王国のララ、試合場に上がるように―― 」



 観客達は最高に盛り上がった。

 理由は違うが、既に2人は観客達を最大限に興奮させていた。



 試合が始まった。

 ララは今までとは違った戦法で、積極的に攻撃に出た。



 彼女が打ち込む木剣はさまざまな角度から、勢いを微妙に変えて打ち込まれていた。

 その攻撃をアーサーはたくみな体術だけで全て避けきっていた。



 ララは、スローモーションのコマ送りのようにアーサーの動きを見ながら分析していた。

(私が剣を打ち込む動作をぎりぎりまで待って、鋭く反応している。 )



 彼女は木剣を打ち込むのを止めて、アーサーから少し距離をとった。

「ばか王子。剣を振らないなんて、やはりあなたほんとうは弱いのね。ふふふふ 」



 挑発されたアーサーの反応は意外だった。

「そのとおり。僕は弱いのです。」



(怒らないなんて。普通の人間ではないわ。)

 その後、ララは決心した。



 ロンバルディア王国の騎士長を代々勤める彼女の家に伝わる秘密の剣技、「イエロージャケット(スズメバチ)のひと刺し」を使おうと思った。



 そう思った瞬間、ララは木剣を体の後ろに隠して最大限の速さでアーサーに突進した。

 そして、ぎりぎりの瞬間でアーサーに向かってジャンプして、木剣の突きを入れた。



 彼女の突きは、人間の中で最も守りにくい心臓を目指して伸びていった。







 ところが、

 ララの木剣は、斜めに振られたアーサーの木剣で振り払われた。



 アーサーの剣の一撃はとてつもない勢いを持っており、ララの剣をはるか遠方にはじき飛ばした。



 審判から試合の終了が告げられた。

 アーサの勝利だった。



 すると、アーサーが右腕を抱えてその場にうずくまった。

「いた―い、いたいた―― 」



 会場のそばに控えていたシンがすぐに試合場に上がってアーサーに駆けよった。

「王子様。ものすごい無理をなさいましたね。失礼! 」



 そう言うと、シンはうずくまるアーサーの後ろに立ち、痛がるその腕をしっかりと両手でつかんだ。

「激痛ですよ。」



 そう言うと、はずれていたアーサの右腕の関節を入れた。

「いた!!!!!! 」



「ありがとう。シン、入ったようです。」



 気がつくと、ララがアーサーに近寄っていた。



「王子様。無理矢理剣の軌道を変えなければ、腕の関節が外れることもなかったのに―― 」



「あのまま最後まで振ると、ララさんのお顔に剣筋がかすってしまうことがわかりました。それはできません。」



 そして、くせっ毛と大きな目のかわいらしい子供は続けた。



「実は僕もエメラルド姫のファンなんです。ゴード王国の市場で売られた肖像画を買いました。」



 ララの緑色の瞳は光りを帯びてアーサーを見つめた。
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