64 / 108
64 暗黒騎士に征服された国があった2
しおりを挟む
転移してすぐ、クラリスとメイが感じた。
クラリスがアーサーに言った。
「アーサー王子様。この国には魔族の気が充満しています。たぶん、人間の数より多いでしょう。」
季節はちょうど良く、それに天気は快晴で日の光が優しく町の中を照らしていた。
4人は周囲を注意して確認したが、通行人が全くいなかった。
アーサーは思い出した。
「ここはフラン王国です。そして今私達がいるのは、たぶん首都であるバリ城塞都市でしょう。」
メイナードも想い出した。
「フラン王国は、私達の国、ゴード王国に攻め込んできた敵国ですね。王子様は早くお気づきになられたのですね。」
「はい。戦いが終わった後、講和条約を結ぶために派遣されました。かっての敵国とはいえ、魔族がそんなに多くいるとは大変心配です。人間が虐待され、しいたげられている可能性があります。」
クラリスは魔眼でバリ城塞都市の中を詳細に調査した。
すると、驚くべきことがわかった。
「大変です。このバリ城塞都市の中には魔族しかいません。約10万人ほどでしょうか。人間世界の太陽の光を魔族は大変きらいますから、今は外に出ていないと思います。早くこのバリからでなければ! 」
ところが、騎馬の集団の音が聞こえてきた。
あっという間に、アーサー達4人は約100人の騎馬に囲まれていた。
馬に乗った騎士達は、みな黒金のような金属で作られた甲冑を着ていた。
兜の面はフルフェイスで完全に顔をおおっていた。
その一番前を進んでいた騎士が馬から降りた。
「おやおやおやおや。さすが俺。やはり、英雄と魔女様御一行はここバリ城塞都市に転移して来たか。この都市の中を全て魔族にすれば、転移して来た瞬間もすぐわかると思ったが図星だったな。」
そう言った後、その騎士はフルフェイスをはずして自分の顔を外に出した。
完全に人間の顔だった。
年は50歳代くらいだろうか。長い髪の毛を後ろに束ね、小さいが鋭く光る目線でアーサー達を見た。
「あなたは暗黒騎士か。」
アーサーがたずねた。
「現世の英雄か。確か名前はアーサーとか言ったな。それでは自己紹介しよう。私は暗黒騎士、唯我独尊のソウヤだ。そういえば歴史に刻まれて別の名前もあったな。『英雄殺し』とも呼ばれている。」
アーサーはその名前を聞いたことがあった。
家庭教師であったショウが幼い頃の彼に教えてくれた。
「アーサー様が神によってこの世に生みさだれた英雄だとすると、きまぐれな神は、必ず反対の存在も生み出すはずです。それは英雄を上回る力をもち、英雄がなかなか超えられない存在なのです。」
「ショウ。それは誰なの。」
「英雄が戦う場面にならなければ、それが誰であることはわかりません。ただ、もし名前が付けられるとしたら……『英雄殺し』と呼ばれるでしょう。」
「英雄はどうすればいいの? 勝てるの? 」
「アーサー様。負けるかもしれません。しかし、その後に勝つことを目指すのですよ。人間の人生はみな同じですよ。必ず『英雄殺し』のような存在は目の前に現われます。楽しみですね―― 」
そう言ったショウは、少し微笑んでいた。
幼いアーサーにはショウがなぜそこで微笑んだのか、全くわからなかった。
実は今になってもわかっていなかった。
現実に自分の目の前に「英雄殺し」が現われ、アーサーは緊張した。
横にいたクラリスはそのことを感じとった。
「アーサー様。転移魔術でここを待避しますか。」
「クラリスさん。その必要はありません。それに『英雄殺し』は私がここから逃げるのを許さないでしょう。」
アーサーはソウヤの方を見て言った。
「ソウヤさん。私はあなたと戦わなければならないようです。」
「そうか。案外理解力が高い英雄だな。」
100人いた騎士達が下馬し、アーサーとソウヤを取り巻くように輪を作った。
「クラリスさん、メイさん下がってください。危なくない場所で見ていてください。メイナード、これは1対1の戦いですから手助け無用です。」
2人は輪の中にできた空間の中で対峙した。
両者が剣を抜いた。
しかし、達人どおしの戦いは、構えたまま動かなくなった。
アーサーとソウヤは全く動かなかったが、実は思考の中ではお互いに素早く動きながら剣を交えていた。
しかし、何回も何回も剣を交えたが思考の中では決着がつかなかった。
そのうち、ある変化が起きた。
アーサーとソウヤの回りを取り囲んでいた騎士のうちの1人が、偶然に真剣に戦いの様子を見ているクラリスの姿を見てしまった。
(美しい! この世のものではない美しさだ!
その騎士は一目見て、クラリスのとりこになってしまった。
そして、引き寄せられるようにヨロヨロとクラリスに歩いて近づき始めた。
戦いの行く末を真剣に見ていたクラリスは、自分に近づく騎士に気がつかなかった。
そして、メイやメイナードも同様だった。
最後にその騎士はクラリスのすぐそばまで来て、あろうことか、彼女に抱きつきキスをしようとした。
「キャ―― 何をするのですか!!! 」
クラリスの大きな悲鳴を上げた。
その瞬間――
アーサーには大きな動揺が走り、構えに大きなすきが生じた。
反対に、ゾーンに入ってアーサーの動きを監視していたソウヤはそれを感じた。
人間として剣の達人であったソウヤは、暗黒騎士になったことで瞬間的に驚異の速さで剣を振るうことができた。
アーサーは天から受けたギフトである反応速度と直感で、ソウヤの剣を自分の剣で受け止めようとしたが、ほんの一瞬遅れた。
その結果、ソウヤの剣はアーサーの甲冑の銅と腰のつなぎ目にかなり強い一撃を与えた。
精一杯の回避でアーサーの体には直接剣が届かなかったが、ソウヤの剣がかなりの衝撃を与えた。
アーサーはその場に倒れ、全く動かずピクリともしなかった。
クラリスがアーサーに言った。
「アーサー王子様。この国には魔族の気が充満しています。たぶん、人間の数より多いでしょう。」
季節はちょうど良く、それに天気は快晴で日の光が優しく町の中を照らしていた。
4人は周囲を注意して確認したが、通行人が全くいなかった。
アーサーは思い出した。
「ここはフラン王国です。そして今私達がいるのは、たぶん首都であるバリ城塞都市でしょう。」
メイナードも想い出した。
「フラン王国は、私達の国、ゴード王国に攻め込んできた敵国ですね。王子様は早くお気づきになられたのですね。」
「はい。戦いが終わった後、講和条約を結ぶために派遣されました。かっての敵国とはいえ、魔族がそんなに多くいるとは大変心配です。人間が虐待され、しいたげられている可能性があります。」
クラリスは魔眼でバリ城塞都市の中を詳細に調査した。
すると、驚くべきことがわかった。
「大変です。このバリ城塞都市の中には魔族しかいません。約10万人ほどでしょうか。人間世界の太陽の光を魔族は大変きらいますから、今は外に出ていないと思います。早くこのバリからでなければ! 」
ところが、騎馬の集団の音が聞こえてきた。
あっという間に、アーサー達4人は約100人の騎馬に囲まれていた。
馬に乗った騎士達は、みな黒金のような金属で作られた甲冑を着ていた。
兜の面はフルフェイスで完全に顔をおおっていた。
その一番前を進んでいた騎士が馬から降りた。
「おやおやおやおや。さすが俺。やはり、英雄と魔女様御一行はここバリ城塞都市に転移して来たか。この都市の中を全て魔族にすれば、転移して来た瞬間もすぐわかると思ったが図星だったな。」
そう言った後、その騎士はフルフェイスをはずして自分の顔を外に出した。
完全に人間の顔だった。
年は50歳代くらいだろうか。長い髪の毛を後ろに束ね、小さいが鋭く光る目線でアーサー達を見た。
「あなたは暗黒騎士か。」
アーサーがたずねた。
「現世の英雄か。確か名前はアーサーとか言ったな。それでは自己紹介しよう。私は暗黒騎士、唯我独尊のソウヤだ。そういえば歴史に刻まれて別の名前もあったな。『英雄殺し』とも呼ばれている。」
アーサーはその名前を聞いたことがあった。
家庭教師であったショウが幼い頃の彼に教えてくれた。
「アーサー様が神によってこの世に生みさだれた英雄だとすると、きまぐれな神は、必ず反対の存在も生み出すはずです。それは英雄を上回る力をもち、英雄がなかなか超えられない存在なのです。」
「ショウ。それは誰なの。」
「英雄が戦う場面にならなければ、それが誰であることはわかりません。ただ、もし名前が付けられるとしたら……『英雄殺し』と呼ばれるでしょう。」
「英雄はどうすればいいの? 勝てるの? 」
「アーサー様。負けるかもしれません。しかし、その後に勝つことを目指すのですよ。人間の人生はみな同じですよ。必ず『英雄殺し』のような存在は目の前に現われます。楽しみですね―― 」
そう言ったショウは、少し微笑んでいた。
幼いアーサーにはショウがなぜそこで微笑んだのか、全くわからなかった。
実は今になってもわかっていなかった。
現実に自分の目の前に「英雄殺し」が現われ、アーサーは緊張した。
横にいたクラリスはそのことを感じとった。
「アーサー様。転移魔術でここを待避しますか。」
「クラリスさん。その必要はありません。それに『英雄殺し』は私がここから逃げるのを許さないでしょう。」
アーサーはソウヤの方を見て言った。
「ソウヤさん。私はあなたと戦わなければならないようです。」
「そうか。案外理解力が高い英雄だな。」
100人いた騎士達が下馬し、アーサーとソウヤを取り巻くように輪を作った。
「クラリスさん、メイさん下がってください。危なくない場所で見ていてください。メイナード、これは1対1の戦いですから手助け無用です。」
2人は輪の中にできた空間の中で対峙した。
両者が剣を抜いた。
しかし、達人どおしの戦いは、構えたまま動かなくなった。
アーサーとソウヤは全く動かなかったが、実は思考の中ではお互いに素早く動きながら剣を交えていた。
しかし、何回も何回も剣を交えたが思考の中では決着がつかなかった。
そのうち、ある変化が起きた。
アーサーとソウヤの回りを取り囲んでいた騎士のうちの1人が、偶然に真剣に戦いの様子を見ているクラリスの姿を見てしまった。
(美しい! この世のものではない美しさだ!
その騎士は一目見て、クラリスのとりこになってしまった。
そして、引き寄せられるようにヨロヨロとクラリスに歩いて近づき始めた。
戦いの行く末を真剣に見ていたクラリスは、自分に近づく騎士に気がつかなかった。
そして、メイやメイナードも同様だった。
最後にその騎士はクラリスのすぐそばまで来て、あろうことか、彼女に抱きつきキスをしようとした。
「キャ―― 何をするのですか!!! 」
クラリスの大きな悲鳴を上げた。
その瞬間――
アーサーには大きな動揺が走り、構えに大きなすきが生じた。
反対に、ゾーンに入ってアーサーの動きを監視していたソウヤはそれを感じた。
人間として剣の達人であったソウヤは、暗黒騎士になったことで瞬間的に驚異の速さで剣を振るうことができた。
アーサーは天から受けたギフトである反応速度と直感で、ソウヤの剣を自分の剣で受け止めようとしたが、ほんの一瞬遅れた。
その結果、ソウヤの剣はアーサーの甲冑の銅と腰のつなぎ目にかなり強い一撃を与えた。
精一杯の回避でアーサーの体には直接剣が届かなかったが、ソウヤの剣がかなりの衝撃を与えた。
アーサーはその場に倒れ、全く動かずピクリともしなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!
カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。
その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。
「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」
次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。
彼女は知っている。
このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。
未来を変えるため、アメリアは
冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。
これは、かつて守れなかった主人のための転生。
そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。
王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
挿絵はA I画像を使用
10/20 第一章完結
12/20 第二章完結
2/16 第三章完結
他サイト掲載
(小説家になろう、Caita)
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!
飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。
貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。
だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。
なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。
その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる