最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語~♡♡♡

ゆきちゃん

文字の大きさ
67 / 108

67 暗黒騎士に征服された国があった5

しおりを挟む
 獣人に包囲されたフラン王国の師団は、鉄壁の守りを固め自分達の陣地を崩さなった。



 鉄砲や弓矢でどんどん獣人の数を減らしていき、その勢いを削いでいった。



 やがて、獣人達に異変が生じた。



 自分達の仲間の死を直前に見て、恐怖を感じ始めたのであった。



 彼らはだんだん戦線を離脱し始めた。



 その流れは最初はわずかであったが、次第に大きな流れとなり、最後は一斉に逃げ始めた。



 フランツ王国の師団は勝った。



 カール師団長は心の中でアーサとクラリスにお礼を言うとともに、今後のことについて考え始めた。



(それにしても、獣人達がソウヤ国王に集められ私達に戦いを挑んできたとは―― これでは王宮に帰れない。やはり国王は魔王アスモデウスの暗黒騎士なのか…… )







 王宮の一室で、ソウヤ国王は使い魔である黒蝶から、獣人軍団の敗戦を聞いた。



 フランツ王国で強い者を改めて選抜して構成された師団だったが、当然2倍の数の獣人軍団が勝利すると確信していた。



「はあ。もう一回いってみろ。獣人軍団は負けたのか。」



「そうです。人間達の鋼鉄楯で作った陣地を獣人達は突破できませんでした。それどころか、鉄砲や弓矢で多くの数の獣人が殺されました。」



「獣人の中でも最強のライオンやトラの種族だったのだろう。しかも兵力は10万、人間の2倍もあった。負けた方がおかしいじゃないか。」



「はい。それが、最初は人間達を大いに威嚇いかくして、恐怖を感じさせ戦いの勝利は間違いないと思われました。しかし、英雄と魔女が戦場に現われてから様子が変りました。」



「英雄と魔女!!! アーサーは生きていたのか!!! 」



「はい。英雄が人間の陣の四方で勝利の儀式を行い、そして戦場は四つ葉のクローバーの白い花で一杯になりました。」



「それだけで人間達は、体も大きく強い獣人、しかも2倍の軍勢に勝てるのか。まあいい、俺は世界最強の人間で暗黒騎士。英雄アーサーと魔女クラリスを今度はしっかりと殺す。」







 敗戦の報告を聞いた後、気分が大変悪くなったソウヤ国王は王宮の広い花壇の中を歩いていた。



 1年前、前の国王を追放し王宮で国王になった時、花壇の存在はいまいましかった。



 これまで殺伐とした人生を歩んできたソウヤには、花々の良さが全くわからなかった。



 花の存在意義は全くないと思っていた。



 しかし、今は少し違った。



(そうか。このように気持ちがムシャクシャした時、花々は心をなごませてくれるのだな。この花壇は撤去して武器倉庫を作ろうと思っていたが止めよう。)



 ソウヤ国王はそう重いながら花壇を歩いていたが、そのうち、その一画に目が止まった。







 四葉のクローバーが白い花を咲かせていた。



 驚いて足を止めると、1人の女性がそこに立っていた。



 この世界ではめずらしい黒髪が輝き、青い瞳は深海のように静かでとても美しかった。



「あっ、お前は―― 」



「お久し振りですね。ソウヤ国王。間違えました。人間を魔族に全て殺させようとしている暗黒騎士、唯我独尊のソウヤ様。あなたは強いかもしれませんが、手段を選ばない。もう人間ではなく魔族ですね。」



「俺はこの夜で最強。誰も俺に勝てないから至高の存在なのだ。」



「そうですか。人間は往々にして勘違いをする生き物なのですよ。」



「何を言いたい!!! もういい。魔女よ、アスモデウス様の尊い計画を妨げる存在。まず、お前から殺してやる。最強の俺に殺されるのは名誉だと思え!!! 」



 ソウヤは剣を抜いた。



 そして、人間離れした速度でクラリスに剣を振り下ろした。



 ところがソウヤの剣は途中で止められた。



 止めたのは剣だった。



 ソウヤには意外なことに、剣が止められただけではなく勢いで吹き飛ばされた。



「誰だ!!! 」



 英雄、アーサーだった。



「ほお―― 英雄様と魔女様がそろってお出でいただいたか。うれしいな。手間が省ける。一気におまえ達2人の命を奪ってやる。」



 アーサーは何も答えず剣を構えた。



 それを見てソウヤが言った。



「いくぞ。かって『英雄殺し』と言われた俺の伝説の一部になれ!!! 」



 ソウヤは機械のように正確に重く、何回も繰り返し剣を振ってきた。



 一撃一撃はアーサーの体制をしっかり把握して、最も弱いと思われる角度と方向をねらったものだった。



 アーサーは体に近い場所で、ようやく自分の剣で受け止めていた。



 しかし、アーサーはただ受け止めていただけではなかった。



 ソウヤの一撃一撃をしっかりと覚えていた。



 それは100回に及んだ。



 これまで英雄殺しと呼ばれたソウヤは、多くの英雄達をその間に葬ってきた。



(何が違う? このアーサーは、今までの英雄と何が違うのだ? )



 ソウヤの心に不安が生じた。







 不安からあせったソウヤは、101回目にアーサーの体から大きく軌道を外して剣を振った。



 初めて、きっと唯一訪れたチャンスをアーサーは逃さなかった。



 アーサーはソウヤが剣を持つ肩に向けて剣を振った。



 ソウヤの肩は外れて、その剣は地面に落ちた。



 激痛に肩を抑えて、その場にうずくまった。



「殺せ!!! 」



 ソウヤが声を振り絞って、アーサーに向けて叫んだ。



 ところが、アーサーは剣をさやにしまい、うずくまるソウヤに近づいた。



「とても痛いですが。がまんしてください。」



 アーサーはソウヤの関節をつなげた。



「どうしてだ。勝利したのだろう。『英雄殺し』の俺に勝利したのだから、俺を殺して、唯一無二の英雄として伝説になればよいのではないか。」



 アーサーは笑顔になった。



「私は実は最弱です。他の誰と比べても強い所は全くない。もし、英雄と呼んでいただけるのなら『最弱の英雄』ですね。」







「…………負けた。あなたには最強の所がある。その心です。お気づきになっていないようですが。ゴード王国第3王子、英雄、アーサーコンラッド。恥ずかしい自分を教えていただきました。」



 突然、ソウヤは地面に落ちていた自分の剣を拾った。



 そして、のどを刺してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす
ファンタジー
 女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――? ――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語―― 『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』 五大国から成る異世界の王と たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー ――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。 ――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして…… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない―― 出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは? 最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―― そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...