最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語~♡♡♡

ゆきちゃん

文字の大きさ
76 / 108

76 人間を続けるか聞かれる国があった

しおりを挟む
 小さなアーサーは紹介されたコウメイを見た。



 背がとても高いその男は、アーサーをとても優しい顔で見た。



 そして心からの敬意をこめて、王族に対するおじぎをした。



「アーサー王子様。お初にお目にかかります。私はカンの国のコウメイと申します。」



 目を見て話すコウメイをアーサーはすぐに大好きになった。



「我が学友のショウが私にいつもくれる手紙に、あなた様のことばかり書かれています。」



「え――っ どのようなことが書いてあったのですか? 」



 それを聞いたショウが遠回しに「言わないでくれ」という合図をした。



 しかしコウメイはかまわず話し始めた。



「王子様は極めて強く極めて弱い。剣術や兵法の理解力が人並み外れて高く、やがては世界に名を知られる剣士や将軍になる。しかし、他人に対する共感性が高いから人の痛みが最大限にわかる。」



「そうですか。自分で考えている自分とほとんど同じなので安心しました。」



 コウメイはうなづきながら、アーサーを自分の息子のように見て話した。



「アーサー王子様。御助言することをお許しください。もし今後、大変な事態に御身が陥った時、他人のことばかり考えることは一時期大損になるかもしれませんが、最終的には大勝利をもたらすでしょう。」



「わかりました。先生、私はずっと忘れません! 」







 忘れられない大切な記憶は、何年経ってもいつでも鮮明に想い出される。



 今、独房の檻の中で静かに座っているコウメイを見た時、想い出した。



 アーサー達はその目の前に姿を現わした。



 コウメイは髪が伸びほうだいで、とても汚い顔をしていた。



 しかし、すばらしい才能と美しき心を秘めたその目は、アーサーをしっかりと映した。



「アーサー王子様。お久し振りでございます。英雄と魔女が、人間に訪れようとしている災厄をつぎつぎに防いでいるということはこの国でも知られております。」



「コウメイ先生。私やクラリスさん達がこの国に転送されたいうことは、このカンの国も災厄にみまわれていうのです。何が起こっているのでしょうか。」



「この国カンは合理的な考えと神秘的な考えを同時に尊びます。ある日、王都セイトに人間とは違うオーラをまとった者が訪れ、王、この国では皇帝と呼びますが、皇帝シンに謁見しました。」



「皇帝シンは死を恐れていましたので、神秘的な力をまとった者に強く引きつけられました。その者はたぶんアーサー様達が戦っている暗黒騎士だと思います。」







 半年くらい前のことだった。



 皇帝シンは、帝都セイトの住民達の中で、神医として名高くなっていた者を王宮に呼び出した。



 皇帝に仕える1,000人ほどの家臣もいっしょに見まもる中、謁見が開始された。



「帝都の住民達の中で神医として名高い者よ。他国の者と聞いたが、どこから来た。名前は。」



「マルコと申します。この国とはかなり遠い海に接するベネスという国から船で来ました。」



「思い病気になってしまい、余命いくばくもない多くの住民を助けてくれたそうだが、なぜ、そのようなことができるのだ。」



「はい。実は私には人間の体の一部を病に犯されない、別の強い組成にすることができます。もちろん、ご本人の同意が必要なのですが。」



「別の組成とは、どのような者か。」



「こう言うのは不適切かも知れませんが、人間を超えた物でごさいます。」



「遠慮しなくてもよい。もっと具体的に申せ。」



「魔族でございます。」



「お――――――っ 」



 その場にいた多くの家臣から驚きの声が上がった。



「大丈夫か。魔族は人間と敵対する者。この世界中では今、英雄と魔女が悪しき心を映す世界と戦い、災厄を防いでいることは私の国でもほとんどの者が知っているぞ。



「皇帝よ。他国から貴国に流れ込み、英雄と魔女の物語を歌う吟遊詩人の話しを信じてはいけません。あれはおもしろおかしく作られたお話です。」



「そうなのか。どこが嘘なのだ。」



「ほんとうは、魔族は人間と近い生き物なのです。それに、魔族の体は人間にとっては重い病になるさまざまな原因に対して絶対的な抵抗力があります。」



「人間の体の中に入った魔族の体の組成が、何か悪いことをしないか。」



「大丈夫でございます。病気のため使うのは、ほんのわずかな魔族の体です。ほんのわずかですから、その他大部分の人間の体の組成を支配できません。」



 皇帝シンはここまで聞いて、しばらくだまった。



 1,000人ほどの家臣達もだまって見まもり、謁見の間は静寂に包まれた。



 ‥‥‥‥‥‥‥‥



 少し長い沈黙の後、皇帝が口を開いた。



「マルコよ。それではお前に重い重い病気を治してもらいたい者がいるのだ。よいか。」



「はい。もちろんでございます。皇帝の命であれば、完全に完治させます。もし、今私が申したことがうそ偽りで、完治できなかった場合は、私の命をお詫びとして差し上げます。」



「そうか。いつお願いできる。明日でもよいか。」



「つつしんで、明日、さまざまな道具を持ち参内致します。」







 皇帝シンには心の底から愛している妃がいた。



 これまで皇帝と一緒に歩み、数々の困難、苦労を乗り越えてきた。



 平民の出で皇后にはなれなかったが、皇帝は「陽姫」と呼んで特別な存在としていた。



 いつも彼女が自分のそばにいて、優しく照らしてくれるという意味である。



 皇帝は彼女が命を落し、永遠に別れなければならない時が来ることを最大に恐れていた。



 マルコとの謁見の後、皇帝は陽姫の暮らす別宮に出向いた。



 病に伏せている部屋に皇帝シンが入って来るのを見ると、陽妃は体を起そうとした。



 しかし、重い病に体の力を奪われている彼女にはどんなに努力しても不可能だった。



「いいんだ。陽妃、そのままで。」



「皇帝陛下。申し訳ありません。」



「気にするな。早く良くなって、私に元気な顔をみせてほしい。切望だ。陽妃の顔を見られなくなることを創造しただけで、私は奈落の底に突き落とされる。」



「陛下。死は誰にでも必ず訪れます。人間としてはこの世にいなくなっても、私と過ごした、たくさんの想い出が陛下をお支えします。」



 重い病で大変つらいはずなのに、陽妃は最高の明るさと優しさで微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———       しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」 100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。 しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。 戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。 しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。 そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。 「100年間、貴女を探し続けていた——— もう二度と離れない」 ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア) ——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。 「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」 ユリウス・フォン・エルム(エルフ) ——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。 「お前は弱い。だから、俺が守る」 シグ・ヴァルガス(魔族) ——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。 「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」 フィン・ローゼン(人間) ——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。 それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。 忠誠か、執着か。 守護か、支配か。 愛か、呪いか——。 運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。 その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。 ——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

処理中です...