108 / 108
108 英雄と魔女は幸せをつかんだ
しおりを挟むやがて、大量の魔族が美しき心を映す世界に侵入してきた。
エルフ軍団の射手が多数の矢の雨を作り、魔族の数を半分以下に減らした。
さらに、聖水の堀に落ち、消滅する魔族も多数いた。
しかし、やはり上級魔族は陣地へ接近してきた。
陣地の最前衛には、英雄アーサーが1人で待受けていた。
「最も強い魔族から戦い、ここを通さない! 」
アーサーは個々の上級魔族のオーラを感じ、最も強い上級魔族に剣を振るった。
その他の上級魔族はアーサーがいる位置を抜けたが、そこには最強の2人がいた。
メイナードとシンのチームがお互いに連係して、効率よく数を減らしていった。
戦いに全力を尽くすことができるよう、やがてザラとルルの2人に交替することになっていた。
たまに、このチームの防線線をすり抜けてしまう上級魔族もいた
その場合は、アサシンの暗殺集団とエルフ族の中の剣の名手達が討ち取った。
しばらくの間、侵入した魔族達は完全に討ち取られていた。
しかし、最前衛で戦っていたアーサが見る魔族の数は全く減らなかった。
(魔王がいないのに、なぜ魔族達は戦いを止まないのだろう。)
ところが、永遠に続くと思われた魔族の姿がピタッと止まった。
やがて、後衛から連絡があった。
それは、悪しき心を映す世界との境を監視していたエルフからのものだった。
「突然。魔族達が悪しき心を映す世界に戻り始めました―― 」
アーサーは外に出て天を見上げると確かにそのとおりだった。
「どうして? 」
「アーサー王子様。これでもう10の災厄は防がれました。この美しき心を映す世界は守られたのです。」
びっくりしたアーサーが後ろを振り返ると、そこには最高の笑顔のクラリスが立っていた。
2人は全力でかけより、抱き合った。
「やった―――― 」
アーサーはクラリスを抱きながら回転した。
「どうしてもわからないのですが、魔王アスモデウスはどこに消えたのでしょう。」
「私が全ての魔力を使い、最高に複雑な転移魔術を構成して転移魔術をかけたのです。無限の距離、無限大の次元の先へ。今後、アーサー王子様と決して出会うことのない空間です。」
「私は魔王アスモデウスに勝てたかもしれませんし、逆に負けたかもしれません。でもクラリスさんは最高の魔術で私を守ってくれたのですね。」
クラリスはうなずいたが、心の中では真実を隠していた。
(アーサー王子様が振るったあの剣の一撃は魔王に達し、英雄は魔王に勝ちます。その後、英雄は次の魔王に変化しなければならないのです。美しき世界の守護者である私と敵対し憎悪する相手として。」
「クラリスさん。なんで戦いは終わったのですか。魔王アスモデウスが消えたことが原因ですか。」
「違います。私が美しき心を映す世界と悪しき心を映す世界の運命を、両側に乗せている天秤を壊したのです。魔王アスモデウス様の協力があったからできたことです。
「魔王の協力ですか??? 」
その後、クラリスは自分が体験したことを話し始めた。
「予期しないことでしたが、魔王アスモデウ様が転移した無限大の距離、無限大の次元の先の空間に私の精神も一緒に転移してしまいました。危ない状態でした。」
「大魔術を構築した反動ですね。」
「はい。そのこともありましたが。もう一つ、私の精神をボロボロにしていたのは、この10番目の災厄の終わらせ方です。このままでは、2つの世界の戦いの後、全てが消滅することがわかっていました。」
「そうなんですか。私の何倍もの困難な問題を考えていらっしゃたのですね。」
「その時、私の精神は魔王アスモデウス様とその空間で出会い、励まされました。未来の道のありかをさがすようと。その励ましのおかげで私は災厄の原因である天秤のありかを見つけることができました。‥‥
‥‥幸いなことに、その時いた空間から天秤がある空間までは近かったのです。さらに魔王アスモデウス様から、全魔力を私にいただきました。それで魔王様は消えてしまいました。」
「すると、2つの世界の未来のために犠牲になることを選んだのですね。なんて立派な方なのでしょう。」
「天秤がある空間に転移した私は、急いで空間を破壊しました。きっと、それが10災厄を防ぐことのできる唯一の道だったのでしょう。」
‥‥
その時、アーサーはあることを想い出した。
とても小さな子供の頃、家庭教師のショウが本を示しながら話してくれたことだった。
それは、歴史に残っている200年前の英雄の話だった。
「王子様。この英雄は10の災厄を防ぐため、最後に魔王との一騎討ちに挑みました。そして見事に勝ったのです。それから200年、災厄は訪れていません。」
ショウは本を閉じてから、とても真剣な顔で続けた。
「隠されて、あまり知られていない、とても大切な話しがあります。」
「まだ、お話は続くの? 」
「それは、魔王変化です。災厄を防ぐため魔王に勝った英雄は魔王に変化してしまうのです。彼は全てを犠牲にしてそれからの永遠の時を生きるのです。愛する人とも別離して―― 」
アーサーはとても大切なことを想い出した。
彼は全てを悟り、クラリスを抱き寄せると口づけした。
‥‥
誰にも、必ずその時はやってきます。
自分の未来が困難だらけで、高い高い壁がふさいでいます。
それは、あなたの心を最高に痛めつける。
大声で泣きだしたい。
だから、未来に続く道は全くないように思えるはずです。
しかし、未来をしっかりと見てください。
あっ――
あなたが魔眼持ちの魔女ではなくても良いのです。
必ず、回りに生きる何億の存在、
不思議な手があなたを助けてくれるはずです。
あなたは必ず見つける。
壁を避け、壁に穴を開けて、壁を壊すことは必然なのです。
どうぞ、幸せをつかまれることを心の底から祈っております。
私が暮らすこの時から、何十年、何百年後の方々へ、
私が暮らすこの世界から、無限大の距離、無限大の次元を隔てた方々へ、
美しき心を映す世界、及び悪しき心を映す世界の守護者~
真実に至る魔女~
クラリス・ランカスター
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!
カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。
その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。
「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」
次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。
彼女は知っている。
このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。
未来を変えるため、アメリアは
冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。
これは、かつて守れなかった主人のための転生。
そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。
王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
挿絵はA I画像を使用
10/20 第一章完結
12/20 第二章完結
2/16 第三章完結
他サイト掲載
(小説家になろう、Caita)
【完結】一番腹黒いのはだあれ?
やまぐちこはる
恋愛
■□■
貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。
三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。
しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。
ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
逢生ありす
ファンタジー
女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――?
――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語――
『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』
五大国から成る異世界の王と
たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー
――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。
この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。
――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして……
その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――
出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは?
最後に待つのは幸せか、残酷な運命か――
そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる