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18 対決
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入江八広とザラを乗せた大型ガレー船が、入り江に入って来た。
邪馬台国側では、海岸に多くの兵士を配し、女王登与が出迎えの準備をした。
八広が石の国に連れ去られてから、早くも1年が経とうとしていた。
(あれから1近く経ちましたが、八広様は王女と無事に婚約されたのでしょうか。それと、さっきあの船の上に立っていた青い瞳の背の高い綺麗な女の人がいましたが、それがザラ王女なのでしょうか? )
入り江の中に船が侵入する前に、ザラが言った。
「八広様。私達はこのお兄様からいただいたペアルックで陸に降り立ちましょう」
「ええ、もちろん―― 」
「それから八広様、さきほど、この船から撃たれた大砲は」
「祝砲、儀礼砲ですよね。通常、空砲と呼ばれるものですよね」
「いえいえ、どうも実砲を撃ってしまったようなのです」
「実砲って‥‥‥‥ いったい、どれくらいの威力なのですか? 」
「たとえば、たとえばですよ。あの山の頂上に命中すれば、山全体を吹き飛ばすでしょう」
「問題ありません。実際当たらなかったのですから」
「実際は私の部下が間違えて、八広様の帰還をお祝いするために、あの山を目標に実砲を撃ってしまったのですが、金色のスケアクロウ(からす)に阻止されたしまいました」
「まあまあ、祝砲で空砲を撃ったということで、問題ありません」
「そうですか。ありがとうございます。さあ八広様、参りましょう―― 」
「あのう。僕の荷物は? 渡し船は? 」
「荷物は、後で従者が海岸までお運びします」
そう言うと、いきなりザラは船の看板から飛び降りた。
「私、この入り江は大好きです。このターコイズブルーが私のラッキーカラーなのです」
彼女は海の上にすっと立った。
スタイルがとても良い美人が何も無い海の上に立ち、大変美しかった。
「ザラさん。僕はどうすれば良いのですか」
「八広様は私と婚約し、今や私の一族です。やって見てください。簡単に海の上に立てるはずですよ」
2人が海の上に立った光景を、邪馬台国の人々は海岸で見ていた。
「おう、八広様も海の上に、それにあの美しい王女様はなんと優雅に海の上を歩いてくるのだろう」
それを海岸で見ていた登与は思った。
(海の上を歩くなんて、自然の|摂理(せつり)に反するわ。八広様も同じことをするなんて―― )
登与は最大限の霊力を込めて、言霊を放った。
「自然の理に従え、重さがある物は海の上に立つことはできない。理をゆがめるものに災厄を与えなさい!!! 」
登与がそう言った瞬間のことだった。
海の上を優雅に歩いていたザラの姿が海の下に消えた。
八広も同様だったが、彼は直ぐに全力で泳ぎだし、海の中に落ちたザラに近づいた。
実はザラは全く泳げなかった。
すぐに大量の海水を飲んで意識を失った。
それで、八広はおぼれかかっているザラを抱きしめて海岸に向けて泳いだ。
そして、最後にはお姫様だっこをして波打ち際に立った。
登与は急いで近づいた。
「八広様。お帰りなさいませ。大変でした。偽りで婚約したのは、そのずぶ濡れ犬ですか? 」
「登与さん。僕が婚約したのは偽りではありません。どうしてかと言うと、女性にとって婚約とは最高に大切なイベントだからです。この水もしたたる美女は私の婚約者、大帝国王女ザラさんです」
「ザラとかいう女、意識はもうあるんでしょ。起きて立ちなさい。いつまでもそうしていると、八広様のお体に負担でしょう」
「ほほほほ、たいそうな言いぐさですね。もしかして、邪馬台国女王登与様は、このようなことを八広様にしていただいたことがないのですね」
「‥‥‥‥ 」
「まあまあまあまあ、図星だったみたいですね。でも御心配は全く不要です。私はなにしろ、八広様の婚約者ですから。もう、2人きりの協働作業として戦争にも行きました」
「八広様、見損ないました。石の国の侵略にその力を貸されたのですか」
「確かにシン皇帝の命令を受けて、南方の蛮族国家と戦いました。しかし、初戦で結果をつけて死傷者はほとんど出ませんでした。それに進んだ文明をもつ帝国の庇護を受けることは必ずしも悲惨ではありません」
「そうですか! それでは石の国の王族のお2人様、御婚約のお祝いの席を御用意させていただいています。山を登らなければなりませんが、後に着いてきてください」
ザラはすぐに八広の腕の中から降りた。
不思議に彼女は少しも、海水で濡れていなかった。
八広も同様に濡れていなかった。
邪馬台国の神殿の大広間で3人は対座した。
「女王登与、今日は我が大帝国、皇帝シンのお言葉をもって参りました。今後、この邪馬台国も含めて大陸の東南及び島々に属する土地と人民は私ザラと、婚約後には八広様が共同統治します」
「邪馬台国はそうなるのですか」
「大帝国の一部として存続が許されます。なお特別に、皇帝に対する納税義務は免除されます。これは、八広様が皇帝シンに懇願して認められたものです」
「八広様。ありがとうございました」
登与はよそよそしく事務的に八広にお礼した。
形式的に、八広とザラの婚約成立の祝いの場が設けられた。
邪馬台国のさまざまな場所から、いろいろな産物が食材として使われた。
八広がとても興味をもったのが、お米だった。
(これは、どう考えても僕が自分の時代で毎日食べていた味とは違う。どうしてだろう、このお米は)
「八広様。食事の中で何かお気にさわる味がありましたか? 」
心配した登与が聞いてきた。
「はい。このお米ですが。見かけや口に入れた瞬間は全くお米なのですが、その後が全く違うのです」
八広のその言葉を聞いた瞬間、登与の顔が緊張で険しくなった。
「八広様は、この八島から大陸の大帝国に行かれて、しばらくの間、全く異なる料理を毎日お食べになっていたからでしょう」
「そうでしょうか。それとも、お米は2千年の間、品種改良などで味を変化させたということですかね」
登与は無理矢理作ったような笑顔で、その仮説に同意した。
その時だった。何か騒がしい大きな声がした。
「私は怪しいものではないわ。ここに、入江八広という未来人が転移したでしょう。今いるの」
その声は八広がよく知った声だった。
「仕方がないな。異世界まで転移してしまったのか」
食事が並ぶ祝いの場に侵入者があった。
「あっ!!! 八広!!! 」
北川風香だった。
彼女は八広を見るなり、あからさまに走り、彼に抱きついた。
邪馬台国側では、海岸に多くの兵士を配し、女王登与が出迎えの準備をした。
八広が石の国に連れ去られてから、早くも1年が経とうとしていた。
(あれから1近く経ちましたが、八広様は王女と無事に婚約されたのでしょうか。それと、さっきあの船の上に立っていた青い瞳の背の高い綺麗な女の人がいましたが、それがザラ王女なのでしょうか? )
入り江の中に船が侵入する前に、ザラが言った。
「八広様。私達はこのお兄様からいただいたペアルックで陸に降り立ちましょう」
「ええ、もちろん―― 」
「それから八広様、さきほど、この船から撃たれた大砲は」
「祝砲、儀礼砲ですよね。通常、空砲と呼ばれるものですよね」
「いえいえ、どうも実砲を撃ってしまったようなのです」
「実砲って‥‥‥‥ いったい、どれくらいの威力なのですか? 」
「たとえば、たとえばですよ。あの山の頂上に命中すれば、山全体を吹き飛ばすでしょう」
「問題ありません。実際当たらなかったのですから」
「実際は私の部下が間違えて、八広様の帰還をお祝いするために、あの山を目標に実砲を撃ってしまったのですが、金色のスケアクロウ(からす)に阻止されたしまいました」
「まあまあ、祝砲で空砲を撃ったということで、問題ありません」
「そうですか。ありがとうございます。さあ八広様、参りましょう―― 」
「あのう。僕の荷物は? 渡し船は? 」
「荷物は、後で従者が海岸までお運びします」
そう言うと、いきなりザラは船の看板から飛び降りた。
「私、この入り江は大好きです。このターコイズブルーが私のラッキーカラーなのです」
彼女は海の上にすっと立った。
スタイルがとても良い美人が何も無い海の上に立ち、大変美しかった。
「ザラさん。僕はどうすれば良いのですか」
「八広様は私と婚約し、今や私の一族です。やって見てください。簡単に海の上に立てるはずですよ」
2人が海の上に立った光景を、邪馬台国の人々は海岸で見ていた。
「おう、八広様も海の上に、それにあの美しい王女様はなんと優雅に海の上を歩いてくるのだろう」
それを海岸で見ていた登与は思った。
(海の上を歩くなんて、自然の|摂理(せつり)に反するわ。八広様も同じことをするなんて―― )
登与は最大限の霊力を込めて、言霊を放った。
「自然の理に従え、重さがある物は海の上に立つことはできない。理をゆがめるものに災厄を与えなさい!!! 」
登与がそう言った瞬間のことだった。
海の上を優雅に歩いていたザラの姿が海の下に消えた。
八広も同様だったが、彼は直ぐに全力で泳ぎだし、海の中に落ちたザラに近づいた。
実はザラは全く泳げなかった。
すぐに大量の海水を飲んで意識を失った。
それで、八広はおぼれかかっているザラを抱きしめて海岸に向けて泳いだ。
そして、最後にはお姫様だっこをして波打ち際に立った。
登与は急いで近づいた。
「八広様。お帰りなさいませ。大変でした。偽りで婚約したのは、そのずぶ濡れ犬ですか? 」
「登与さん。僕が婚約したのは偽りではありません。どうしてかと言うと、女性にとって婚約とは最高に大切なイベントだからです。この水もしたたる美女は私の婚約者、大帝国王女ザラさんです」
「ザラとかいう女、意識はもうあるんでしょ。起きて立ちなさい。いつまでもそうしていると、八広様のお体に負担でしょう」
「ほほほほ、たいそうな言いぐさですね。もしかして、邪馬台国女王登与様は、このようなことを八広様にしていただいたことがないのですね」
「‥‥‥‥ 」
「まあまあまあまあ、図星だったみたいですね。でも御心配は全く不要です。私はなにしろ、八広様の婚約者ですから。もう、2人きりの協働作業として戦争にも行きました」
「八広様、見損ないました。石の国の侵略にその力を貸されたのですか」
「確かにシン皇帝の命令を受けて、南方の蛮族国家と戦いました。しかし、初戦で結果をつけて死傷者はほとんど出ませんでした。それに進んだ文明をもつ帝国の庇護を受けることは必ずしも悲惨ではありません」
「そうですか! それでは石の国の王族のお2人様、御婚約のお祝いの席を御用意させていただいています。山を登らなければなりませんが、後に着いてきてください」
ザラはすぐに八広の腕の中から降りた。
不思議に彼女は少しも、海水で濡れていなかった。
八広も同様に濡れていなかった。
邪馬台国の神殿の大広間で3人は対座した。
「女王登与、今日は我が大帝国、皇帝シンのお言葉をもって参りました。今後、この邪馬台国も含めて大陸の東南及び島々に属する土地と人民は私ザラと、婚約後には八広様が共同統治します」
「邪馬台国はそうなるのですか」
「大帝国の一部として存続が許されます。なお特別に、皇帝に対する納税義務は免除されます。これは、八広様が皇帝シンに懇願して認められたものです」
「八広様。ありがとうございました」
登与はよそよそしく事務的に八広にお礼した。
形式的に、八広とザラの婚約成立の祝いの場が設けられた。
邪馬台国のさまざまな場所から、いろいろな産物が食材として使われた。
八広がとても興味をもったのが、お米だった。
(これは、どう考えても僕が自分の時代で毎日食べていた味とは違う。どうしてだろう、このお米は)
「八広様。食事の中で何かお気にさわる味がありましたか? 」
心配した登与が聞いてきた。
「はい。このお米ですが。見かけや口に入れた瞬間は全くお米なのですが、その後が全く違うのです」
八広のその言葉を聞いた瞬間、登与の顔が緊張で険しくなった。
「八広様は、この八島から大陸の大帝国に行かれて、しばらくの間、全く異なる料理を毎日お食べになっていたからでしょう」
「そうでしょうか。それとも、お米は2千年の間、品種改良などで味を変化させたということですかね」
登与は無理矢理作ったような笑顔で、その仮説に同意した。
その時だった。何か騒がしい大きな声がした。
「私は怪しいものではないわ。ここに、入江八広という未来人が転移したでしょう。今いるの」
その声は八広がよく知った声だった。
「仕方がないな。異世界まで転移してしまったのか」
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