入り江物語~異世界との切れ目を踏み転移し古代女王の元へ、そして勇者になります!!

ゆきちゃん

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17 努力した笑顔3

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「八広!!! 」、「八広!!! 」



 真剣な表情で黙り込んでしまった入江八広いりえやひろに、アテルイが返事をうながした。



 苦しそうにしている八広に、ザラが言った。



「そうですか―― 八広様、登与とよとかいう邪馬台国の女王は相当な女なのですね」



 八広はとても努力して笑顔をつくり、ザラの方を見た。



「じゃあ。私は帰る‥‥‥‥ 」



 アテルイは、いこごちの悪さを察したのか、帰ると言った。



「お兄様。もうこの船は、大陸からかなりの距離、離れています」



「問題ないな。私の金属鳥で行けば、そんなに時間がかからないだろう。八広、知っているか。音にも速さがあり、私の金属鳥は音より早いんだぞ」



「えっ、この時代で音速を超えるのですか‥‥ 」



「興味深々だな。見るか」



「はい」



 アテルイの後について甲板を歩いて行くと、そこには、八広の世界でよく見るものがあった。



「アテルイさん。これは? 」



「金属鳥だ。時々、異世界から迷いこんで来る」



「操縦方法は分るのですか? 」



「うん。自然に心の中に浮かんでくる。私には物に染みこんだ人間の残留思念がわかるんだ」



「この、戦闘機に乗っていた異世界の人間はどうなったのですか? 」



「人間??? この金属鳥が姿を現わした時、人間は乗っていなかった。きっと、時や次元の影響を受けるのだろうな。八広だけは特別ということさ」



「そうですか。でも、僕の時代でも次元のひずみを超えて、人間が違う異世界に行ってしまったという例は多いのです。どういう原因なのか、誰がそうしているのかはわかりませんが」



「八広。そういうことをしている神がいるとしたら‥‥‥‥ 悪い、悪い、余計なことを言ったな。今、一番重要なことはザラと登与の問題だぞ。私がその立場だったら解決は非常に難しいがな」



 そう言うと、アテルイは戦闘機の中に乗り込んだ。



「あのう―― アテルイさん。僕の時代・アテルイさんにとって異世界の戦闘機乗りは、体を守るために特殊なスーツ=着物を着るのですが、大丈夫ですか? 」



「はっ、はっ、私は神からのギフトを受けた特別な戦士だよ。柔やわな体じゃないから大丈夫さ」



 すぐに戦闘機はその場からゆっくりと、垂直に上昇し始めた。



 そしえ数百メートルあがっ思うと、いきなりバーナーから火炎を全出力で噴射した。



 甲板に立っていた八広は衝撃を受けたが、なんとかその場に立っていた。







 数日後、八広を乗せた大ガレー船は邪馬台国の神殿がある海見山の入江に近い外海に到達した。



 それを監視していた邪馬台国では大騒ぎが起きていた。



「登与様。この入江に大きな船が侵入しようとしています。石の国の物でしょうか」



「船は何隻ですか。艦隊をくんでいるのでしょうか」



「いいえ、一隻だけですが非常に大きな船です。それに、監視していた者が言っていましたが、八広様を連れ去った船だということです」



「それでは‥‥‥‥ もしかしたら、八広様がお帰りになられるかもしれませんね」



 座っていた登与はいきなり立ち上がると、外に向かって歩き出した。



 海見山の上から外海を見張る物見やぐらまで行くと、そこにいた兵士に聞いた。



「大きな船は今どこにいますか。大体で良いから教えてください」



 兵士が外海のその場所を指差すと、登与もその場所を厳しい目で見つめた。



 外海を航行し邪馬台国の入江に近づこうとしている巨大なガレー船の甲板だった。



 兄のアテルイが帰ると言ったのに、ザラは見送ろうともせず甲板のその場に留まっていた。



 彼女の心の中は怒りに震えていた。



(登与!!! 八広様の心を完全に捕らえているのね!!! 私よりも魅力的なんて許せない!!! )



 すぐに、彼女は感じた。



(誰かに監視されている。これは―― )



 ガレー船が進む外界の前方に、邪馬台国の入江の目印になる海見山が見え始めていた。



 そして、その山の頂上から強い霊気を感じた。



 ザラは、青い大きな瞳でその報告を見つめた。



 すると見えた。



 白い装束の全身霊気をまとった美女がこちらを見ていた。



(なんという美しさ。見ているだけで、私の心も癒いやされる。あっ! もしかしたら! )



 ザラは魔力で言葉を届けた。



「あなたは誰??? 」



 すると、すぐに海見山頂上の美女から答えが返された。



「私は邪馬台国の女王。登与です。その船で八広様はお帰りになるのですね」



「お前が登与か!!! 」



「副官!!! 」



 ザラは自分の副官のベースを読んだ。



「はい、ザラ様。御前に―― 」



「ベース、大砲をあの山の頂上に向かって撃ってください」



「ザラ様。あの場所は邪馬台国の女王の神殿の場所です。邪馬台国とは八広様との婚約で休戦協定が結ばれています」



「ベース、すいません、後の責任は私がしっかりとりますので、『うっかり間違えて大砲を撃った』にしていただけませんか」



 副官のベースはよほどザラに心酔しているのか、即答した。



「はい。わかりました。おおせのままに―― 」







 ガレー船の大砲のうち、最も大きな一門が向きを変え、海見山の上に目的を定めた。



 そして、間もなくその大砲が火を噴いた。



 それは火山の噴火のような轟音ごうおんだった。







 海見山の上で石の国のガレー船を監視していた兵士が狂ったように叫んだ。



「登与様!!! あの船、大きな大砲の砲塔をこちらに向けました」



「あっ!!! 撃った!!!!!! 」



 その衝撃は海山の頂上まですぐに届いた。







「かしこみ かしこみ 八島の神々よ、あなたにお仕えし八島を守る登与を救い給え―― 」



 登与がそう詠唱した後、不思議なことが起きた。



 大砲に狙われた海見山の前方に、巨大な金色の八咫烏やたがらすが現われた。



 そして、そのカラスは巨大な羽を、はばたかせた。



 その結果、発射された砲弾はブーメランのように向きを曲げられ、空のかなたに吹き飛ばされた。



 遠い遠い空の上空で大爆発が起きた。



 その衝撃波はガレー船の甲板にも到達した。



 アテルイの見送りが済んだ八広が急いでザラに掛けよってきた。



「ザラさん。今の衝撃は??? 大丈夫ですか」



 八広に聞かれると、ザラは黙って航行先にある海見山の頂上を指指した。



「八広様‥‥ 」



「私の愛です」



 すぐに八広は全てを理解した。



 そして、最大限の笑顔を無理矢理つくって答えた―――― 
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