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20 神武になって(トガ国1)
しおりを挟む入江八広は、彼にとって異世界であるが、良く知る邪馬台国に帰った。
そして、婚約者であるザラは大陸にある石の帝国に戻った。
ただザラは強引に、1年たったら正式に結婚式を挙げることを八広に認めさせた。
あわただしい数日が過ぎ、やっと、邪馬台国の神殿に平穏が訪れようとしていた。
今、女王であり八島の神に仕える巫女である登与は、鬼道を使い真剣に占いを始めていた。
邪馬台国がある八島のさまざまな場所から、多くの種類の神木が集められていた。
それを、炎で燃やしていた。
その炎は、もう何百年も前から燃え続けている炎だった。
まず、神木が燃える時に立ち上る煙を見ていた。
「これは‥‥‥‥ 」
それだけ言って、登与は絶句していた。
「最後まで結果を見ましょう」
その後、彼女は亀の甲羅を鉄のはさみで持ち、その炎に近づけた。
しばらくして
ばきっ!!!
亀の甲羅が炎にあぶられて、表面がひび割れる音がした。
登与は亀の甲羅を自分のそばの陶器性の皿に置いた。
そして、表面に生じたひびをじっと見た。
彼女は、神秘的で美しいブラウンの瞳で、いつもより念入りにひびを見つめた。
そのひびはこれまでに見たことのないもので、すぐにはインスピレーションが湧かなかった。
慎重な気持ちが表れ、彼女はその美しく長い髪を何回も触った。
「これは―― 大変なきざしですね! 」
そう言うと、彼女は部屋の外に控えている従者に指示した。
「すいません。八広様を呼んでください」
しばらくして、鬼道をしている登与の部屋の入口に八広が来た。
「登与さん。何か僕にお話ですか」
「はい。八島の神々から私に強いお告げがありました」
「『強いお告げ』とはどういうものですか? 」
「必ず達成しなければならないと命令するものです」
「どういう内容ですか? 」
「この八島のすみずみまで、邪馬台国の力を行き渡らせるということです。平たく言うと、1つの国として統一させるということです。神々の教えを徹底させるためです」
「統一ですか、戦争をしなければならないということですね」
「そうとおりです。そして、その偉業を成し遂げる人は定まっています」
「まさか―― 」
「お考えのとおりです。現在の入江八広様、そして未来には改名することが運命づけられています。その名前は、神武です」
「神武という名前ですか。前に登与さんが言っていたとおりですね」
「八島を統一すれば、その後に訪れる破壊の神の侵略を防ぐことができるそうです。この先、数千年の間、八島の中で暮らす人々が幸せに生きることができます」
「破壊の神ですか―― まさか、シン皇帝が治める大帝国で信じられている神ですか? 」
「はっきりとはわからなかったのですが、たぶんそうだと思います。不思議なことに、破壊の神と共存できるというお告げが出ています」
「どういうことかわかりませんが、結局、僕は八島統一の遠征に出なければいけないのですね」
「そうです。苦難の戦いが待っているかもしれませんが。神がよくやる得意技です」
「得意技ですか??? 」
「神が人間に試練を与えるということです。試練に撃ち勝つことができれば、神から大きな贈り物があります。しかし、試練に撃つ勝つことを保証しているわけではありません」
「試練に負けることの方が多いのですね」
「そうなんです。神は試練に勝った人間に大きな贈り物をすることで、永遠に、歴史にきざむのです。
これからもそうですが、勝者の歴史だけではなく敗者もいたことを忘れてはなりません」
数日後、八広は艦隊を率いて、邪馬台国から西南の地方に遠征を開始した。
邪馬台国の兵士3千人に、ザラの婚約者として石の国の兵士2千人を加え、計5千人の軍団であった。
移動のための艦隊は、ザラが貸し出してくれた。
艦隊は今、兵士達を運ぶために海を航行していた。
甲板で前方を見ていた八広に話しかける者がいた。
「八広様。今向かっているのはトガ国といいます。住民はみんな体が大きくて重量があり、その戦士達の戦闘力は半端ありません」
新たに八広の副官となったハンが言った。
本来、ハンは皇帝シンがザラに付けた極めて優秀な軍師であった。
しかし、八広の遠征のことを聞きつけたザラが、八広の副官に着任させてくれた。
「ハンさん。その戦士達は大きくて重量があるということは、常識から考えて、動くスピードはのろいということでしょうか? 」
質問した八広は、自分の予想していた解答があると確信していた。
ところが、ハンは大きく首を振った。
「動きは極めて敏捷で、反射速度も速いのです。理由はわかりません」
その解答を聞いた瞬間、八広の口から言葉がもれた。
「お相撲さんか。それも幕内力士ばかりということか」
「八広様、『お相撲さん』とは? 」
「僕がいた世界まであった日本の国の国技を扱う戦士なんです。最強の格闘だと言った人もいました」
やがて、見張り役が大きな声で告げた。
「もうすぐ着くぞ! トガ国の海岸が見えてきたぞ! 」
八広が前方を注意深く見ると、高くやや急峻な山々が砂浜まで迫ってしる海岸が見えてた。
気がつくと、少し気温も高くなっているような気がした。
「矢に気を付けて上陸しよう」
八広が指示し、楯で囲いを作りながら数人が船から上陸した。
その中には八広もいた。
副官のハン他、多くの部下達が止めたのだが、彼には何か意図があるようだった。
ハンも一緒に同行を申し出ていた。
「八広様。何かお考えがありますか」
「少し見ていてください」
全身を甲冑で覆った八広は、楯の囲みから1人出て、まだ見えない敵に向かって話しかけた。
「トガ王国のみなさん。力が強いそうですね。それでは、私と一騎内をしましょう。私が負けましたら、大量の賠償金を置いて、このまま撤退します」
「そうか!!! それで賠償金はなんで支払ってくれるのだ」
「見てください。この百倍、いや千倍です」
八広はふところから大量の金を取り出し砂浜に投げた。
「おう、これは確かに純金だな。十分に賠償金になることができる」
その言葉が聞こえた瞬間、砂浜から4つの影が飛びだした。
4人の大きな男が砂浜の砂の中に隠れていたのだった。
その男達はほとんどはだかであったが、筋肉隆々だった。
「おう!!! 暑かったでしょう。大丈夫ですか」
そう言いながら、八広も全身で着込んでいた甲冑をつぎつぎにはずし始めた。
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