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8 剣術大会2
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ランスロの初戦がやってきた。
相手はゴード王国の中でも最上位の貴族、グロスター公爵家の息子フィリップだった。
大会の主催者が公爵家に忖度して、楽勝と思われた平民の子供との試合をセッティングしたのだが、それが今は全く反対の状況になった。
なにしろ平民の子は、最強の騎士ホークから木剣を送られ、さらに実力のお墨付きを得たのだ。
公爵家の息子が第1回戦で敗れることは、とても屈辱で家の威信に泥を塗ることになってしまう。
フィリップは親の力で、世の中に名前が轟とどろいている強い剣士を家庭教師として、剣技を磨いてきた自信があったが、今は不安の方がとても大きくなっていた。
試合会場に入る前、フィリップは家庭教師の剣士ザガンに不安を訴えた。
「先生。貧困な平民層から唯一参加している今度の相手は、なぜだかわかりませんが、最強の騎士ホーク様からその実力を高く買われています。私は勝てるでしょうか。」
「御曹司、大丈夫です。私があなたに伝授したのは、世界中のさまざな国の軍隊で使われている剣技の良いところを取り入れて作られた最高の剣技です。わずか7歳でその剣技をそこまで完璧にマスターできたあなたは、どんな相手であっても負けないでしょう。」
「ありがとうございます。少し元気がでました。戦い方で具体的なアドバイスがありますか。」
「平民の子供は甲冑を身につけておりません。逆に御曹司おんぞうしはグロスター公爵家に伝わる最高の甲冑をつけていらっしゃいます。今日の試合で使われるのが木剣だとはいえ、生身の体に当たれば大きなダメージになります。ですから、剣を打ち合う時に相打ちを狙うのです。」
「私の体は甲冑で守られているので、ダメージがほとんどないということでしょうか。」
「はい。もしかしたら卑怯だと思われるかもしれません。極端なことを申しますと、平民の子供に御身を打たせておいて甲冑で受け、その瞬間にできた相手の体の隙を狙うのです。勝つために割り切って考えることは大切です。」
「……わかりました。」
審判が言った。
「国王様の御前で今から試合を開始する。両者正々堂々と戦うように。どちらかが意識不明になったり、負けを認めた時に試合は決する。」
大勢の観客が見守る中、試合が開始された。
フィリップは身を守るための美しい甲冑を着ていたが、ランスロは甲冑を着ていなかった。
最上段の貴賓席で見ていた国王ヘンリーが、隣のグネビア王女に言った。
「戦いの中で身を守る甲冑はとても大切な役割を果たしている。平民の子供には大きなハンディだな。」
「いえいえ父様、誰もランスロの体に一撃すら当てることができないでしょう。」
王女は、勇者になるためにランスロに与えられた神のギフトのことをよく知っていた。
2人は試合会場で相対して構えていた。
ランスロは全身の気を集中させて、氷のように落ち着いていた。
彼の感覚は、回りの空間に超微細に張り巡らされていた。
達人が見ると、全く隙がない完璧な構えであることがわかっただろう。
ところがフィリップには、ランスロの構えはとてもみずぼらしくて弱々しく見えた。
(なんだ、これでは楽勝だ。さっさと一撃を入れて試合に勝ってしまおう。)
フィリップから、最高の剣技で最速の一撃が繰り出された。
ランスロの視線はその動きをスローモーションのように把握し、さらに数千分の1秒後の動きを予知したようにとらえた。
一瞬のことだった。
試合会場には、その場に倒れていたフィリップの姿があった。
「君、大丈夫か。立てるか。」
審判がそう言っても、フィリップはびくりともしなかった。
あわてて審判はフィリップに駆けよって、状態を確かめた。
そして宣言した。
「フィリップは意識を失っている。よって、ランスロの勝利を決定する。」
あまりに神秘的な結末で試合会場は沈黙し、観客は一言も発することができなかった。
国王ヘンリーが言った。
「何があったのだろう。全くよくわからない! グネビアよ、ホークを呼んできてくれ。」
「はい。父様、今すぐお呼びします。」
しばらくして、最強の騎士ホークは国王の前にひざまずいていた。
「ホークよ。最強のおまえなら、今の試合で何が起こったのか見ることができただろう。教えてくれ。」
ところが、ホークは首を振った。
「国王よ。私にも視界にとらえることができませんでした。ただ推定すると、ランスロが攻撃してくる相手を瞬時に確実にとらえ、もっとも弱い箇所に光速の一撃を入れたのでしょう。」
「最も弱い箇所……相手のフィリップは最高の甲冑で守られていたのだぞ。」
「確かにそうです。しかし、別々の物である甲冑と体が、動きの中で最も密着している箇所を見つけることができたとします。そこに最高の力を集中させた一撃を当てて、甲冑が衝撃を吸収することなく体に最大のダメージを与えることができるでしょう。」
「そんなことを普通の人間ができるのか。しかも、ランスロは7歳の子供だぞ。」
「もちろん、普通の人間には不可能です。ただ、生まれた時に才能、戦うためのギフトを神から与えられ、それにおごることなく、7歳になるまで自分を高めるために毎日毎日一生懸命鍛錬した子供だとしたら可能でしょう。」
そばで聞いていたグネビア王女は思った。
(ランスロ、あなたはそれほど努力したのに、以前はノーチャンスだったのね。今度はワンチャンスを必ず生かすことができますように――)
相手はゴード王国の中でも最上位の貴族、グロスター公爵家の息子フィリップだった。
大会の主催者が公爵家に忖度して、楽勝と思われた平民の子供との試合をセッティングしたのだが、それが今は全く反対の状況になった。
なにしろ平民の子は、最強の騎士ホークから木剣を送られ、さらに実力のお墨付きを得たのだ。
公爵家の息子が第1回戦で敗れることは、とても屈辱で家の威信に泥を塗ることになってしまう。
フィリップは親の力で、世の中に名前が轟とどろいている強い剣士を家庭教師として、剣技を磨いてきた自信があったが、今は不安の方がとても大きくなっていた。
試合会場に入る前、フィリップは家庭教師の剣士ザガンに不安を訴えた。
「先生。貧困な平民層から唯一参加している今度の相手は、なぜだかわかりませんが、最強の騎士ホーク様からその実力を高く買われています。私は勝てるでしょうか。」
「御曹司、大丈夫です。私があなたに伝授したのは、世界中のさまざな国の軍隊で使われている剣技の良いところを取り入れて作られた最高の剣技です。わずか7歳でその剣技をそこまで完璧にマスターできたあなたは、どんな相手であっても負けないでしょう。」
「ありがとうございます。少し元気がでました。戦い方で具体的なアドバイスがありますか。」
「平民の子供は甲冑を身につけておりません。逆に御曹司おんぞうしはグロスター公爵家に伝わる最高の甲冑をつけていらっしゃいます。今日の試合で使われるのが木剣だとはいえ、生身の体に当たれば大きなダメージになります。ですから、剣を打ち合う時に相打ちを狙うのです。」
「私の体は甲冑で守られているので、ダメージがほとんどないということでしょうか。」
「はい。もしかしたら卑怯だと思われるかもしれません。極端なことを申しますと、平民の子供に御身を打たせておいて甲冑で受け、その瞬間にできた相手の体の隙を狙うのです。勝つために割り切って考えることは大切です。」
「……わかりました。」
審判が言った。
「国王様の御前で今から試合を開始する。両者正々堂々と戦うように。どちらかが意識不明になったり、負けを認めた時に試合は決する。」
大勢の観客が見守る中、試合が開始された。
フィリップは身を守るための美しい甲冑を着ていたが、ランスロは甲冑を着ていなかった。
最上段の貴賓席で見ていた国王ヘンリーが、隣のグネビア王女に言った。
「戦いの中で身を守る甲冑はとても大切な役割を果たしている。平民の子供には大きなハンディだな。」
「いえいえ父様、誰もランスロの体に一撃すら当てることができないでしょう。」
王女は、勇者になるためにランスロに与えられた神のギフトのことをよく知っていた。
2人は試合会場で相対して構えていた。
ランスロは全身の気を集中させて、氷のように落ち着いていた。
彼の感覚は、回りの空間に超微細に張り巡らされていた。
達人が見ると、全く隙がない完璧な構えであることがわかっただろう。
ところがフィリップには、ランスロの構えはとてもみずぼらしくて弱々しく見えた。
(なんだ、これでは楽勝だ。さっさと一撃を入れて試合に勝ってしまおう。)
フィリップから、最高の剣技で最速の一撃が繰り出された。
ランスロの視線はその動きをスローモーションのように把握し、さらに数千分の1秒後の動きを予知したようにとらえた。
一瞬のことだった。
試合会場には、その場に倒れていたフィリップの姿があった。
「君、大丈夫か。立てるか。」
審判がそう言っても、フィリップはびくりともしなかった。
あわてて審判はフィリップに駆けよって、状態を確かめた。
そして宣言した。
「フィリップは意識を失っている。よって、ランスロの勝利を決定する。」
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ところが、ホークは首を振った。
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「最も弱い箇所……相手のフィリップは最高の甲冑で守られていたのだぞ。」
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「もちろん、普通の人間には不可能です。ただ、生まれた時に才能、戦うためのギフトを神から与えられ、それにおごることなく、7歳になるまで自分を高めるために毎日毎日一生懸命鍛錬した子供だとしたら可能でしょう。」
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