7 / 71
7 剣術大会
しおりを挟む
士官学校の入学者を選抜するために剣術大会開催が、ゴード王国全域に知らされた。
全ての町のメインストリートに大きな看板が立てられ、その前には常に人だかりができた。
「それにしても、不公平だな。」
「入学を許可する条件がひどい。」
「王族、貴族の子供は参加すること。大金持ちの平民の子供は、国にできる限りの寄付をして参加すること。それらに比べて、寄付ができない貧困の平民の子供は、剣術大会に優勝することだとは……ほとんどチャンスがないということだな。」
大人達の話を真剣に聞いている子供がいた。
ランスロだった。
彼は出場して優勝することで、士官学校に入りたかった。
自信はあったが、それ以上に大きな不安が彼の心に芽生えていた。
剣術大会は、ゴード王国最大のイベントになるに違いなかった。
派手な場所で負けてしまい、両親を大いに失望させることを恐れていた。
決心が定まらないまま、彼は町の外に続く道を歩き、森の中の家まで帰ろうとした。
下を向きながら歩いていたランスロの背中を、誰かがポンとたたいた。
「ランスロ! もう決心した! 」
グネビア王女だった。
王女だということを隠すかのように、フードをかぶって目立たない姿をしていた。
「王女様。何のことをおっしゃっているのでしょうか。」
「剣術大会のことよ。今、そのことを考えながら歩いていたでしょ――」
「正直いうと、参加しようかどうか大変迷っています。」
「自信がないの。」
「負けてしまい、両親を失望させることが恐いのです。」
「自信を持ちなさい! 絶対大丈夫だから! 」
「‥‥‥‥」
「ゴード王国中で、あなたに勝てる子供はいません。毎日毎日真剣に木の棒を振って、何百年間も育った大木たいぼくを切り倒すことができたあなたには、特別な力が宿っているのです。」
「‥‥‥‥」
「あなたを愛している御両親は、例えあなたが負けたとしても決して失望しないわ。あなたの未来にある成功を絶対に疑わないでしょう。」
「‥‥‥‥」」
そう言った後で、王女はランスロの顔をじっと見つめて目を合わせた。
王女の大きな美しい青い瞳に、彼の姿が映っていた。
王女は決心して強い口調でランスロに言った。
「ゴード王国のグネビア王女が騎士ランスロに命ずる。あなたは勇者ランスロとなって、魔族からこの国を救わなければならない宿命があるのです。だから、わずかなチャンスしかなくても必ず未来を切り開きなさい。」
「王女様、わかりました。剣術大会に出場して優勝し、士官学校に入学します。入学して何倍も何倍も自分を高めて、ゴード王国の騎士、勇者になってみせます。」
彼は王女にために、なにがなんでも優勝したいと思った。
剣術大会が開催される日になった。
国中から、その年に7歳になる数百人の子供達が集まった。
予想どおり、ほとんどが王族、貴族の子供、その他は大金持ちの平民の子供が数人、貧困の平民の子供はランスロ1人だけだった。
彼をばかにして嘲笑ちょうしょうする声が、あちこちから上がっていた。
「おい見ろよ。汚い姿だな甲冑も着ていない。剣術をばかにしているな。」
「そうだ。そうだ。今日使う木剣もあんなに不格好なものを持っているぞ。」
「身分の高い我々は、良い先生に剣術を長い間学んでいる。勝てるわけない。」
大会に参加する不安を紛らわすために、みんなひたすらランスロを徴収していた。
そのような時だった。
嘲笑する声がピタリと止り、雰囲気ががらりと変わった。
黒い甲冑をつけた全身黒ずくめの騎士が、子供達の集団に分け入ってきた。
背は高く周囲に不思議なオーラをまとった格好いい騎士だった。
その騎士がランスロに近づいて、その前に止った。
「きみはランスロだね。」
騎士は面を外したので、その顔を見ることができた。
目は小さいがとても鋭く、髪をオールバックにしていた。
「ホーク様! ナイトグランドクロス! 」
子供達から歓声が上がった。
ゴード王国最強の騎士、その名前は国外にも鳴り響いていた。
ホークは木剣を取り出し、ランスロに渡した。
「今日は木剣での戦いだが、良い木剣を使うことも必要です。さあ、持ってみて――」
ランスロは驚いたが、丁寧におじぎをして木剣を受け取った。
「構えてみて、戦うつもりでだよ――」
ホークにそう指示されたので、ランスロはもらった木剣を持って構えた。
その姿を見て、最強の騎士ホークは全てを悟った。
「全身の気を一瞬で、人間の限界を超えて最大限に集中させている。その年でそこまでできるとは、神のギフトを受けている。その木剣は私が自分の練習用に作ったものだ。君に献上するよ。」
「え―――――っ!!! 」
見ていた子供達が大変驚いた。
ホークが言った。
「君達、今日ランスロ君と戦う時は、攻撃しない方がいいよ。彼は攻撃には容赦なく反撃するはずだ。大けがをしないように十分に注意したまえ。」
高い所に設置されている観覧席にホークは戻った。
王女の席の前に行き、ひざまずきながらホークは報告した。
「王女様。確かに確認しました。ランスロ君は神のギフトを受けた人間です。努力を重ねれば必ずこの国を救う勇者になるでしょう。」
「ナイトグランドクロス、ホーク様。ランスロは戦うために神のギフトを受けているかも知れませんが、チャンスは1回しかない与えられていないのです。もっとも、1回のチャンスを必ず生かすことができますが。」
全ての町のメインストリートに大きな看板が立てられ、その前には常に人だかりができた。
「それにしても、不公平だな。」
「入学を許可する条件がひどい。」
「王族、貴族の子供は参加すること。大金持ちの平民の子供は、国にできる限りの寄付をして参加すること。それらに比べて、寄付ができない貧困の平民の子供は、剣術大会に優勝することだとは……ほとんどチャンスがないということだな。」
大人達の話を真剣に聞いている子供がいた。
ランスロだった。
彼は出場して優勝することで、士官学校に入りたかった。
自信はあったが、それ以上に大きな不安が彼の心に芽生えていた。
剣術大会は、ゴード王国最大のイベントになるに違いなかった。
派手な場所で負けてしまい、両親を大いに失望させることを恐れていた。
決心が定まらないまま、彼は町の外に続く道を歩き、森の中の家まで帰ろうとした。
下を向きながら歩いていたランスロの背中を、誰かがポンとたたいた。
「ランスロ! もう決心した! 」
グネビア王女だった。
王女だということを隠すかのように、フードをかぶって目立たない姿をしていた。
「王女様。何のことをおっしゃっているのでしょうか。」
「剣術大会のことよ。今、そのことを考えながら歩いていたでしょ――」
「正直いうと、参加しようかどうか大変迷っています。」
「自信がないの。」
「負けてしまい、両親を失望させることが恐いのです。」
「自信を持ちなさい! 絶対大丈夫だから! 」
「‥‥‥‥」
「ゴード王国中で、あなたに勝てる子供はいません。毎日毎日真剣に木の棒を振って、何百年間も育った大木たいぼくを切り倒すことができたあなたには、特別な力が宿っているのです。」
「‥‥‥‥」
「あなたを愛している御両親は、例えあなたが負けたとしても決して失望しないわ。あなたの未来にある成功を絶対に疑わないでしょう。」
「‥‥‥‥」」
そう言った後で、王女はランスロの顔をじっと見つめて目を合わせた。
王女の大きな美しい青い瞳に、彼の姿が映っていた。
王女は決心して強い口調でランスロに言った。
「ゴード王国のグネビア王女が騎士ランスロに命ずる。あなたは勇者ランスロとなって、魔族からこの国を救わなければならない宿命があるのです。だから、わずかなチャンスしかなくても必ず未来を切り開きなさい。」
「王女様、わかりました。剣術大会に出場して優勝し、士官学校に入学します。入学して何倍も何倍も自分を高めて、ゴード王国の騎士、勇者になってみせます。」
彼は王女にために、なにがなんでも優勝したいと思った。
剣術大会が開催される日になった。
国中から、その年に7歳になる数百人の子供達が集まった。
予想どおり、ほとんどが王族、貴族の子供、その他は大金持ちの平民の子供が数人、貧困の平民の子供はランスロ1人だけだった。
彼をばかにして嘲笑ちょうしょうする声が、あちこちから上がっていた。
「おい見ろよ。汚い姿だな甲冑も着ていない。剣術をばかにしているな。」
「そうだ。そうだ。今日使う木剣もあんなに不格好なものを持っているぞ。」
「身分の高い我々は、良い先生に剣術を長い間学んでいる。勝てるわけない。」
大会に参加する不安を紛らわすために、みんなひたすらランスロを徴収していた。
そのような時だった。
嘲笑する声がピタリと止り、雰囲気ががらりと変わった。
黒い甲冑をつけた全身黒ずくめの騎士が、子供達の集団に分け入ってきた。
背は高く周囲に不思議なオーラをまとった格好いい騎士だった。
その騎士がランスロに近づいて、その前に止った。
「きみはランスロだね。」
騎士は面を外したので、その顔を見ることができた。
目は小さいがとても鋭く、髪をオールバックにしていた。
「ホーク様! ナイトグランドクロス! 」
子供達から歓声が上がった。
ゴード王国最強の騎士、その名前は国外にも鳴り響いていた。
ホークは木剣を取り出し、ランスロに渡した。
「今日は木剣での戦いだが、良い木剣を使うことも必要です。さあ、持ってみて――」
ランスロは驚いたが、丁寧におじぎをして木剣を受け取った。
「構えてみて、戦うつもりでだよ――」
ホークにそう指示されたので、ランスロはもらった木剣を持って構えた。
その姿を見て、最強の騎士ホークは全てを悟った。
「全身の気を一瞬で、人間の限界を超えて最大限に集中させている。その年でそこまでできるとは、神のギフトを受けている。その木剣は私が自分の練習用に作ったものだ。君に献上するよ。」
「え―――――っ!!! 」
見ていた子供達が大変驚いた。
ホークが言った。
「君達、今日ランスロ君と戦う時は、攻撃しない方がいいよ。彼は攻撃には容赦なく反撃するはずだ。大けがをしないように十分に注意したまえ。」
高い所に設置されている観覧席にホークは戻った。
王女の席の前に行き、ひざまずきながらホークは報告した。
「王女様。確かに確認しました。ランスロ君は神のギフトを受けた人間です。努力を重ねれば必ずこの国を救う勇者になるでしょう。」
「ナイトグランドクロス、ホーク様。ランスロは戦うために神のギフトを受けているかも知れませんが、チャンスは1回しかない与えられていないのです。もっとも、1回のチャンスを必ず生かすことができますが。」
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる